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  • 弱め言葉の研究(2)「はっきり言葉」も使える様に

     私いっきゅうが〈論文ドクター〉をしながら分類してきた一つに「弱め言葉」があります。面接ワークショップや論文ワークショップでも、実例を取り上げて詳しく説明したことがありますし、以前このサイトにも書いたことがあります。

     最近、RIDE(ライド)に学びに来ているA先生が
    「あ、これは弱め言葉でした、いい直します」
    という様に言葉を訂正している場面に出会いました。
     自分の発する言葉の感覚だけでなく、思考が一段高いところにのぼったに違いありません。
    〈弱め言葉〉の存在を意識していると、考え方も必然的にシャープになっていくからです。

     今回は〈弱め言葉〉と〈はっきり言葉〉について書いてみましょう。

     メルマガは朝一番のメール対応の後に綴ることも多く、今回もそうしています。台風情報も仕入れようとスイッチを入れたTVの情報番組では〈弱め言葉〉を連発している人物がいました。
     コロナ関連で毎日に様に情報番組に出ている有名なお医者さんです。医学的なことに対してコメントを求められ発言をしているのですけど、ほぼ全てのフレースが弱め言葉かと思えるほどでした。
     いくつか拾ってみましょう。

    「PDR検査を増やしていくことは必要かなという風に思います」

    「個人的には、そこはもう少し強化しておいた方がよいのかなぁという風に考えております」

    「抗体検査は、個人的には、いいな、という風には思っております」

    普通だ、と思う人もいると思います。
    世の中に、こういう表現型が溢れているので、そう考えるのも仕方ないでしょう。

     上の表現の何が弱め言葉か、わかるでしょうか?

     一つ取り出してみましょう。

     本来、専門家の意見としてこう語ることができるフレーズを、この下線部で弱めています。

    ◯ そこは強化しておいた方がよいと考えております
        ⇩
    個人的には、そこはもう少し強化しておいた方がよいのかなぁいう風に考えております

     専門でない人に聞いているわけではなく、あえて専門家を招いてコメントを求めているわけです。見ている私たちも「そのことは専門的に見てどうなのか」という点が気になります。
     それに対して、はっきりとした意見を言わずに、弱めて薄めて微妙なものにしてしまい、頼りない答えを出し続けているのです。

     たとえば「~とは思います」という言葉にも弱め言葉が含まれています。

    〈とは〉の〈は〉です。

    思います」と「とは思います」の違いを感じ取ることができるのではないかと思うのですけど、どうでしょう。

    「~と思います」とはっきり語ることを避けて

    「~とは思う部分もありますけどね・・・」という様な表現を無意識に利用しているのです。
    「一応そのように考えてはいるんですけど、そうではないこともありますよね・・・」というニュアンスですね。

     弱め言葉そのものが悪いのではありません。

     相手との〈関係の中〉では大切な表現型(ひょうげんけい)です。
     決めつけてしまうのではなく、やわらげて伝えることなしでは、関係の継続は厳しいでしょう。
     例えば私が上で使った表現「~と思うのですけど、どうでしょうか」という書き方は、この場合大切な弱め言葉になります。
     みんながみんなそう気付くわけではありませんし、そうは思わないという方の存在も想定しておかなくてはいけないからです。

     逆に弱め言葉はおかしいという〈場面〉もあります。
     「今は五月ですよね?」と問われた時に、上であげた医師の表現型を借りるとこうなります。

    「個人的には、五月かなぁ、という風には考えております」

     どうですか?

     なんかめんどくさいタイプだな、と感じるかもしれません。別の人に聞いてみよう、あるいは別な人に聞けばよかったと感じる人も多いと思います。

     電話で遠方の友人に
    「梅雨に入ったね、そっちは雨降ってないの?」と聞いた時に

    「私は、雨はふってないという風に思ってはいます」

    という答えが返ってきたらどうでしょう。

     初めの朝の放送番組のコメントに戻りましょう。

    「抗体検査は今後のために有効なんですよね、◯◯先生」
    と問われて
    「個人的には、いいな、という風には、思っております」
    そういう表現型を連発する人物から重要な指針が得られる気はしませんし、この人ではなく、もっと力のある人に聞きたいという気持ちがしてしまいます。

     もちろん〈わからない〉とか〈不明〉なら「わかりません」でよいのです。
    「私はその部分についてはハッキリしたことは申し上げる力がありません」とか「その部分については科学的にもハッキリとしてデータが出ているわけではありません」でもよいのです。
     それも一定レベルの力を持っていないと語れないことです。

     知っている範囲で語ってくれたら、聞いている私たちにはとても参考になります。
     たとえばこういう言い方
    「抗体検査は完全ではありませんが、85%以上の確率で正しい数値を示してくれるので、その地域でどれくらいの人たちが抗体をもっているかどうかの尺度になります。するとその地域で医療体制をどの程度整えておくか、人工呼吸器をさらにどれくらい増やしておけばよいか、予測もできる様になりますね」

     弱め言葉は〈そうでない可能性〉を計算に入れて使う表現型です。
     先ほど書いた様に人間関係ではとても有効です。
     しかし弱め言葉が多用されてきたからでしょう、自分の語る言葉の中に〈弱め言葉〉がデフォルト(初期設定)されてしまっている人たちが、とてもたくさんいるようです。

     弱め言葉も使えるし、はっきり言葉も使える、それが教育の目標とも言えるでしょう。

     親や教師が、こういう言葉の感覚を磨いていくと、もっと

    「お母さん、あたまっていう漢字はこうだよね」と聞かれた時、
    「あ、左側は〈豆〉って書くんだよ、がんばって練習してね(´ー`」とはっきり伝えてあげましょう。

    「先生、お母さんが〈太ってきた〉っていうんだけど、ぼく、太っているかなぁ・・・」と聞かれた時に
    「みんなの中でみたら、全然太っている様には感じないなぁ。でも、お母さんはもしかしたら、ずっと◯◯くんを見ているから、腕とか、背中とか、細かいところの変化もわかるんじゃないのかな。
     今度〈どこが?〉ってお母さんに聞いてみたら?」
    というふうに答えてみてはどうでしょうか。

     面接や論文で「これこれについてはどう思うか?」と問われた時に、はっきり言葉で「私はこう考えております」という様にシャープに答えていける様になると、合格に一歩も二歩も近づきます。

     たのしい教育メールマガジンでも、はっきり言葉の重要性と弱め言葉の重要性を書いておこうと思います。

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