たのしい読書-夏休みの読書感想文につながる話 板倉聖宣

 夏休みは特に意識して自由研究のヒントになる話を書いているところです。最近、読書感想文についての質問が来ています。今回は夏休みの課題にもつながる「読書」についての話を書きましょう。

〈読書感想文が苦手だ、嫌いだ〉という子ども達はたくさんいます。作文そのものが好きではない上に、本を読んで書きなさい、という力技の連続に参ってしまうのでしょう。

 読書感想文をどう書くかというテクニックもありますけど、まず大事なことは〈読んで心動かされる本〉を読むことです。

 以前メールマガジンで紹介した板倉聖宣の「科学読み物」の話が、高評価だったので、その一部を掲載します。
 オススメの本を一冊、そしてどれでもよいからもう一冊選んで審判になって「この本がよい」という様にまとめていく読書感想文の方法です。
 読んでみてください。

 板倉聖宣「科学読み物の読み方」

 これまで科学読物の有効な指導がほとんど行われなかったのは、テクニックがいけなかったのではなくて、科学読物についての原則的な考え方がしっかりしていなかったためであるように思えるのです。
 そんなわけで原則的な話ばかり書いてきたと弁解したいわけですが、最後に私たちが実際にこのような考え方のもとに読書指導をやってきたときの経験をお話しましょう。

 じつは、私は今いくつかの小学校の先生方と一緒に小学校の科学教育の全面改造の研究をすすめているのですが、その中に科学読物の読書指導をとくにとりあげているのです。
 私たちの理科の授業では〈問題一予想ー討論一実験〉といったブロセスが根底になっているのですが、これらの推論・実験の授業の聞に折をみて科学読物を読ませることが必要だと考えているのです。
 その読物の中には私たちが特にそのために作った短い話もふくまれていますが、一冊の本をそのまま与えることもあります。
 慶應幼稚舎の西村先生は、そのひとつの試みとして(入学試験休みを利用して)小学校5年生に『デモクリトスから素粒子まで(国土社刊『発明発見全集』第3巻-現在は『原子分子の発明発見物語一一デモクリトスから素粒子まで)』と、もう一冊誰でもよいから科学者の伝記を読んで「それぞれの感想文のほかに、二つの本をくらべてどちらのほうがおもしろかったか、それはどういうところかということを書いてくるように」という宿題をだしました。

 するとその作文からおもしろいことがわかりました。二冊の本を読みくらべるために、科学読物の性格というものがはっきりと浮かびあがってきたのです。
 この『デモクリトス』のほうは、実は私が編著した本なのですが、この本には科学者が研究した結果よりも科学者の考えた筋道が具体的にくわしく書いてあります。そこでこの本では知らぬ聞に読者自身がその科学者と緒に想像をたくましくして、実験によって自然に問いかけていくような気持ちになるようになっています。多くの子どもたちはこの本を読むまでこのように読者自身を科学の世界にひきずりとむような本を読んだことがないので、これにはかなり感銘をうけたようで「これまで科学の本を読んだととがなかったけれど、これからはこういう本を読んでみたい」などと書いています。

 これにくらべて一般の科学者の伝記のほうはどうかというと、多くの子どもはとれを「国語的であって理科的ではない」と評しています。理科的ではないというのはその科学者のかんじんな研究の筋道についてはほとんど書いてなくて、やたらに子ども時代のことなど科学に関係のないこと00ばかりが書いてあるような意味です。そういう科学者の伝記でもキュリー夫人伝などは感動的ですが、一般にはあまり感激的にはなれないので、結局つまらないということになります。

 二つの本をくらべて8割以上の子どもが『デモクリトス…』のほうがおもしろいといってますが、その理由は以上のような事情によるのです。

「原子分子の発明発見物語」が欲しい方は
原子・分子の発明発見物語―デモクリトスから素粒子まで (発明発見物語全集 4)
わたしももう一度読んでみようと思います。

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海の自由研究-海の生き物をたのしむ/沖縄の海はなかなかすごい ②

 海の自由研究2回目です。ところで自由研究というのは宿題・課題を意味するのではありません。自分の興味関心にしたがって、いろいろなものを調べて、実験してたのしんでいくものです。

 身近な海に降りて、例えばここで紹介している様な生き物たちを写真に撮って、オリジナルの図鑑を作れば、みなさんだけの素晴らしい自由研究です。たとえば四年後、同じ場所に降りてみたとき、きっと皆さんだけが知っている変化に気づくでしょう。
 あるいは海に降りて撮った写真がきっかけで、もっと海のたのしさを味わって、いろいろなことを知るきっかけにもなるでしょう。

「沖縄の海はなかなかすごい」それは今回、私いっきゅうが強く感じた感覚です。
 沖縄の県庁所在地那覇市から海沿いをわずか5分ほど北上したところが、今回のフィールドワークの場所です。

 沖縄といえば青い海と白い砂のイメージ(下)ですけど、さすがに都会でその姿を期待するのは難しいものがあります。

 

 前回の場所は、ここ(下)。詳しく知りたい方は、前のページの地図に戻って確認してください。白い砂はほとんど見えません。
 

 

 降りて歩いてみると岩と岩の間に砂が見えています。
 水そうなどでは十分使えそうな砂ですね。
 真ん中の方に、魚の子どもが写っています。
 
 前回に続いて、生き物たちの写真を紹介しましょう。

 潮の引いた岩と岩の間にアマガイたちが集まっています。
 水分をできるだけ保つために太陽の光と熱をさけて、こういう感じで集まっていますから、海岸にいったときには、影になった部分を探してみてください。

 これはニシキウズガイ、沖縄で普通に見られる貝です。
 ちなみに、これは海水の底の方です。

 これはマガキガイ、沖縄ではティラジャーと呼ばれる美味しい貝です。

 大きなハマグリも見つかりました。
 ただしこれはカラの貝殻です。

 

 これは岩に埋まっているケイトウガイ。そのまま取るのは不可能です。
 ハンマーなどで割ってとります。美味しそうですけど、取るのは写真でがまんしておきましょう。

  前回も書いた様に、名前を特定するのは、図鑑やwebサイトを利用してもなかなか難しいものがあります。
 はじめのうちは〈巻き貝〉〈二枚貝〉〈海草〉などの様に大きく分類して写真をはるといいでしょう。

 海は人間をワクワクさせてくれます。きっとそのワクワク感はDNAに刻まれているものなのでしょう。
 泳ぐのもサーフィンも釣りもたのしいと思います。
 その一つに海の生き物たちを眺めることを加えてみませんか。たのしい教育に全力投球、RIDE( ライド:たのしい教育研究所 )です。この〈いいねライン〉をクリックすることで〈たのしい教育研究所〉への「応援票」が入ります☆いいね☆

自由研究-海の生き物をたのしむ/沖縄の海はなかなかすごい ①

 大人の自由研究としても子どもの自由研究としても、海の生き物に親しむことはおすすめです。今回は沖縄の海の自由研究をお届けします。海が大好きな私なので長くなりそうな予感がします、何回かに分けて書かせていただきます。

 朝早く那覇市で一仕事済ませて研究所に向かう途中のこと、海を眺めていたら干潟が目に入りました。うまい具合の引き潮です。
 こういうタイミングに出会うのは貴重です、そのまま通り過ごすわけにはいきません。

 場所は那覇市の海岸沿いに宜野湾市に向けて新しく開通した湾岸道路、この赤の四角で印した那覇市から五分程度のところ、浦添市です。

 

 那覇市から南に行くと白い砂が続く場所がいろいろあるのですけど、那覇市やその隣りの浦添市、宜野湾市は都会なので、人口的なビーチでないと白い砂の輝きはなかなか見ることができません。

 しかし沖縄の海をあなどはいけません。降りてみたらきっと生き物がいろいろ見つかるはずです。さっそく降りてみましょう。

 邪魔にならない様に車を停めて、さっそく海へ。

 会議のあとなどでもこうやってすぐに海に降りることができるには、外見上は会議でも違和感無しで、実は底が車のタイヤの様な素材の靴を履いているからです。
 もちろん山もこれで歩きます。

 なかなか行けない沖の方まで歩いていけそうです。
 空も青く澄んでいて、夏なのに気持ちがいい風が吹いています。

 生物は貴重ですから、個体をそのまま獲るのではなく、写真に撮るのをお勧めします。
 そうやって記録したものは〈◯◯年◯月のどこどこの海〉という、とても貴重なものになるに違いありません。
 名前を特定するのは、本やインターネットの図鑑を利用してもなかなか難しいかもしれませんから〈貝の仲間〉とか〈カニの仲間〉という様にして、写真を張っていけばよいと思います。
 いつかもっと海の生き物が好きになって来たら、自分で調べることができる様になると思います。

 では、みていきましょう。
 いましたね。

 赤い目が特徴のイワオオギガニ。500円玉くらいの大きさです。
 どうも元気がない。
 もしかすると太陽の熱でうだってしまっているかもしれません。
 平たい石で影を作ってあげました。

 

これはカニモリの仲間でしょう。

 
海草類も生えています。
 素晴らしい。

 

これは先端が丸くて葉が太いのでリュウキュウスガモでしょう。
ジュゴンが好んで食べる海草です。

 サンゴが白化したものもみつかりました。
 つまり、しばらく前までは生きていたわけです。
 こんな都会にもサンゴは生きていたか。
 考えてみたら、研究所の近くの北谷町ももなかなかの都会なのに、すばらしい海の自然が残っていて、ダイビングでかなりたのしませてもらったものだ。

 書いていると、やはり、簡単には終わりそうもありません。続きはまた近々書かせていただきます。たのしい教育は末広がり! RIDE( ライド:たのしい教育研究所 )この〈いいねライン〉をクリックすることで〈たのしい教育研究所〉への「応援票」が入ります☆いいね☆

自由研究 イルカとサメ 動物分類から広がる世界②

 自由研究というのは夏休みの宿題だからやる様なちっぽけなものではありません。「自由研究こそが本物の研究」で、それはたのしくてたまらないものです。
 前回のお話を読んで「とても興味深いです」というメールがいくつも届いています。おもしろいと思って自分で調べていくうちに、きっといろいろな発見が生まれるでしょう。たのしいと感じたら、それが生活を豊かにします。どんどんたのしいことを見つけていってくださいね。

 さて前回、イルカは哺乳類でサメは魚類だというお話をしました。
 それが、外見のどういう違いにつながるのか・・・
 いきましょう。

 哺乳類の仲間の身体の動きを見てみましょう。
 身体を移動するときのネコの動きです。哺乳類は基本的にこういう身体の動きします。

 もちろん足を動かして前に走っていくのですけど、線の部分〈背骨〉の動きを注意して見てください。
 地面から空の方向で見ると、体の骨を〈上下〉に骨を動かして前に進んでいます。

 

 

 ところが魚はそうではありません。

 これは魚の骨です。魚たちは地面に対してヨコ向きに身体をくねくね動かして進むのです。

 

 こんな動きですね。地面から空に向かう方向で見ると、上下ではなく横にクネクネひねりながら進んでいくのです。骨の構造がそうなっています。

 この向きの動きで水をかくとすると〈尾びれ:尻尾の部分〉は、地面から空に向かった方向に広がっていなくてはいけません。そうでないとうまく前に進むことができないからです。

 サメは魚類ですから、他の魚と同じ様な向きに尾びれがついています。

 ところがイルカは哺乳類です。

 背骨の動きはヨコにクネクネではなく、タテ向きに動かします。すると、魚の様な向きで尾びれがついていては、水を刀で切る様な動きになって、前に進むことができません。
 尾びれは地面と同じ向き、横向きについています。
 この写真で確認してみてください。

 これが、サメの様な魚類とイルカの様な哺乳類との大きな違いです。

 サメの尾びれを見てください。
 魚類は身体をヨコにクネクネ動かして進みますから、地面に向けてタテ向きですね。


 海で、サメかイルカか確認するときには、尾びれを見てください。
 こんな感じで背びれと尾びれが水面から出ているとしたらイルカではなくサメなのです。

  

 〈イルカかサメか〉、それは動物の進化の分類で整理していくとはっきりと違いがわかってきます。

 そうそう、前回の記事に載せた写真をもう一度見てください。
「あ、これは・・・だ!」と分かる様になっているのではないでしょうか?
 わかったとしたら、今回の内容がうまく頭に入った証だと思います。

 興味を持ってくれた方は、どんどん自分でも調べてみましょう。
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