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文章力と読書/論文の書き方入門/強さと美しさを高める読書

 論文の書き方の記事は毎回強い人気です。新しい年度のいろいろな試験が近づいて、切実に考えている人たちが多いことにもよるのでしょう。たのしい教育研究所の〈論文ワークショップ〉を受講した方はほとんど合格を勝ち取っていますが、たのしい教育研究所は塾ではありません。〈たのしい教育に興味関心の高い方たち〉への支援がメインですので、その場合にはご相談ください。

 さて前回の記事のラストのあたりに書いた「読書によって自分の作文力を高める」という文章に興味を持った方たちから、もっと具体的に聞きたいという反応が届いています。

 もう少し続けましょう。

 読書というのはその名の通り「書を読む」ですから、その内容を読み取るだけで十分充実した活動になるでしょう。かつてのわたしの様な活字中毒の症状を示している方は、本の香りが心を落ち着かせることにもなるでしょう。

 しかし読むことと書くことにはとても大きなギャップがありますから、読むことで自然と文章力が高まるのかどうか、それは大いに疑問です。

 自分の文章力を高めていく読み方が必要なのです。

 わたしの座右の書〈高校国語教科書〉を開いてみましょう。わたしのバッグに入っている〈教育出版 国語総合 改訂版 加藤周一監修 H18〉を開いてみましょう。

  真っ先に出て来るのが〈内山節:うちやま たかし〉の「季節」という随筆です。

 

 この文章は100回以上読んでいると思います。
 web上で内山節という人物の情報を仕入れ、彼の講演なども見ています。
 日本土着の宗教に感化されている人物だということもそこで知りました。わたしは原子論者(本来の科学を拠り所とする者)ですから、そこの部分は切り離すとしても、内山節はかなり魅力的な話をしてくれる人物です。

 

 さて、彼の〈季節〉という随筆:エッセイを読んでみましょう。
 前の部分を書き取ってみます。

 

   季節

内山節

 

 桜の花が咲くと花見にくりだしたくなるのは、どうやら日本人独特の習慣であるらしい。もちろんソメイヨシノは日本の木であるけれど、どこの国にいっても春にはその国を代表する樹々が美しい花をつける。といっても、私がいったことのある国では、花の下で車座になって酒を飲んでいる人々などみたことはない。もっとも古代には日本でも、桜より梅のほうが宴の対象になっていたようだが、梅の季節ではまだ寒くて、昨今のようにひと騒ぎする気にはならなかったに違いない。

 

 全体が心地よく流れる文章ですから、それをまず最後まで味わってみてください。
 一度味わった後、こういう読み方をしてみましょう。
 一つの文章の後ろの部分を指で隠して〈自分ならこう書いたな〉という様に読んでいくのです。

 まず
「桜の花が咲くと花見にくりだしたくなるのは、どうやら日本人独特の-」
で止めてみる。
 みなさんなら、その続きをどう書きますか?

 私ならきっと
「桜の花が咲くと花見にくりだしたくなるのは、どうやら日本人独特の-たのしみ方のようだ」と書き出したと思います。

 あるいは
「桜の花が咲くと花見にくりだしたくなるのは、どうやら日本人独特の-習慣のようだ
 と書いたかもしれません。

 内山節は
「桜の花が策と花見にくりだしたくなるのは、どうやら日本人独特の-習慣であるらしい」
と書きました。

 次のフレーズ
「もちろんソメイヨシノは日本の木であるけれど、どこの国にいっても春にはその国を代表する樹々が-」
で切る。

 さてみなさんならどう続けますか?

「もちろんソメイヨシノは日本の木であるけれど、どこの国にいっても春にはその国を代表する樹々が-あるだろう
でしょうか?

 あるいは
「もちろんソメイヨシノは日本の木であるけれど、どこの国にいっても春にはその国を代表する樹々が-花を咲かせるだろう
 かもしれません。

 内山節は
「もちろんソメイヨシノは日本の木であるけれど、どこの国にいっても春にはその国を代表する樹々が-美しい花をつける
 と書いています。

 「・・・だろう」ではなく「つける」と言い切っているわけです。
 キレがよくて気持ちもよい。

 こんな具合いに、魅力的な文章を書く人の文章を、自分の予想と重ねて味わっていくのです。

 こういう方法はわたし独特の読み方かもしれません。
 この読み方をすると、自分がそれを真似ることはなくても、引き出しが広くなっていきます。

 時々、惚れるくらいのフレーズに出会って、真似したくなることも出て来ます。

 逆に〈自分の言葉がよいな〉という場合も出て来るでしょう。

 

 こうやって読んでいくと、作者の細かい文章の妙に唸ることもあります。

 たとえば内山節は、この文章の前半で〈木〉と書き、後半では〈樹〉と表記しています。
「もちろんソメイヨシノは日本のであるけれど、どこの国にいっても春にはその国を代表する樹々が美しい花をつける」

 これは単なる表記の間違いではないでしょう。
 ソメイヨシノは木で、国を代表するものは樹と書きたかったのか?
 ソメイヨシノも国を代表する木なのですから、その予想も成り立たないでしょう。

 簡単に解決はつかないにしても、この妙は、こうやってじっくり味わっていくことでいろいろなところで目につきます。つまりそれは勉強になるということです。

 時々、自分の予想した言葉と、作者の言葉が同じ様に重なることもあります。もちろん一度読んでいるわけですから、そのせいもあるかもしれません。しかし、嬉しいことです。

 この読み方は、文章の後ろ側だけでなく、その中ごろで切って、どう続けるかという様にもたのしめます。

 読むことによって自分の文章力を高めることができる。
 それは偽りではなく本当のことです。

 お役に立てれば幸いです。

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