「科学では分からないところがある」 という論理ループのまやかし(前編)/メルマガ〈たのしい教育の発想法〉抜粋

 メルマガでマンガ〈Dr.STONE〉に出て来たセリフをとりあげて、前後編に分けて書いたところ、いろいろな反響が届いています。このサイトの読者の方たちにも、発想法に興味関心の高い方たちが多いので、前編のいくつかの部分を抜粋しておとどけします。子ども達が「この先生/うちの親って、他の人の言わないことを本気で伝えてくれる人なんだ」と感じて、信頼してもらえるきっかけにもなると思います。

 

 

 以前、この章で紹介した〈Dr.STONE〉のファンが周りでどんどん増えています。

 そのいくつか前に紹介した〈働く細胞〉もいろいろな方から「観ました」という便りが届いています。

 ある先生から「学校で子ども達にみせたいと思うのですけど、NHKなどの教育番組以外は学校で視聴し辛い雰囲気があります」という便りが届きました。

 管理職や周りの先生たちともめるのはおすすめではありません、〈和を以って貴しと為す〉がRIDEの方針です。

〈和を以って貴し〉というのは、相手に従うという意味ではありません。話をして解決するならよし、解決しない時でもバトルはおすすめしないということです。戦いは勝っても負けてもマイナスに溢れているからです。

 その時点で解決しないことはたくさんあります。

 初期の頃、板倉聖宣の「旗幟鮮明にして昼寝する」という発想を紹介したことがありました。

 周りと意見が違う。しかも反対すると首になるかもしれない、そんな時どうするか。
「そうですよね、私が間違っていて、皆さんが正しいです」というという自己否定ではなく、〈自分はこう思う、こう考えている〉という旗を明らかにする、それが旗幟鮮明にすることです。

 その場で一人二人ともめているゆとりはありません。その価値観を共有できる人たちをゆっくり広げていく、そういう長い闘い方に持ち込むのです。

 いつかまたこの章で紹介できると思います。

中略

板倉聖宣から教えられたこと

 師と仰いだ板倉聖宣から〈科学のすばらしさ、決定的重要性、そしてたのしさ〉を学びました。

 「真理に至る方法は科学しかない」そして、科学的に進めていくことでこそ社会は良くなっていくのだ、それをこれでもかこれでもかという様に教えてもらいました。

〈権力者はいろいろな方法で庶民をコントロールしようとする、それに対抗できるものは科学しかないのだ〉〈社会的なものも自然科学の手法で見方考え方をすすめていけるのだ〉と。

 たのしい教育研究所(RIDE)は板倉聖宣から学んだことを基本に活動を進めています。

 そうやって科学に全幅の信頼を寄せていると、人によっては「科学は万能である」という様に考えてしまうこあとがあります。

 しかし実際のところ〈科学〉には未だ分からないことがたくさんあります。

 遠い宇宙のことだけでなく、海の底の浅い地殻下にあるマントルについてさえ、その実態の研究が進み始めたくらいです。

「現代の人類は核の力を手に入れた」と表現されることがあります、しかし核分裂については再現できても核融合についてはまだ再現できていません。

 一つ解明すると、そこにはその何倍もの未知なものごとが広がります。科学の研究が進めば進むほど未知の領域が増えるという不思議なことが起こるのです。

 ここで、それを逆手にとった理論の組立をする人たちが出てきます。

 以前、RIDEを訪ねてきた某宗教団体の方も語っていたのですけど。

「科学で解明できないこともあるんです。天国もありますし、神様もいるんです。ちゃんと◯◯にそう書いているのです」

 似た理屈は超能力の存在を主張する人たちも使います、占い信者もUFO信者も使います。

 わたしが教師をしてしばらくした頃大ブームになった〈ノストラダムスの大予言〉もそうでした。「科学では分からないことがあるんです。不思議なことですけどノストラダムスの預言は的中してきたんです。1999年、地球に恐怖の大王が降ってくるんです」と。

 そのトリックについてはこれまでいろいろ書いて来たのですけど、簡単に触れると、〈抽象的なノストラダムスの言葉の羅列〉を、その後の人たちが都合よく〈あれはこういう意味だった、あの戦争はノストラダムスのこの言葉と合致する〉という様に拡大解釈して、最大の預言者と持ち上げてきたのです。そして「1999年に恐怖の大王が降って来る」と記されたノストラダムスの言葉通り地球は壊滅すると煽りました。それは原爆のことだ、いや大地震のことだ、いや本当に神が現れて天罰を下すのだ etc.

〈科学では分からないことがある〉→〈だから◯◯は存在する〉という論理ループ(循環)について、Dr.ストーンの主人公 石神 千空はこう語ります。

 

「科学ではわからないこともある」じゃねえ
わからねえことにルールを探す
そのクッソ地道な努力を
科学って呼んでるだけだ……!!

 

 見事な言葉です。

 

 私がドクター・ストーンを周りの人たちにすすめはじめたのは、こういう本格的なことを語ることのできるマンガだったからからです。

後略

 ここまでにしましょう。

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漢字が得意な子ども達とたのしく使える/出展をご存知の方がいたら教えてください

 教師をしている頃「◯◯って漢字でどう書くんだっけ」というと「先生、のぎ偏にこれこれ」という様に素早く教えてくれる子ども達が何人もいました。今回は、そういう子ども達向けの漢字クイズを紹介します。これは四、五年前に、ある子どもが持っていたものを「面白そうだから写真にとらせて」と手に入れたものです。どういう状況で、どの子のものを写したのか記憶にありませんけど、漢字の得意な子だったのでしょう、最後まで解いてありました。その子の答えは画像処理で消しておきましたけど、くねくね文字が続いていたので、スピードよく解いていったのだと思います。

 簡単そうに思えるかもしれませんけど、わたしは早くも4段目で考え込んでしまいました、みなさんはどうですか?


 これを拡大して教室にはっておくのもいいですね。

 学校には基礎的なドリルがいろいろあります、その中にこういう玄人向けのものも入れておくと、マニアック的にたのしめる子が出てきそうです。
 出展がわかれば研究所でも手に入れておきたいと思っています、ご存知の方がいたら教えてください!

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登校拒否・不登校だけでなく学級崩壊もどこでも起こりうる(後編)/目の前の子ども達とたのしく賢く笑顔でつきあっていくために

 前回の不登校・登校拒否の子ども達の数が〈ゆとりと生きる力〉への取組みの時期には増加を止め、文科省がその方針を撤回して〈授業時数増加〉に転じた頃に、また上昇を始めたグラフに強い関心を示した方からいくつも便りをいただきました。今回は〈学級崩壊〉との関係です。
 まだ実数などが明らかにされていない状況ですから〈予想〉を中心にした話になります、しかしその予想を立てて語ることはとても大切なことです。しばらくすれば、その予想が正しかったのか間違っていたのかがハッキリするからです。

 結果として小中学校の不登校・登校拒否の数はどんどん増加をしていますが、そのまま子ども達が学校を拒否していき、ほとんど誰も学校に行かなくなるのか?
 そういうことはないでしょう。

 しかし子ども達が〈拒否したくなる教育〉が相変わらずそこに横たわっていくなら、学校に通ったまま、その指導にNOを突きつける子ども達が増えていくでしょう、それが現在の〈学級崩壊〉の本質的な姿だと私は考えています。

 もしも、ある特定の教師に指導力がないからとか、ある学校のある学年の子ども達が特別に反発しやすい子ども達だとか、そういう特殊な現象にすぎないなら、これだけいろいろな処で学級崩壊の実態を耳にすることはないでしょう。
 採用から年数が浅い先生、中堅の先生だけでなく、私と同じ50代の先生たちのクラスでもそういう実態をいくつも耳にします。子ども達が荒れて、教師のいうことを聞かないという相談は少なくありません。それがたのしい教育研究所(RIDE)のある沖縄だけの現象だとは思えません。

 とはいえ、実は〈学級崩壊のデータ〉は明らかにされていません。あなたのクラスは崩壊していますか、という様なアンケート自体がないからです。

 文科省の明らかにした数字である、子ども達の暴力行為やいじめなどの統計から、荒れた状態を予測するくらいになります。

 これは〈学校の管理下における暴力行為発生件数の推移〉の推移です。右端はH29年=2017年です。

家庭教師のあすなろのサイトから

 高校や中学校が階段的に上昇し横ばいが続いているところの分析はいろいろな要素のからみがあると思いますし、学校に来ている来ていないというハッキリした〈登校拒否〉の数と違って〈認知件数〉つまり「これは暴力行為だ重大事案だ、そうとはいえない」という様な大人側の解釈を挟むことができる数ですから、いろいろな要素が絡んでしまうので、細かい違いを分析するのはやめておきましょう。

 極端な上昇を見せているのが小学校です。10年20年というスパンで見れば〈何十倍〉という増加をみてせいます、中学校も同じです。高校は数倍という増加です。

 あわせて〈いじめ・重大事態発生件数〉の統計を見ましょう、日経新聞からです。

 これらの伸びからみると、子どもたちは、学校で落ち着いてきているとは言えないでしょう。いじめやそれにつながる暴力については、学校でこれでもかというほど指導が強化されています。法的な整備もすすんでいます。それでも教師の指導を聞かない子どもたちが増えていると言えるでしょう。

 どんどん増加していく、暴力やいじめを前にして「自分は大丈夫」「自分のクラスは大丈夫」「この学校は大丈夫」という予想を立てておくのは無謀だと思うのですけど、どうでしょうか。

 では子どもたちは、どういう教育が実施されても荒れていくのでしょうか?

 いいえ、違うでしょう。
 実際に暴力行為の伸びがおさまったり、減少しはじめた推移もはじめのグラフから見ることができますし、高校はゆるやかに下降しています。

 警察的な強い指導をするということでとどまりはじめるかもしれません。しかし、教育にとって欠かせない要素である〈人間関係〉と並び立つことが難しい警察的な指導で、教育の効果が高まっていくことは考えづらいことです。

 あれも大切これも大切だと、どんどん指導内容を累積していくのではなく、もう一度、不登校が止まった頃の大きな変革に戻って、もっとゆとりのある教育に戻すことも大切でしょう。
 そしてそれは「子ども達がもっと学びたい、先生と勉強したい」と感じることのできるたのしい教育の方向にシフトしていくことと一体です。

 教育内容をどんどん累積し続ける時代はまだ少し続くでしょう。
 しかしこれも永遠に続くわけはありません、きっと変革の時期がやってきます。
 それまででも〈たのしい教育〉は有効な手立てを提供することができます。

 以前このサイトで「子ども達との人間関係より優先しなくてはならないことがあるのか?」と問いかけた記事があります、反響が大きかったものの一つです。
 気づいていた方たちもいましたが、人間関係を育てる教育というのが〈たのしい教育〉です。子ども達が「もっとこの先生から学びたい」と感じてくれる教育がたのしい教育の方向ですから間違いありません。

 たのしい教育を教師が学び、保護者が体感し、子ども達がそれを享受する、そうやってすすんでいくことで、子ども達との人間関係が深まっていく。
 そういう中で教師は「どういう教育内容も、まず人間関係を深めていくことなしには高まらない」ということで覚悟を決める。
「キミのクラスはこれをがんばれ、これが足りない」「隣りのクラスと比べてこっちが低い、あっちも低い」と言われたら「まず人間関係を大切なして子ども達を育てていきたいと考えています」と伝える。ただし、そこで時間つぶしのような教育をしていたら、それこそ目もあてられません。子ども達が「もっと学びたい」と言ってくれる様な洗練された教育内容、たのしい教育を実施するのです。
 子ども達が先生からもっと学びたいという様になったら、その先生の力をきっと周りの人たちが感じることでしょう。少なくとも管理職は感じてくれるはずだと思います。
 保護者の方たちもきっとあなたの味方に回ってくれるでしょう。

 今、たのしい教育研究所(RIDE)のメンバーで〈学級崩壊とたのしい教育〉をテーマにしたワークショップを開催する話が出ています。といっても、三月までは講座が満杯ですから、早くても四月以降になるでしょう。

 そのテーマのワークショップを待たず、ぜひいろいろな先生たちが、たのしい教育を学びにきてくれることを期待しています。
 どのテーマでも、例えば先日の〈スポーツ〉をテーマにした講座であっても、たのしい教育は子ども達との人間関係を育てる有効な手立てです。

 関心のある方はお問い合わせください。

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登校拒否・不登校だけでなく学級崩壊もどこでも起こりうる(前編)/目の前の子ども達とたのしく賢く笑顔でつきあっていくために

「学級崩壊はどこでも起こりうる」という話は刺激的な言葉で、こうやって広く語ることは初めてです。しかしRIDE( ライド:たのしい教育研究所 )に相談に来る管理職、一般の先生、たのしい教育に関わっている先生たちに私が語ってきた内容です。

 私いっきゅうが公立小学校の教師になったのは30年くらい前です、その時は〈登校拒否〉が大きなテーマになっていました。

 今切実なテーマになってきたのは〈学級崩壊〉です。
 この二つを並列して語りたいと思います。

 さて問題になっていた〈不登校〉は現在おちついてきたのでしょう、みなさんはどう思いますか?

登校拒否・不登校の推移

 予想
 ア.以前(30年くらい前)と同じくらい
 イ.あれからある程度増えた(20~50%現象)
 ウ.かなり増えてきた(2倍以上)
 エ.ある程度減ってきた(20~50%減少)
 オ.かなり減ってきた(1/2以下)
 カ.その他

 どうしてそう予想しましたか?

 

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予想してからね

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予想してからね

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 フリースクールネットワークが文科省の統計を元にまとめてくれているグラフを利用させていただきます。

 

文科省「問題行動調査」不登校児童生徒数を公開

 2000年を過ぎた頃おちつきはじめた小中学校の登校拒否・不登校の子ども達の数は2012年ころからまた上昇に転じています。

 落ち着いていた頃の年代は、文科省が授業時数を3割ほど削減し、週五日制を実施した〈ゆとり教育〉の時代と重なっていることを、ほとんどの教育関係者がハッキリ認識していないと思います。
 そして2011年には文科省が〈ゆとり教育の見直し〉で新しく授業時数を増やした指導要領がはじまると、はっきりと増加に転じてしまいました。

解説 wikipedia
第15期中央教育審議会第1次答申(1996年7月)において,子どもたちの生活の現状として〈ゆとり〉のない生活を指摘。

 その上で,答申は〈ゆとり〉のある教育環境で〈ゆとり〉のある教育活動を展開することを通して,子供たち一人一人が大切にされ,教員や仲間と楽しく学び合いの活動をし,〈生きる力〉を身につけていくことの重要性を指摘している。この提言をうけて,週5日制を含む授業時数の削減や教育内容の3割削減等が検討され,2002年の新学習指導要領実施にともない,完全学校週5日制が導入された。

 

 あまりにもみごとに重なるそのグラフについて、もっとたくさんの人たちが知っておく必要があると思います。
 しかしこういう実験結果をグラフを教育関係者の管制(文科省系・教育庁、教育事務所関係)研修会などでとりあげるのは皆無です。研修といえば管制のもので手一杯、時間いっぱいの先生たちが知らないのも無理はないかもしれません。

 授業時数の削減で生きる力を育てようと取り組んだ時に上昇が止まり、もしかすると減少していくのではないかと予想された不登校・登校拒否の推移は、授業時数を増加させたとたんに増加に転じます。
 まさにみごとな社会実験の結果です。

 その時いわれた〈学力低下〉の「学力」とはいったい何だったのか、保護者も教育関係者もしっかりみていなくてはけません。
 その学力を何について測定したのか?
 もしも削減された3割に関わるものが影響されていたら低下するのは当たり前のことです。
 実は2012年の国際学力テストでは得点が上昇しています。
 ゆとり教育を見直したから突然上昇したのでしょうか?
 そんなことは起こりようがありません。
 実は科学・数理・読解力などの力はゆとり教育の中でも落ちることなく、しっかり力を高めていったのです。→https://gendai.ismedia.jp/articles/-/48450?page=2 

 教育というのは目の前のことが重要であるだけでなく、10年20年30年というスパンで考えていくことも大切です、こういう実験結果を知っておくことが、実は目の前の子ども達との関係をよくしていくことにも繋がります。

 子ども達にあれもこれもと教育を詰め込んで、子どもばかりか教師もゆとりをなくし一心不乱に教育課程に取り組んでいくうちに、これからどういうことが予想されるのか・・・

 その指標の一つが〈学級崩壊〉です。

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 つづく