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  • 秋の夜長に「教員免許を本気で譲ろうと思った話!」を

    探し物があってデータを整理していると、なつかしい写真や動画が出てきました。
    立ち止まってしばらくみとれていました。
    今回はそのお話を書かせていただきます。

    わたしは長年教師をしてきました中で、子どもに「教員免許を譲ろう」と本気で思ったことがあります。そのお話です。

    ある年、2ヶ年がかりの希望が実り、久しぶりに学級担任をもたせてもらえた時のことです。
    その時うけもった男の子たちは元気でやんちゃな子どもたちがいっぱいでした。

    それは偶然のことではありませんでした。
    「きゆな先生がクラス担任するらしい」という噂が広まって、前の学年の先生達が相談して
    「この子はきゆな先生にお願いします」「この子もお願いします」「それからこの子も」という様に、結果的にかなり元気ものが集まってきたわけです。
    まあ、男の先生ということも、長年たのしそうに教師を続けているということも、両方あったからだと思います。

    それは望むところで、結果として一年間、とてもたのしく過ごすことができました。

    ところで、女の子というのは不思議と、子どもの頃からお母さんのセンスをもっています。
    タイミングもよく、元気者の男の子が揃ったその年は女の子達のお母さんの様なセンスも光りました。

    さて、運動会も終わって、おちついた秋の日。
    音楽発表会に向けて、音楽の専科の先生と話し合いを持っていた時間のこと。
    「発表曲」が決まり、続いて「歌」「ピアノ」の役割を決めようとするのですけど、ピアノが弾ける子が
    「私はずっとピアノばかりやらされてきたので、今回は歌を担当させてください」
    ときっぱり断ったということで、それをあてにしていた音楽の先生は困ってしまったそうです。

    その時、やんちゃ盛り最右翼とも言える2人が、よせばいいのに
    「はい、ボクたちがやります」
    と手を挙げたそうなのです。

    ピアノどころか笛も吹けずに、忘れものも多くて、音楽の時間は特に怒られていた二人です。
    音楽の先生は、「ふざけている」と思ったらしく、怒こってしまい
    「じゃあ、やってみなさい。でも途中で、できません、というのは許しませんからね」
    といって、音楽の時間を終えたそうです。※注:子ども達情報

    しかし案の定、音楽発表会が近づいてきても練習は一向に進まず、困った先生は
    「喜友名先生、あの子達なんとかしてください」
    と相談に来て、わたしはその時、やっと詳細を知ったしだい。

    「二人と一緒に音楽の先生に謝って、ピアノ担当変えてもらおう」
    と安易に考えていた私は、まず二人に
    「本当に手をあげたの? 何かの勘違いとかじゃないの?」
    と尋ねました。

    する二人は
    「いいえ、ピアノをやりたいと手をあげました」
    とのこと。

    「なぜによ?」
    と問うと
    「なんか、流れで」
    とのこと。

    「で、少しは弾けるわけ?」
    「それはさっぱり・ω・; 」と二人

    一人の子は
    「先生、でも、うちのお母さんは弾けます」
    とコントの様なことをいうので大笑い。

    もう一人は
    「一人では無理でも二人ならなんとかなるんじゃないかと思いました」とのこと。

    「そりゃあさ、半分ずつくらい弾けたらの話でしょ!」と心の中でつぶやく私。

    そんなうちに帰りの会が来て、クラスのみんなに相談してみることにしました。
    「どうするのさ、みんな」というと
    「ピアノが止まってもぼく達が大声で歌います」
    といってくれるじゃないですか。

    すばらしい!
    「歌は自信あるんだ(^^ 」

    すると女の子達が
    「先生、うちの音楽、そんなに甘い状況じゃありません。音楽の時間は毎回怒られっぱなしです」
    とのこと。

    苦手な音楽だけど、練習に付き合うしかないな。

    さて、ここではるみさん(仮名)という女の子が登場します。

    はるみさんは、ほんとにしっかりした子で、わたしが無事に担任を勤め上げたのも、この子がそばでサポートしてくれたからだと本気で思っています。

    とても久しぶりの学級担任の私に、出席の取り方から教えてくれました。
    「先生、もっとゆっくり呼んであげてください。そうすると体調がよいか悪いかちゃんとわかりますから」と的確なアドバイス。
    なるほど「いるかいないか」じゃないんだ。

    クラス会議でも「先生、いいじゃないですか話がわけのわからない方向にいっても。とんでもないことになるわけじゃありませんから安心していてください」
    という天使の声。
    まったくその通りだ。

    しかも、やわらかくしっかり私に伝えてくる。
    嫌味がない。
    すばらしい!

    さて、そのはるみさんは幼い頃からピアノほ習っていて、上手に弾けます。

    よくよく聞くとはるみさんが
    「今までずっとピアノばかりやらされてきたから、今年は歌を歌いたいです」
    ときっぱり言ったおかげで、この二人が手をあげるきっかけにもなったようです。

    わたしのクラスの方針はとても少なくて
    「たのしく元気にいこうじゃないか」というのと
    「ぜったいイヤだというものは人間かならずある。だからそれは先生も応援する」ということ
    「自分がされていやなことは、相手にもしない様に努力する」ということくらいです。

    はるみさんはそれで、
    「今年の担任はなんか違う。音楽の先生に、今年はイヤなものはイヤです、と言おう」
    と思ったようです。

    さて、放課後、はるみさんに、こうお願いしてみました。

    キミが音楽発表会で「ピアノを弾きたくない」というのは先生も支持する。
    ただ、こういう状況をわかってもらって、ここはひとつ、あの二人にピアノを教えてくれないかだろうか

    しばらく考えていたはるみさんは
    「はい、わかりました」
    と、さっそく指導してくれることになりました。

    これがその時の様子です。

    ピアノ指導2012

    このはるみさんの指導に勝る音楽指導をわたしは今まで見たことがありません。

    はるみさんは、
    「はい、じぁあ座ってぇ〜。はじめはドね。ドはどこでしょう?」
    「そうそうそこ。よくできました!」
    という感じで、どんどん相手をのせていくのです。

    「Tくんは左手のパートがよさそうね。Hくんは右手のパートでいきましょう!」

    「はい、Tくんは、この音の流れ。まず三つを覚えてみて。そうそう、でも、もっと強くね」
    という感じです。

    キョトンとしていた二人も、そのうちに、人差し指で音を取り始めていったのです。

    わたしもはるみさんに指導してもらったら、ピアノが上手に弾けるようになったんじゃないだろうか。

    ピアノが、というわけではなく、とにかくはるみさんの指導の仕方は、明るくて前向きで、くじけさせない。三拍子揃っているではないですか。

    おもわず、
    「はるみ! 先生…キミの指導の仕方に負けた。
    先生の教員免許、ほしかったらあげるから」
    と言ってしまいました。

    はるみさんは
    「いえいえ、そんなそんな先生にはかないませんよ」
    といってくれたのですけど、わたしは格闘家としての冷静な目でみて、
    「負けた」
    と思いました。

    ぜんぶ本当の話です。

    はるみさんの見事な指導と、天真爛漫な2人のキャラクターのなせる技で、たしか2週間くらいしか練習期間がなかったと思うのですけど、なんと、音楽発表会でうちのクラスが「学校代表」に選出されてしいました。

    今まで男の子がピアノを弾いたことはなかったそうです。
    しかも、ピアノを担当する二人が、学校でも元気印で有名な二人なので、観客も固唾を飲んで見守っていたようです。

    その二人が最後まで演奏した時には、割れんばかりの拍手でした。
    やんちゃ君二人のお母さん達は涙でボロボロでした。
    もう何年も前の話なのに、いまでも丁寧なお便りが届きます。

    もちろん、歌の子ども達も、思い切り声を出してくれました。
    最初に言っていた「ピアノが止まっても歌でカバーする」という勢いです。

    はるみさんが感動している顔が、なんとなく泣きそうになっている様に見えて、指揮をしている私も目頭が熱くなりました。

    地区の発表会はどうだったか?

    うちのクラスのメンバー、特に男の子2人は全力を使い果たし、結果として音楽の先生との約束も果たし、地区ではしっかりと落選しました。
    それでもクラスのみんなは大満足でした。
    誰からともなく、「卒業式の時にはあの歌を歌ってさよならしたい」という話が出て、式が滞りなくすんであと、みんなで合唱しました。

    それにしても、教師というのは素晴らしい職業だと思います。
    こういう体験がいくつもいくつもできるのですから。

    たのしい教育研究所で、子ども達と感動を重ねていく先生達を育てていきたいと思う日々です。
    実力あるたのしい教師を目指すみなさん、研究所の門を叩いてください。
    心からお待ちしています。

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