「正座孝」の続きです。未読の方は1つ戻ってから読みはじめてください。「〈正座〉とは〈ただしく座ること〉で、体育座りの正座、椅子に腰掛けての正座などいろいろな正座があるという様に理解してよいのか」というこだわりからスタートしたお話です。
『週刊現代』2016.11.26に「日本人が知らない「正座」にまつわる驚きの歴史」という記事があって興味深い話が載っています。⇒こちら
日本人が古来より正座していたかというと、それは大間違い。礼儀作法の上で正座が定着したのは、ほんの100年ほど前のことだったという。
そもそも両膝を折って腰を下ろす座り方は、かつて「かしこまる」と呼ばれ、庶民が貴人の前で平伏する際など限られた場面での姿勢であった。時代劇などで見られる、奉行所のお白洲に呼ばれた町人の姿を想像してもらうといいだろう。
逆に、今では行儀が悪いイメージの強い「あぐら」は、かつて「安座」と呼ばれ、江戸時代以前には大名の正しい座り方として認められていた。正座のイメージがありがちな茶道においても、千利休は、あぐらをかいて茶を点てていたのである。
明治新政府が、国民に等しく修身教育を施すにあたり、外国文化との対比を強調しようと、日本人としてあるべき正しい座り方として正座を選んだという。
さらにこの同時期に起こった二つの事柄が、正座の普及と関係している。
一つは、「畳」が誰でも使用できるようになったこと。それまで畳は贅沢品とされ、時として厚みや材質、縁の色や柄で身分を表現するのに使われていた。そのため農民や町人は畳を持つことができず、板張りの床での暮らしでは正座が定着するわけもなかった。
もう一つは、「脚気」の解明である。「江戸患い」と呼ばれるほど当時の人々に大流行したこの病気は、足の末梢神経障害を引き起こす。そのため、江戸時代の人々にとって正座は、まさに拷問に等しい姿勢であったのだ。
明治に入ってようやく、脚気が白米を中心とした食生活によるビタミンB1の欠乏であると解明され、治療・予防法が確立される。こうして人々は安心して正座できるようになったのだそうだ。
宗鐵(てい・むねてつ)『正座と日本人』(講談社)にも「日本人の正座は明治以来のもの」と紹介されています。
いろいろな資料を紐解いても、日本で広く〈正座〉が広まったのは明治になってからといってよいようです。
たとえば徳川家康のこの絵、あぐら(安座)ですよね。
それだけではありません。
いろいろな有名人の座り方を見ても、正座しているようには見えませんね。
正座は仏教的なものから来たのではないかという予想もあったのですけど、仏像を見るとけっこう自由な座り方をしています。
〈正座〉という姿勢は古くから特別な時(征夷大将軍にひれ伏す時や参勤交代の時ひれ伏す姿勢/ウィキペディア)には利用されていたけれど、一般に広まる様になったのは明治期、問題2の答えはウの〈明治になってから〉だといってよいでしょう。
では問題1の「正座は正しく座ることだから、いろいろな正座があってよい」についてはどうでしょう? 学校の椅子に腰掛けたままの姿勢を正座と言ってもよいのでしょうか。
いろいろな考え方があるかもしれませんが、少なくとも明治期から広まった〈正座〉はこうです。
空手道や柔道、剣道、弓術など伝統的な武道に残る正座ももちろん同じです。
ですからこれが一般的だといってよいと思うのですがどうでしょうか。
「沖縄で使われている正座はそうではない」とか、ある団体は椅子に座った状態でも正座と言っているという様ないくつかの事例で「正座にはいろいろある」と言って良いとは私には思えません。
ウィキペディアにこうあります。
沖縄方言では、この座り方を「ひざまんちゅー」と呼び、これをヤマトグチ化して「ひざまづき」と言う。
また沖縄で「正座」という言葉を使う場合は、椅子や地面に腰を下ろしたままで姿勢を正すことを意味する。
椅子に座った状態を「正座」と呼ぶのは沖縄県だけの様です。出典が無いので少しだけ疑問も残るのですけど、県外の皆さんで、自分のところでも椅子に座った状態で正座というという方がいたらぜひメールをください!
ということで問題2の「椅子に座った状態で『正座⇒礼』と掛け声をかけている都道府県は?」 沖縄だけだといってよいようです。
問題4「沖縄では正座のことを〈ひざまづき〉と表現する人がいます。わたしは子どもの頃バツとして〈きゆな君うしろにいってひざまづき〉と言われていたものですが、もうそういう表現型は残ってないのかもしれません。
ところで〈ひざまづく〉とは本来どんな姿勢をいうのでしょう?」
これは写真を見ていただきましょう。膝(ひざ)を地面につけることを〈ひざまづく/膝まづく〉というのです。
ですからこれも沖縄で違う形で使われてしまった言葉の1つだと言ってよいでしょう。
どこかで誰かが間違って利用してしまい、それがいつの間にか広まっていったのでしょう。昔はそういうことも起こり得たのでしょう。東京から遠く離れ、海が隔てた場所ですから。
そこで提案なのですけど、「かつて先生たちも間違って伝えてしまいました」と謝るとよいと思うのです。そのうえで、正座とはこういう姿勢をいうのだ、という様に伝えていくのです。教育委員会が間違ったわけではありませんが、沖縄県全体に広く伝えるには教育委員会からというのがよいかもしれません。
先生たちだって間違うことがある、ということは子ども達も学んでいてよいことの一つだと思っています。
では授業の号令はどうするか?
わたしは理科の時間など「いろんなあいさつの仕方があるということで、理科のときにはこうしてもらえませんか」という様に話して
「姿勢を正してください」⇒「礼」
とか
「姿勢を正しましょう」⇒「よろしくおねがいします」
という様な号令をお願いしていました。
もちろん学校によっては号令のかけ方を厳しく統一する校長先生もいて、そういう場合はしたがっていましたが、少なくとも「正座というのはこういうことをいうから覚えていてね」というように伝えていました。
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