最近書いた不登校やいじめについての記事に反響が届いています、やはりいじめや不登校は教育にとっての大きなテーマです。たのしい教育研究所(RIDE)設立の時に作成した活動指針には〈一般の子ども達、不登校の子ども達への支援〉という重要な項目があります、RIDEにとっても不登校の子ども達への支援は重要な活動です。
反響の中には管理職の方からの質問などもありましたので、お答えも含めてここに書こうと思います。
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質問は〈不登校について教育界全体としての方向性はどうなっているのか〉という言葉にまとめられると思います。
学校管理職の方へのスーパーバイズの時に利用した資料を元に紹介したいと思います。
資料に目を通す前に予想を立てておきましょう。
1.文科省は不登校を切迫した課題、緊急に解決しなくてはいけない問題だと捉えているのでしょうか?
ア.緊急に解決しなくてはいけない問題だというスタンス
イ.長い目で見て解決に向かっていかなくてはいけないというスタンス
ウ.その他
どうしてそう予想しましたか?
2.不登校をうまない学校づくりために〈1番目〉にあげている項目はどれでしょう?
ア.児童生徒の学習状況等に応じた指導・配慮イ.魅力的な学校づくり
ウ.いじめ,暴力行為等問題行動を許さない学校づくり
エ.保護者・地域住民等の連携・協働体制の構築
オ.その他
どうしてそう予想しましたか?
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これが3ヶ月くらい前、〈不登校〉に関して文科省が出した最新の文書です。都道府県の教育長に対しての通知なので、各県レベルで校長等に通達されるのはその後になります。
予想に対応する部分については下線を引いておきました。
こういう文書を読むのは苦手だという人がいるかもしれませんが、そんなに難しい話を書いているわけではありませんよ。通知の前段をそのままのせておきます。
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「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」令和元年10月25日
元文科初第698号
令和元年10月25日
各都道府県教育委員会教育長 殿
各指定都市教育委員会教育長 殿
各都道府県知事 殿
附属学校を置く各国立大学法人学長 殿
小中高等学校を設置する学校設置会社を所轄する構造改革特別区域法第12条第1項の認定を受けた各地方公共団体の長 殿
文部科学省初等中等教育局長
丸山 洋司
不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)
不登校児童生徒への支援につきましては,関係者において様々な努力がなされ,児童生徒の社会的自立に向けた支援が行われてきたところですが,不登校児童生徒数は依然として高水準で推移しており,生徒指導上の喫緊の課題となっております。
こうした中,「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」(以下「法」という。)が平成28年12月14日に公布され,平成29年2月14日に施行されました(ただし,法第4章は公布の日から施行。)。
これを受け,文部科学省におきましては,法第7条に基づき,平成29年3月31日,教育機会の確保等に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針(以下「基本指針」という。)を策定したところです。
さらに,法の附則に基づき,平成30年12月から「不登校に関する調査研究協力者会議」及び「フリースクール等に関する検討会議」において法の施行状況について検討を行い,令和元年6月21日に議論をとりまとめました。
本通知は,今回の議論のとりまとめの過程等において,過去の不登校施策に関する通知における不登校児童生徒の指導要録上の出席扱いに係る記述について,法や基本指針の趣旨との関係性について誤解を生じるおそれがあるとの指摘があったことから,当該記述を含め,これまでの不登校施策に関する通知について改めて整理し,まとめたものです。文部科学省としては,今回の議論のとりまとめを踏まえ,今後更に施策の充実に取り組むこととしておりますが,貴職におかれましても,教職員研修等を通じ,全ての教職員が法や基本指針の理解を深め,個々の不登校児童生徒の状況に応じた支援等を行うことができるよう努めるとともに,下記により不登校児童生徒に対する教育機会の確保等に関する施策の推進を図っていただくようお願いします。
また,都道府県・指定都市教育委員会にあっては所管の学校及び域内の市区町村教育委員会に対して,都道府県知事にあっては所轄の学校法人及び私立学校に対して,附属学校を置く国公立大学法人の長にあっては附属学校に対して,構造改革特別区域法第12条第1項の認定を受けた地方公共団体の長にあっては認可した学校に対して,この趣旨について周知を図るとともに,適切な対応がなされるよう御指導をお願いします。
なお,「登校拒否問題への対応について」(平成4年9月24日付け文部省初等中等教育局長通知),「不登校への対応の在り方について」(平成15年5月16日付け文部科学省初等中等教育局長通知),「不登校児童生徒が自宅においてIT等を活用した学習活動を行った場合の指導要録上の出欠の取扱い等について」(平成17年7月6日付け文部科学省初等中等教育局長通知)及び「不登校児童生徒への支援の在り方について」(平成28年9月14日付け文部科学省初等中等教育局長通知)については本通知をもって廃止します。
記
1 不登校児童生徒への支援に対する基本的な考え方
(1)支援の視点
不登校児童生徒への支援は,「学校に登校する」という結果のみを目標にするのではなく,児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて,社会的に自立することを目指す必要があること。また,児童生徒によっては,不登校の時期が休養や自分を見つめ直す等の積極的な意味を持つことがある一方で,学業の遅れや進路選択上の不利益や社会的自立へのリスクが存在することに留意すること。
(2)学校教育の意義・役割
特に義務教育段階の学校は,各個人の有する能力を伸ばしつつ,社会において自立的に生きる基礎を養うとともに,国家・社会の形成者として必要とされる基本的な資質を培うことを目的としており,その役割は極めて大きいことから,学校教育の一層の充実を図るための取組が重要であること。また,不登校児童生徒への支援については児童生徒が不登校となった要因を的確に把握し,学校関係者や家庭,必要に応じて関係機関が情報共有し,組織的・計画的な,個々の児童生徒に応じたきめ細やかな支援策を策定することや,社会的自立へ向けて進路の選択肢を広げる支援をすることが重要であること。さらに,既存の学校教育になじめない児童生徒については,学校としてどのように受け入れていくかを検討し,なじめない要因の解消に努める必要があること。
また,児童生徒の才能や能力に応じて,それぞれの可能性を伸ばせるよう,本人の希望を尊重した上で,場合によっては,教育支援センターや不登校特例校,ICTを活用した学習支援,フリースクール,中学校夜間学級(以下,「夜間中学」という。)での受入れなど,様々な関係機関等を活用し社会的自立への支援を行うこと。
その際,フリースクールなどの民間施設やNPO等と積極的に連携し,相互に協力・補完することの意義は大きいこと。
(3)不登校の理由に応じた働き掛けや関わりの重要性
不登校児童生徒が,主体的に社会的自立や学校復帰に向かうよう,児童生徒自身を見守りつつ,不登校のきっかけや継続理由に応じて,その環境づくりのために適切な支援や働き掛けを行う必要があること。
(4)家庭への支援
家庭教育は全ての教育の出発点であり,不登校児童生徒の保護者の個々の状況に応じた働き掛けを行うことが重要であること。また,不登校の要因・背景によっては,福祉や医療機関等と連携し,家庭の状況を正確に把握した上で適切な支援や働き掛けを行う必要があるため,家庭と学校,関係機関の連携を図ることが不可欠であること。その際,保護者と課題意識を共有して一緒に取り組むという信頼関係をつくることや,訪問型支援による保護者への支援等,保護者が気軽に相談できる体制を整えることが重要であること。
2 学校等の取組の充実
(1)「児童生徒理解・支援シート」を活用した組織的・計画的支援
不登校児童生徒への効果的な支援については,学校及び教育支援センターなどの関係機関を中心として組織的・計画的に実施することが重要であり,また,個々の児童生徒ごとに不登校になったきっかけや継続理由を的確に把握し,その児童生徒に合った支援策を策定することが重要であること。その際,学級担任,養護教諭,スクールカウンセラー,スクールソーシャルワーカー等の学校関係者が中心となり,児童生徒や保護者と話し合うなどして,「児童生徒理解・支援シート(参考様式)」(別添1)(以下「シート」という。)を作成することが望ましいこと。これらの情報は関係者間で共有されて初めて支援の効果が期待できるものであり,必要に応じて,教育支援センター,医療機関,児童相談所等,関係者間での情報共有,小・中・高等学校間,転校先等との引継ぎが有効であるとともに,支援の進捗状況に応じて,定期的にシートの内容を見直すことが必要であること。また,校務効率化の観点からシートの作成に係る業務を効率化するとともに,引継ぎに当たって個人情報の取扱いに十分留意することが重要であること。
なお,シートの作成及び活用に当たっては,「児童生徒理解・支援シートの作成と活用について」(別添2)を参照すること。
(2)不登校が生じないような学校づくり
1.魅力あるよりよい学校づくり
児童生徒が不登校になってからの事後的な取組に先立ち,児童生徒が不登校にならない,魅力ある学校づくりを目指すことが重要であること。
2.いじめ,暴力行為等問題行動を許さない学校づくり
いじめや暴力行為を許さない学校づくり,問題行動へのき然とした対応が大切であること。また教職員による体罰や暴言等,不適切な言動や指導は許されず,教職員の不適切な言動や指導が不登校の原因となっている場合は,懲戒処分も含めた厳正な対応が必要であること。
3.児童生徒の学習状況等に応じた指導・配慮の実施
学業のつまずきから学校へ通うことが苦痛になる等,学業の不振が不登校のきっかけの一つとなっていることから,児童生徒が学習内容を確実に身に付けることができるよう,指導方法や指導体制を工夫改善し,個に応じた指導の充実を図ることが望まれること。
4.保護者・地域住民等の連携・協働体制の構築
社会総掛かりで児童生徒を育んでいくため,学校,家庭及び地域等との連携・協働体制を構築することが重要であること。
5.将来の社会的自立に向けた生活習慣づくり
児童生徒が将来の社会的自立に向けて,主体的に生活をコントロールする力を身に付けることができるよう,学校や地域における取組を推進することが重要であること。
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整理してみましょう。
文科省は不登校児童生徒の数がかなり多いという認識で、それを〈喫緊の課題〉と書いています。喫緊の課題というのは〈緊急に解決しなくてはいけない差し迫った課題〉という意味です。
不登校が生じないために真っ先に明記したことそれは〈まず魅力的な学校づくりだ〉というのです
これは大きく見れば〈たのしい教育研究所〉のスタンスと同じです。人間が魅力を感じることにはいろいろあるでしょう、毎回ほうびをもらえたら魅力を感じるでしょうし、他の人たちが叱られ自分は褒められるとしたら、それに魅力を感じる人がいるかもしれません。しかしそういう外発的な動機付けは時間の流れの中で効果を失い、マイナス面が増えていくことは心理学的な実験からも明らかです。
本質的な魅力的な学校づくりに〈たのしさ〉は欠くことができません。
〈NPO等との連携して協力・補完していく必要がある〉と明記しているところもまさにRIDE( ライド:たのしい教育研究所 )の設立趣旨と合致します。
文科省が〈たのしい教育〉と明記するまでにはまだ時間がかかるでしょう、しかし今現在でも、文科省が全体としてイメージしていることは「子どもたちが学校にいくのがたのしいという様な教育をしようよ」ということだと思うのですけが、どうでしょうか。
教育にはいろいろな問題や課題が横たわっています。時代が進むにつれて、教育の効果によってその課題は減っていくと思うかもしれませんが、人々の興味関心の多様化や欲求水準の高まりによって、ますます問題や課題は増えています。そかし教育界全体が〈たのしい教育〉に実質的にシフトすれば、多くの問題や課題は氷解するはずです。
教師自身が〈早く学校に行って子どもたちに授業したい〉と思える様になり、新しい豊かな世界に向けての胎動がはじまると思います。
特に教員試験を受けるかた、教育管理職試験を受ける方は、しっかり読みこなしておく必要があります。
今日は少し固めの話でした。しかし、このサイトに綴っている記事の根流にはいつも、こういう視点があります、いかがでしたか´ー`)
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