手作り顕微鏡/手づくり顕微鏡の自由研究、研究開発の成果をお届けします。おそらく3回シリーズになると思います。
開発中から、かなり好評で、それを「たのしい教育メールマガジン」に書いたところ、そこでも嬉しい反響が届いています。
「ぜひいろいろな方達にも」という要望もありましたので公開したいと思います。
たのしい教育研究所には人気の授業プラン「レンズの魅力(みりょく)」があります。透明な曲面は光を集めたり拡散したりする、モノを拡大して見せてくれたり小さくしたりてみせてくれる、ということを感動的に体験することができます。
「レンズの魅力」には、ものづくりのコーナーがあって、手づくりの虫めがね(眼鏡)でたのしむ時間。
それを進化させて、さらに倍率の高い「顕微鏡」を作りたいと思って研究開発を進めてきました。その成果が「たの式けんび鏡」です。たのしい教育研究所で開発したけんび鏡という意味で名づけました。
20倍程度の顕微鏡が簡単に出来上がります。
材料は100均で入手できますし難しい加工は1つもありません。
現在、たくさんの方達が挑戦してくれていますが、その報告、そして研究所内でためしてもらっている結果から、30秒〜1分くらいで出来上がります。
ぜひこれを利用して「レンズの魅力」「拡大して見る感動」を味わってみませんか。
科学の歴史には、人々がそのものごとを初めて発見した感動がたくさんつまっています。人々がはじめてそれを発見し、熱中した様子を追体験することは、最新型の機器を手にする様に、ワクワクすることかもしれません。
携帯電話の魅力は画期的ですが、糸電話もすばらしい魅力にあふれている、ということです。
小さな世界の生物を研究して、人々にその魅力を伝えたのはロバート・フックさんです。生き物が「細胞(セル)」から出来ていることも、フックさんの研究成果です。フックさんはバネの研究も有名で、「フックの法則」という名前で今に名前が残っています。
それから名前が似ているので混乱する人がいるかもしれませんが、「レーウェンフック(レーヴェンフック)」という人物の研究を高く評価して、その研究を人々に広く紹介しました。レーウェン・フックさんは、ロバート・フックさんが見た世界より、もっと小さな世界を人々に見せてくれた人物です。
レーウェンフックさんは1632年に生まれ1723年まで生きました。日本で言えば江戸時代、そして計算すると90才まで生きたことになります。
その時代に90年生きたというのは、とても長生きした人物です。
レーウェンフックさんは、学校などで専門的に学んだというわけでも、科学者だったというわけでもなく、布屋さんとして暮らしを立てていました。
生地の細かい部分を見て、良し悪しを見分けるために、レーウェンフックさんは自作の虫めがねを利用していました。
そのうちにもっと倍率の大きいもの、今でいう顕微鏡を作り始めたのです。
顕微鏡というと、接眼レンズと対物レンズの2つのレンズを組み合わせたものが普通ですし、けんび鏡が発明されたはじめの頃、ロバート・フックさんが作ったけんび鏡も2つのレンズを組み合わせたタイプでした(下の図)。複式けんび鏡と呼ばれています。
しかしレーウェンフックさんが作ったのは1つのレンズで見るタイプでした。
小さな球体のレンズを作ってはめ込み、手のひらにかるく収まる大きさの顕微鏡を自作したのです。
1mmくらいの一個の球体レンズを小さな穴にはめ込む単式けんび鏡で、200〜300倍くらいの倍率があったと言われています。その頃主流だった二枚レンズの複式顕微鏡でも150倍くらいがやっとだったということですから、レーウェンフックさんは、それにはるかに勝る倍率のけんび鏡を作ったのです。
福島県教育センターの所報の資料がわかりやすいので図を掲載させていただきます。
左がレーウェンフックの単式顕微鏡、右がロバート・フックの複式顕微鏡です。
出典 福島県教育センター所報
単式けんび鏡の使い方の図を拡大してみましょう。
ガラス球を取り付けた穴からのぞいて、左の針の様にとがった先に、観察したいもの(試料)をさして取り付けます。
ネジがありますが、それでピントを調整します。
よく知られたレーウェンフック式 手作りけんび鏡
理科の先生たちの中で割と知られているレーウェンフック式の手づくりの顕微鏡があります。
ペットボトルに1mm〜2mmのガラスビーズを入れて作ります。200倍くらいの大倍率で、ピント調節も可能です。
わたしも研修会で教えてもらい作ってみたことがあるのですけど、小さな場所にレンズをセロハンテープで固定するのに手間取ったり、フタの部分を回転させてピントを調整する時に、そのテープがはがれてしまったりと、困ることがありました。
また画像が暗いので、見るもの(試料)が透明なものでないとよく見ることができません。反対側からの光が、試料を通してレンズに入ってくるものでないと、観察に適さない様子だったので、いろいろなものを見たいというわたしの好奇心を満足させてくれることなく、授業にかけることはありませんでした。
もちろん、このタイプはいろいろなところで試みられていて、喜ばれている様ですから、決してそのものの価値が下がるというわけではありません。
NHKのサイトが動画で説明してくれているので分かりよいと思います。
興味のある方はぜひ挑戦してみてください。 ➡︎こちら
たの式けんび鏡
ところで、たのしい教育研究所のものづくりでテーマは下の四つです。
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1) たのしい
2) できるだけ入手しやすいものを利用する
3) 特別な技能を要求せず成功率 90パーセント以上
4) 安全である
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この四つの条件をクリアーするけんび鏡作りが、わたしの自由研究のテーマの1つでした。
その結果、レーウェンフックさんが作った単式けんび鏡をモデルに作成した「たの式けんび鏡」が出来上がりました。
「たのしい教育研究所式けんび鏡」を略して「たの式けんび鏡」と呼んでいますが、レーウェンフックさんの作ったタイプ「単式けんび鏡」の呼び方に何となく似てると思いませんか。ぜひこの名前も覚えていただきたいと思っています。
これが「たの研式けんび鏡」です。レーウェンフックさんのけんび鏡の様に手のひらにすっぽり収まるサイズです。
レンズを何にするかがカギでした。
レーウェンフックさんの単式けんび鏡の様に「球体レンズ」で倍率を高くしようといろいろ探し回りました。
ポイントは、ガラスに勝るとも劣らない屈折率(倍率に強く影響します)と透明度、球面のキズのなさです。
この「たの式顕微鏡」の倍率は約20倍程度ですが、明るいので子ども達にも利用しやすいと思います。
不思議に思うかもしれませんが、使っているうちに倍率が少しずつ高くなります。
レンズ球の直径が小さくなってきて倍率が高くなるのです。
何をレンズにしたのか?
それは次回の作り方で紹介します。
倍率について少し付け加えましょう。
小学校で理科を担当した頃のことです。
わたしの理科室は、休み時間や放課後などでも、子ども達がいろいろな実験や観察ができる様に工夫してありました。
季節や子ども達の単元でいろいろなもを展示したりしましたが、年間を通じて常設してあったのが「けんび鏡コーナー」でした。
ごく普通の100倍200倍のけんび鏡と並べて、ニコンのファーブルミニという顕微鏡を1つおいてあったのですけど、ファーブルミニは倍率が低く20倍でしたが、他のけんび鏡よりずっと人気がありました。明るく見やすかったからです。
球体レンズですから、レーウェンフックさんのけんび鏡と同じで、焦点距離(見るモノとレンズの距離)が1〜2mmと、短いので、慣れるまでにほんの少し時間がかかるかもしれません。普通のけんび鏡も、メンズに目をグッと近づけますし、見るもの(試料)も対物レンズのすぐ先に置きますから、その距離感をイメージできる人にはカンタンですけど、形が「虫めがね」的なので、ついつい、距離を長くとってしまって「見えづらい」という様に思う人も出る様です。
作り方の前に、どう見えるかごらんください。
たの式けんび鏡の見え方
沖縄の代表的な花にハイビスカスがあります。研究所の近くにもたくさん咲いています。
先端にのびた5つのアンテナの様なものが「めしべ」、その下の先端が黒いものが「おしべ」です。
たの式けんび鏡が20倍程度だと言ってもかなりたのしめます。
〈おしべ〉を「たの式けんび鏡」でみると…
よく見てください、おしべの先についている花粉が何個くらいついているかも数えられそうな気がしませんか。
特別にライトを当てたわけではなく、ごく普通に家の中の光が当たっている状態で、これくらいの状態で見ることができます。
これくらいの大きさに拡大できるわけですから、たのしみが広がりそうだと思いませんか。
小さな世界を発見して研究をすすめた人たちは、こういう世界を目にして感動し、研究がやめられなくなっていったのです。
私たちもさっそくやってみましょう!
次回は、いよいよ作り方編です。
おたのしみに。
自由研究こそが本物の研究!
たのしい教育研究所です
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