「おばけいちねんぶん」 おすすめブックレビュー/読み語り・読み聞かせ

『おばけいちねんぶん』   星川遥 (小学館)

こわいけどドキドキ感がたまらない「おばけの本」はいかがでしょうか。

今回は、おばけの本は苦手だという人でも楽しんでいただける
『おばけいちねんぶん』
というとてもたのしい絵本を紹介します。

350_ehon6882おばけいちねんぶん (おひさまのほん)

まず、表紙からいいんですよ。

立て札に

 ゾクゾクするけど ワクワクする

ドキドキするけど ウキウキする

これなあに

ヒント・・・ ◯◯け

 

と書かれています。

表紙のタイトルとそのクイズを読んだだけで、こたえはすぐわかってしまいますよね。

こどもたちは大きな声で「おばけ〜」とこたえてくれます。
はじまりはこういうかんじです。

主人公の男の子は、早く帰りたかったので、近道をしようとして墓場のところにやってきました。
「やだなー」・・・、

立て札にかかれていたクイズを読んで「お・ば・けかな、?」とつぶやいてしまいました。

すると、目の前にちょうちんが落ちてきて、

パカッ!  と割れて

中からべろ~ん!

と舌が出てきました。

そして、「おおあたり~…せいかいしゃには、おばけいちねんぶんをさしあげま~す」と言うんです。

というわけで1月の「ろくろっくび」からはじまって12月まで、いろいろなおばけ達がやってくることになりました。

5月のふうせんみたいなおばけと空を飛ぶところなどワクワクしてきますし、10月の「のっぺらぼう」に好きな顔を描いて遊ぶ所など、らくがき好きにはたまらないでしょうね。どんなお化けが出てくるかは読んでのおたのしみ。

おおみそかに、おばけたちと「おばけすごろく」をしたときに、男の子がいちばんにあがったので、今度は「せかいいっしゅうおばけツアー」に招待されます。どんなツアーなのか・・・それは、続きの絵本『せかいいっしゅうおばけツアー』でね。

こんなおばけがいたらいいな〜と思ってしまう人もいると思いますよ。

絵本の中にでてくるおばけたちの、「おばけずかん」もついています。

暑い夏、ゾクゾクするけど、ワクワクする。ドキドキするけど、ウキウキする、そんな、こわいくてたのしいおばけの絵本はいかがでしょう。

hina

たのしい読み語り・読み聞かせを推進する
たのしい教育研究所です

うちの子を弟子にしてやってください!/お母さんから届いた手紙

教師をしていた頃、月一回の勉強会で必ずレポートを書くようにしていました。
その時のレポートが出てきました。
もう十数年も前に書いた内容ですけど「教師というのは本当にすてきな仕事だなと」とても懐かしく思いました。

今回は、その一部を抜粋して掲載させていただきます。

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「うちの子を弟子にしてやってください」

○年○月○日 喜友名 一

つい最近、わたしが理科を教えている子のお母さんから手紙が届きました。
とてもすてきな内容です。

そうその前に、その子について。
Rちゃんは3年生で、今年から私が理科を担当している子です。
静かな子で、私に積極的に話し掛けてくるタイプではないのですけど、わたしの授業をとても気に入ってくれて、いつも丁寧に授業をうけてくれます。
でも直接わたしに話しかけてくる、という感じではありません。

 

Rちゃんのお母さんから

最近、そのRちゃんが私の研究室をノックして「お母さんからの手紙です」と、かわいい封筒を手渡してくれました。
その手紙を読んで私はますます元気になりました。
読んで元気が出てくる人もいるのではないかと思うので、レポートに書くことにしました。
このレポートに書くにあたって、お母さんの許可は頂いているのですけど、個人が特定できないように、少しだけ手をいれておきます。

喜友名先生へ

こんにちは、はじめてお便りをさせていただきます。

○年  Rの母です。

娘がいつもお世話になり、ありがとうございます。

学年があがってからというもの、うちでよく喜友名先生の話題が出てきます。

「お母さん、今日ね、喜友名先生がね・・・」

「今日、外に出てたら喜友名先生がね・・・」

そうたのしそうに話しております。

これまで、科学的なことにこれだけ興味があるとは知らなかったので、親としてもびっくりしています。

中略

ところで昨日のことです。

「お母さん、お願いがある」

とニコニコ顔で

「お母さん、喜友名先生に手紙をかいてちょうだい・・・」というのです。

「え、どんな手紙?」と聞くと

「喜友名先生の弟子にしてあげてください、って手紙」

自分でいうように話しましたが、積極的ではない子ですから、過保護と思われるかとも思いましたが娘の強い希望に応えてペンをとりました。

日ごろお忙しい喜友名先生のこと、ますますお忙しくてしまい、迷惑になるかもしれませんが、ぜひうちの娘を弟子にしてくださいますよう、お願いいたします。

後略

 ※

 

教師という仕事は、その子どもたちのすてきさをほんとにたくさん感じきれる仕事です。

いったいいつまで教師という仕事を続けていくのか、まだわからないのですけど、教師を続けている間は、ずっとこうやって子どもたちのすてきなところとか、その家族の人たちのすてきなところに向かって暮らしていきたいと、とても贅沢なことを考えている、今日この頃です。

以上

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宇宙研究の第一人者 平林久先生のおすすめ本「星と生き物たちの宇宙」

ひと月ほど前に平林久先生が沖縄に来てくださった時のことを書きました。
平林先生は宇宙研究の大家であり武術の達人、まさに文武両道で生きている方です。⇨https://tanokyo.com/archives/5666

わたしが平林先生と初めて出会ったのは、2007年、沖縄で開催した「コズミックカレッジ」でのこと。
平林先生がブラックホールの講義をする時、わたしも自分の授業を終えてサポートさせてもらいました。小学校の子ども達が多かったので、ところどころで話に加わって、平林先生の話のイメージが伝わる様に、対談的に進めさせていただいたのです。

コズミックカレッジが大盛況で終わってあと、
「きゆなさん、出来立ての本ですけど、プレゼントさせてください」
と直接手渡してくださったのが

星と生き物たちの宇宙―電波天文学/宇宙生物学の世界 (集英社新書)

です。

これです。
なんども読んだので、ずいぶん古びてしまいました。

スクリーンショット 2015-06-28 21.28.18星と生き物たちの宇宙―電波天文学/宇宙生物学の世界 (集英社新書)

対談でありながら重厚な内容です。

開いてみましょう。
ここは、この本の中でも難しいテーマの部分です。
しかし平林先生が、誤魔化さずに質問に直球で答えてくれているので、わかりよいのです。
宇宙に興味のある方は入門編としてお勧めいたします。

スクリーンショット 2015-06-28 21.26.45 平林先生が「日付とサインいれましょう」とメモしてくださったので温かみが伝わってきます。

研究所に来る方で、サイン本を読みたい方は、お声がけください。

スクリーンショット 2015-06-28 21.28.27

 

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ファインマンと原子論/科学の見方・考え方

すでに他界していますが、ファインマンはわたしが注目している科学者です。
1965年に朝永振一郎らと一緒にノーベル物理学賞を受賞しています。

先月、このサイトにも書いています。  ⇨  https://tanokyo.com/

thumbnail.image.shashinkan.rakuten.co.jp

 わたしが教師の時にいろいろコピーして残してあった資料から、彼について書かれた文章が出てきました。

紹介させてください。

元国立教育政策研究所室長・現日本科学史学会会長 板倉聖宣が2002年10月に
四条畷学園小学校で語ったものです。

読みやすくする為に少しだけ喜友名が手をいれてあります。

    今度,私は『たのしい授業』で,〈原子論を中心とした科学と社会の歴史〉と,長ったらしい表題の連載をやっていますが,始めにこれは〈科学の歴史〉だったのです。
それで,あの連載が始ってから,「これは科学と社会の歴史になる」というので,〈社会〉というのを補ったのです。
なぜならば,原子論というのは科学の最も中心的な話題だからです。そして,それはほとんど社会現象と連動しております。

昨日も言いましたけれども,原子論はルネッサンスが起こると変わります。ローマが滅びると変わります。ギリシャが滅びると変わるし,ギリシャが勃興しても変わります。

だから,科学の歴史と同時に社会の歴史なのです。だから,これはもう初めから総合学習なのです。総合的な学習だから,そういう授業は楽しくなるのです。
「原子論が全ての科学の中心であった」と言うのが,私の若いときからの一貫した主張でありますが,その私にとってとても都合のいい発言をしている人がいます。
みなさんの中にもご存知の方がたくさんいると思うのですが,ファインマンさんです。日本の朝永振一郎さんと一緒にノーベル賞を受けた人です。

日本人はアインシュタインが好きな人が多いのですが,それと同じぐらいファインマンさんは人気があります。アメリカ人の物理学者でありますが,亡くなってしまいました。反体制的な活躍もしていてノーベル賞も辞退しようとした人です。

ファインマンさんを教育にかかわる話を一つだけご紹介しておきますが,とても見事な話が紹介されています。一番初め日本で出たファインマンさんの本は『物理法則はいかにして発見されたか』というので,私と共著のある江沢洋さんが訳しているのですが,江沢さんがファインマンさんと面識があるから序文に書いているのです。

ファインマンさんは子どもが好きで,家族連れでピクニックに出かけた時にグランドで子どもたちがかけっこをしていた。そこに4才位の子どもが「もし僕が勝ったら,お金をちょうだい」と手合わせを申し込んできたのですね。「よし!」という話になります。

みなさんならどうしますか?
小さい子どもと一緒にかけっこするという時に,ほとんど全ての人,私なんかもそうでありましたが,真剣には走りませんね。

子どもに合わせて,子どもが勝つか負けるかぎりぎりのところで子どもと速度を合わせます。日本の大人は協調性がいいのですね。子どもと合わせて,子どもを喜ばせたり,悔しがらせたりして,その時の様子でいい加減に走ります。初め子どもはそんなことに気が付かなかったりしますが,すぐに「あの,おじさんは,適当にしか走ってない」と気が付きます。わざと勝たせてくれたとか,わざと遅くしたとか,それが場合によっては子どもには屈辱です。

 

ファインマンさんはそういう時にどうしたのか?

「よーし,かけっこだ」という時に,子どもは走るのですよ。ファインマンさんは後ろ向きになったのです。後ろ向きになってかけっこをすると,子どもに勝てるとは限りません。だから真剣に走らないと子どもに負けてしまいます。それで200mも腕を背泳をするみたいに大きく振って後ろ向きで走り続けて,大きな息をしながらゴールしたと言うのですね。子どもには負けたのです。

ファインマンさんはそういうことが出来て,真剣に子どもと付き合うことの出来る人なのです。

アメリカで飛行機が落ちたり,ロケットの打ち上げが失敗をしたりすると事故調査委員会が出来ます。その時にファインマンさんはその事故調査委員の一人になります。彼はガンであるけれども,そういうのを引き受けるのです。

 

このファインマンの本が岩波書店から翻訳で出ています。こんな大きな厚い,『ファインマン物理学』という本です。

日本では岩波書店から原著は3冊だったのを5分冊にして出しています。

これは大学の教科書です。

こんなに大きな本でこんなに厚いのですから日本の学生たちは読めません。しかし,アメリカではそんなのは当たり前なので,どの大学の教科書もみんな厚いのです。

その本の「力学」の部分が日本語訳はもっとも長くなっています。その力学の本の一番前に「原子論」のことが書いてあります。そこには,

「もしも,今何か大異変が起こって科学知識が全部なくなってしまい,ただ一つ文章だけしか次の時代の生物に伝えられないと言うことになったら,最小の文章で最大の情報を与えるにはどんなことだろうか?」と。

 

みなさんはどう思いますか?

 

力学の教科書だから,「力学を伝える」と書いてあるかと言うと,そうではありません。「私の考えでは原子仮説だろうと思う」と,人類の最大の発見は原子論であると。

「原子がこの世にはあって,それによって出来ているということを次の時代の文明を持った人たちに伝えていく」と,最も短い言葉でそのように書いています。

 

あの,ファインマンさんの力学というのは,そういう脱線をするのです。「私はそう思う」と,ファインマンさん個人が出てくるのです。「物理学者はみんなこう考えている」なんて,そんな世論調査みたいなものではありません。ファインマンさんみたいな創造的な人は,「私はそう思う。みなさんはどうか」という形で書いているのです。

だから「原子論というのが最も人類の財産だ」と,これは私の主張でありますけれども,ファインマンさんの主張でもあります。それでファインマンさんは,現在の科学者の中で最も影響力がある人です。

以上

 

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