主体的・対話的で深い学び(新学習指導要領)/うるま市の教育講演会に参加した方たちからの便り

〈主体的・対話的で深い学び〉という言葉は、来年度から施行される新しい学習指導要領の重要なキーワードです。先日、研究所近隣の市の教育委員会が主催した講演会に、その新学習指導要領の編成に関わった講師がそのことについてお話をしたとのこと。
 多くの教育関係者がそこに参加し、参加した先生たちから「まるで〈たのしい教育研究所〉のことを語っているようでした」というお話が複数届いています。

 今回は新学習指導要領の〈主体的・対話的で深い学び〉と〈たのしい教育〉との関係について書かせて頂きます。

 おかげさまでたくさんの方がこのサイトを見てくれる様になりましたから、中には学校教育などとは縁遠い方もいると思います。「学習指導要領」というものを知らない方も多いかもしれません。
 学習指導要領というのは文科省が示した〈それぞれの学校でカリキュラム(教育課程)を組む時の基準〉です。少し大きめの書店で入手できますし、文科省のwebサイトでも読むことができます→こちら その中では例えば五年生の算数の中で「(4) 立体図形の体積に関わる数学的活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア次のような知識及び技能を身に付けること。
(ア) 体積の単位(立方センチメートル(cm ,立方メートル(m )につ3 3 ) )
いて知ること。何年生では何を取り上げる、という様な具体的なことが列記されています。etc.」

 サイトを見ていただいてもわかる様に、たのしい教育研究所は教科の枠を超えた幅広い内容を対象に授業や講演活動を実施しています。それは芭蕉の俳句がテーマになることもありますし、フロイトの仮説がテーマになることもあります。宇宙飛行士がテーマであったり、ブラックホールがテーマであったりします。科学的な原理原則をとりあげて大学レベルの内容を幼稚園の子どもたちに実施したりすることもあります。学校の中で〈クラス担任〉として受け持ちの子ども達に授業をしているわけではありませんから学習指導要領に縛られる立場ではありません。
 しかし若い先生たちとのワークショップも多い関係で、それを何度も何度も読んでいます。学校現場にいた頃より何百倍も多く学習指導要領を読んでいます。おそらく普通の学校管理職の方たちよりずっと多く読んでいる気がします。
 ですから新学習指導要領の〈主体的・対話的で深い学び〉というキーワードは何度も目にし耳にし語ってもきました。

〈主体的・対話的で深い学び〉は特に難しいことを言っているわけではありません。
〈主体的な学び〉というのは〈自ら進んで学ぶ〉ということです。
〈対話的な学び〉というのは〈話し合いや討論などが交わされる中での学び〉ということです。
〈深い学び〉というのは〈より内容に深く突っ込んで学ぶ〉ということです。

 ところが「〈主体的・対話的で深い学び〉が成り立つ授業を日頃から実施しなくてはならない」となったら、いったいどうしたらよいのでしょう?
 みなさんはどう思いますか?

 わたしが教師を退職して設立した〈たのしい教育研究所〉は、〈自ら学びたくなり、どんどん対話が生まれ、原理や原則など基本となる深い内容を学び取っていく教育〉をいろいろな方たちに広げたくて設立したものである、と言う説明の仕方もあるほど、〈たのしい教育〉と〈主体的・対話的で深い学び〉は結びついています。

 これは先月実施した沖縄県グッジョブフェアでの授業の様子です。
  「キャリア教育という視点からも〈予想チャレンジ〉が大切」というテーマで、構造力学や生命維持など本格的な内容で授業しました。対象は小学生から大人までです。しかし毎回恒例で保育園に通っている子ども達も参加しています。
 個人を特定しにくいように加工した写真ですけど小さな子も大人も混ざっていることがわかると思います。大人から子どもまで全員が真剣に授業に参加しています。大人も真剣に頭を働かせる中で、子どもたちが手をあげて自分の考えを話してくれたりしています。

 

 これはあるテーマでグループワークをしているシーンです。グループのメンバーがそれぞれのいろいろな考えを出し合いながら話し合っています。

小学校中学年の女の子
「Bより、Fが重要ではない?」
(大人-男性)「どうして?」
「Bは重くて移動が大変で、同じことならずっとFを持っていった方がよいと思うから』
(みんな)「ふむふむ」
(大人-女性)「でもねFよりは、やっぱりこっちじゃない、重要なのは」

という様にどんどん真剣な話し合いが進んでいます。

 これは別なチームの様子です。

 元気な男の子が「やっぱりこれでしょう!」とリードし、「でもさぁ」と女の子が対立意見を出しているシーンでした。
 大人も自分の考えを出しながらも、子ども達の勢いに飲まれています。

 どの子も、どの大人も〈やらされ型〉ではなく身を乗り出すかの様な勢いがありました。授業は小学校の時間単位で言えば二時間近くありましたが、わたしが「そろそろ時間が迫ってきたので、目の前の教材を片付けていただいて・・・」と話しても、なかなか終わってくれないほどでした。
 授業をうけた人たちは、こうやって討論・対話をすすめながら〈生命維持〉と〈状況に応じた対処〉という大切な内容を学んでいきました。そして大人も子どもも一様に自分の力を出し切っていました。

〈主体的・対話的で深い学び〉というのは、たとえばそういう授業だと思うのですが、どうでしょうか。

 結局〈たのしさ〉が基本にあってこその主体性なのです。たのしい教育でいう〈たのしさ〉とは〈知的好奇心〉を高揚させるものです。
 自らの知的好奇心が高まる教材があって、周りにも知的好奇心が高まった仲間たちがいると、人間は自然と〈語り合いたくなる〉のです。そうやって、主体的で対話的な授業が生まれるのです。

 〈深い内容〉を成り立たせるものは何か?
 楽しければ深い内容になるのか?
 わたしはそうは考えていません。
 そこでとりあげられているのが枝葉末節な内容、応用が効くようなものではないものは、たとえたのしくても、〈たのしい教育〉の教材とはならないのです。〈たのしければなんでもよい〉というのではないのです。
 そのものの本質に迫るもの、例えば〈かけ算〉なら、単にかけ算のスピードが早くなったという様なことではなく、かけ算のもつ素晴らしさや美しさ、計算処理の画期的スピードアップといった感動を味わえるものを持ってきてこその〈深い学び〉なのです。

 学校の先生たちでも学級レクなどでたのしむことがあるそうなのですけど、〈◯◯◯◯のギャンブラー〉というゲームがあります。たのしい教育研究所では、たとえ〈たのしい〉とはいえ、賭け事・ギャンブルのたのしさを扱うことはありません。子ども達や大人たちがいくらもりあがっても、〈たのしい教育〉で伝える内容ではないと考えています。
 〈深い学び〉は、そういった〈教育内容・教育哲学〉ともつながっています。
 なので〈たのしい教育〉の教材は簡単には出来上がらないのです。今日も朝から遅くまで仲間たちの協力を得て「小さな世界」という授業プランを作成していました。明日もたくさんの仲間たちが集まって、智慧を出し、その予備実験をしてくれることになっています。
 かつてロバート・フックさんやレーウェンフックさんたちが感動した〈小さな世界〉の魅力を子どもたちが目を輝かせて味わってくれる様な教材づくりがどんどん進んでいます。

 その中に出てくる一つの問題です。
 一連の授業の流れの中で、子どもたちは自分の予想が出てきて、どんどん考えをいう様になってくると思っています。

 ライターがつく前に少しだけ光ってとんで見えるのが〈火花〉です。それが物質なのかそうではないのか、という問題です。ちなみにこの問題は科学の根幹に関わる問題の一つでもありました。

 そうやって作っていく教材の中から〈深い学び〉が成りたっていくのです。それは〈たのしい教育・たのしい授業〉を目指して実践してきたたくさんの教育関係者の実験結果であると言ってもよいでしょう。

 さてここからが肝心です。
 これまで書いてきた様に〈新しい学習指導要領〉が推進する内容と〈たのしい教育研究所〉が推進している内容が同じだからということで注目関心が深まるとしたら、それはいわゆる〈ブーム〉としての広がりに終わる危険性をはらんでいます。時期がくれば去ってしまうものとして、たのしい教育を学ぶ人が出てきたとしたら困ったことです。

 学習指導要領の歴史をひもとくと〈問題解決的な授業〉が大切だという時期があったり〈教育の現代化〉が重要だという時期があったり、教育内容に関しても、〈基礎基本の徹底〉という合言葉で進めて来た時期があったりしました。そのいくつかは、ほとんど耳にしなくなっています。
  たのしい教育研究所が提唱する〈たのしい教育〉がいわゆるブームで上がり下がりするものにしていけません。
〈たのしいからこそ賢くなる〉〈たのしいからこそもっと学びたくなる〉〈たのしさこそ未来を開く〉、その言葉は、これからもずっと長く語られ続け、たとえば50年後100年後に、たのしい教育実践がごく普通の授業となった頃、やっと教育の本質となり、表面上ではあえて語られる必要がなくなっていくという形ですすめていきたいというくらいの気持ちです。
 たのしい教育研究所に興味関心を持ってくださる方たちが増えていく中で、たのしい教育が将来的に〈着実に発展〉していくために、この日々の活動を大切にしていこうと思っている今日このごろです。1日1度のこの「いいね」で〈たのしい教育〉を一緒に広げましょう➡︎ いいね=人気ブログ!=ジャンプ先でもサイトをワンクリックすると尚うれし!

 

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