たのしい朗読教育技術 「マル読みパスあり制」

今回は今週のメールマガジンの「おすすめたのしい教育」の章から紹介したいと思います。

メルマガ第188号
文章の抜粋ですから読みづらいかもしれませんが、メルマガそのものは、レイアウトされて、読みやすくなっています。

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教師をしていた頃の話です。

学年がスタートして一ヶ月くらいした頃は家庭訪問の季節に入ります。二週間くらいかけていろいろな家庭を回ったことを覚えています。

わたしはこの家庭訪問が大好きでしたが、その話は置いといて、Aくんの家庭を訪問した時のことです。

Aくんは静かな子で、クラスでもあまり目立つ様に話す子ではありません。そのAくんのお母さんが真剣な顔でこういう話しをしてくれました。

「この子、前の学年の時、本読みでとても恥をかいたらしくて、以来、とても読むことが怖いみたいなんです。前の学年の時には学校を休みたい、と何度も言っていました」
という内容です。

Aくんは、うつむきがちに聞きつつ、私が「そうなの?」と問いかけると静かに、うなづいていました。

信頼してお話をしてくれたことへの感謝や、国語でつらい思いをさせてしまったことへのお詫びを伝えて、「少し時間をもらえませんか」ということで家庭訪問を終えて、いろいろアイディアを出してみました。

「どっちに転んでもシメタを探せ!」で、Aくんをきっかけに、みんなの力が高まる方法はないかと考えてみたのです。
そして、翌日から試みたのがタイトルにある「マル読み・パスあり制」です。

子ども達全員に「本読みの時は、こういう方法でためしてみたいのだけどよいかな?」と語りかけてから、こういう内容の話を続けました。

「本読みが得意な人もいるし、どんどん鍛えたいという人もいると思うけど、そういう得意の人でも、熱があったり、喉が痛かったりというときもあるでしょう。だから、あまり無理しないで力を高めていく、ということを考えてみたいんです」

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先生に当てられて本を読む時は基本的に
①「。」が来たらそこで席の次の人にかわる。つまり先生が「はいここまで」という様に言わなくても、その一文で終わり
② 当てられたり自分の順番が来たら必ず読まなくてはならない、ということではなくていろいろ事情がある時は「パス」って言ってよい。そしたその人をとばして次の席の人が読むの
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はじめは、きょとんとしていた子どもたちも、
「短い時間にたくさんの人たちがどんどん読んでいくことになるから、先生の予想では、きっとクラス全体の〈読み〉の力が伸びていくと思っているのだけど」

 

 これがうまくいくのかどうかは「実験」してみないとわからないので、〈1ヶ月〉くらいしたら、みんなで、このやり方を続けるかどうか決めるというのはどうだろう

ということを説明しました。

「パス」は自分が「これは無理だ」と思ったら、何度言ってもいいし、その理由はみんなも聞かないようにしましょう。
でも、できそうな時は勇気を出して挑戦してもらえたらいいな。

という話も加えました。
そのあと

「そんなやり方は困る、という人がいたら手をあげてもらえますか?」

 

と問いかけました。

手をあげる子もいませんし、みんな
「まあ、先生がいうことだから、まず試してみよう」
というような顔をしています。

そうやって「マル読みパスあり制」がスタートしました。

教科書で少し具体的に説明してみましょう。
単純に「。」がくるところまで、ということで次の人にどんどんつないでいくのです。

「白いぼうし」という文章をみてください。

マル読みパスあり制

私のクジで当たられた子が、まずこう読みます。
単純に「。」がでてくるところまで、というわけです。

声) 白いぼうし あまんきみこ作 村上康成 絵
「これは、レモンのにおいですか

次の子は

声)「いいえ、夏みかんですよ

三番目の子が

声)「信号が赤なので、ブレーキをかけてから、運転手の松井さんは、にこにこして答えました

・・・こうやってどんどんつないでいくのです。

文章によっては

「よし。」

くらいの短い文章で終わる子もいて、みんなが大笑いすることもあります。

クラスの人数が多くても、二、三ページも読むと全員当たっていることになります。

さてAくんです。
それからとても落ち着いたことがはっきりとわかりました。
パスが目立つのかと思っていたのですけど、きっと「〈 。〉がくるところまで」という目標はクリアーできると思ったのでしょう。

Aくんは「パス制」を利用しません。
少しどもり気味に読んでいたAくんの読みの力は、1ヶ月くらいするうちに、そんなに苦手そうには思えなくなってきました。

ぎゃくに体調のすぐれない人たちが、ごくたまにパス制度を使ってくれましたから、本読みの時間に体調が悪い子がわかる、という様な不思議なこともありました。

驚いたのは、予想した以上にクラスの読みの力がとても高まったことです。

「マル読み・パスあり制」が自然になってきた頃、たぶん一ヶ月くらいした頃でしょうか。

「じゃあみんなでこのページを読んでみよう」

とためしてみると、クラスのみんなの声の張りと気持ちの込め方が、それまで受け持ってきたクラスの読み方と、ぜんぜん違っていたのです。

「マル読み・パスあり制」は、Aくんだけでなく、全体的な効果もあったのです。
学校では家庭学習として「本読み三回」を勧めていましたから、長く読むことは各自で続けてくれていたこともあったのでしょう。長い文章もスラスラと読めている様に思えます。

考えてみると、国語の時間の本読みなど、ページなどのまとまりを読んでもらうとすると、10名が読むくらいで授業の半分くらいの時間を使ったりすることもあります。時には「読みだけ」で終わることもあります。それでも全員が当たるというのは難しかったりしました。

ところが「マル読み」はどんどん人がかわって読んでいくので「クラス全員に読む」というチャンスがどんどんやってくるわけです。

ですから舞台度胸的なものがついてきます。
また、いろいろな人の読み方がきっと、いい影響を与えてくれているのでしょう。
安心感もきっと効果をあげたと思います。

時間のゆとりなどがある時に
「では1ページ全部読んでみようね」ということで、くじを引いて読んでもらうこともありました。
読みに自信をもってくれていますから、まず、声の強さが違います。
〈マル読み〉と同じ様な勢いで読んでくれる子が多いのです。

〈マル読みパスあり制〉を導入する前に受け持っていたクラスのことを考えてみると、読みが得意な子はクラスに3、4名くらいだったと思います。多くの子は「みんなの前で読むのは、できれば避けたい」という様子でしたから、その意識的な面からしても、明らかに効果ありだと思います。

以来、わたしはこの方法をずっと続けてきましたから、その効果ははっきり掴んでいるつもりです。
理科の専科を担当することも多かったのですけど「マル読みパスあり制」はそういう時にも効果的でした。

興味のある方は、ぜひ試してみませんか。

追記
「○が来たら、次の人が読む」というルールについては、始めに丁寧に確認しておく必要があります。ここも少し整理してみます。

①誰から読むか、については私はクジを引いていましたが「今日は○日だから○番さんからどうぞ」という様なことでもかまいませんし、クラスのルールでいろいろなパターンがあってよいと思います
②私は「給食のグループで時計廻りに読む」というスタイルでしたが〈前から順に後ろの人に〉という流れもよいと思います
a)グループで読む場合には、はじめの人から読んでグループ全員が読んだら、次のグループのトップの人が読みますから、そのトップの人をはっきりさせておきます。私の場合は先生の机に近い人からというルールでした
b)席の縦の流れで読んでもらう人は、一番後ろの人が読んだら次の列の先頭の人になるので、わかりにくいこともあります。教師が「○○くん」という様に声をかけてあげるといいと思います。
③「マル読み」の進化形で、「マルすらすら読み」というのがあります。「。」のところで次の人に変わるのは同じですけど、「まるで一人の人が読んでいるように途切れないですらすらと読んでいく」ことを目標にする読み方です。「途切れずに1ページ読みつなぐことができた!」という時にみんなで拍手で称えます。
しかしこれは「たまにゲーム的にやる」ということがよいと思います。つっかえた人が大きく恥をかいたりすると、Aくんの様な人が出てくる危険性をはらんでいることを知っていてください。

 

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2016/01/30 たのしい朗読教育技術 「マル読みパスあり制」 はコメントを受け付けていません。 教育技術・教育方法

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