随分以前、板倉聖宣が学生向けの雑誌に科学読み物を連載していたことがあります。メルマガに〈高校生の批判をまじえた質問に対して板倉聖宣が答えた内容〉を紹介したところ、板倉聖宣の答えの明快さに加えて、高校生が寄せた質問が高度なことに驚いた人がすくなくありませんでした。
その高校生の投げかけ議論は〈そもそも動きというのは相対的なものだから、どちらが中心だと考えても同じではないか〉というのです。
実はその考え方は天動説と地動説が競り合っていた時、名のある科学者たちの中でも支持されていたものです。
では、運動は相対的なものだから〈地球が中心で太陽など他の天体が回っている〉と考えるのも〈太陽が中心で地球など他の惑星が回っている〉と考えるのも同じことなのでしょうか?
今回はそのことについて書いてみましょう。
〈天動説〉というのは点が動いているという説、つまり〈地球が宇宙の中心で星達は地球の周りをぐるぐる回っている〉という説です。
朝起きると太陽が海の向こうからのぼってきて、昼頃は真上を通り、夕方は反対側の海の向こうに沈みます。夜空の星たちも時間とともに動いて見えます。もちろん人間には、この地球がすごいている様には感じられませんから、天の星たちが動いているというのが人間の自然な感覚といってよいでしょう。
聖書が天動説の視点で書かれているのもうなづけます。
この図で確認してみてください、天動説では〈地球から金星までの距離〉と〈地球から太陽までの距離〉を比べると必ず〈地球から金星までの距離〉が近いことになります。
地動説は太陽を中心にして地球も金星や火星も、その周りを回っているという説です。
昔から、金星がとても明るくなることは知られていました。暗い時と明るい時とでは、見た目の大きさがかなり違っていることも知られていました。
地動説で考えれば、それはすっきり説明できます。
金星が太陽を回る周期と地球が太陽を回る周期は違うので、ある時期には金星は地球のとても近くにくることがあります。
そしてある時期に地球から見て、太陽よりさらに遠くに位置することもあります。
見た目の大きさも、かなり違ってきます。
地球が中心の天動説では、金星が地球のすぐ近くを回っていたり、ある時には太陽よりずっと遠くを回っていたりすることを説明できません。
つまり、運動は相対的なものだからどっちが中心だと考えても同じである、ということでは説明のつかないことが出てくるのです。
そういう時に、現象をしっかり説明できるものを元に考えを組み立て直していく、そういう積み重ねで科学は発展してきたのです。
いつかこういう見方考え方をベースにして〈たのしい天動説と地動説〉の教育プランを作成しようと思っています。ご期待ください。
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