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授業で勝負|ノミの実験・ゆでガエルの実験(前半)|板倉聖宣から学んだこと

2016年春。連日「授業で勝負」の日々。

研究所に学びに来る若い先生たちに、「仲間と学ぶのもよい」という話題のきっかけに「こういう話を知ってる?」という感じで『ノミ』の話をしました。

ご存知の方もいるかもしれません。
周りの状況から自分で限界を設定してしまうこと、つまり「獲得された無力感」と、それを突破する力についての話です。

わたしの話に感心してくれたたくさんの先生達の中で、ある先生が
「それは誰の実験ですか?」
という質問してくれました。

「そういえば、誰の実験なんだろう? フィクションの可能性はないのかな?」

以前から、それが気になっていたこともあって、わたしがこの『ノミ』の話を出したのは今回がはじめてでした。フィクションなら、訂正が効きやすい上に、このことからも学ぶことができます。

話はかなりさかのぼりますが、板倉聖宣先生が沖縄に来てくれた時のことです。

板倉聖宣板倉先生が沖縄に来る時にはほぼ付ききりでいろいろお話させてもらっていましたから、これまで膨大な量の個人レッスンを受けたことになります。いつかまとめて本にしたいと思っている一つです。

ある時、わたしが喫煙に関する授業プランを作成していた時だったので、それに関して私が気になっていた実験についてした質問に対して
「一回こっきりしか起こらなかった現象に対しては、〈それは間違いかもしれない〉という選択肢も立てて調べた方がよい」という話をしてくれました。

みなさんは「ゆでガエル」の実験をご存知ですか?

インパクトの強い話なので、いろいろなところで紹介されています。読売新聞で紹介されて広まったという話ですけど、わたしはその原点に当たるデータを持っていません。web上で公開されている、某学校の校長先生が二学期に子ども達に向けて出した〈たより〉の中でふれたものがあります、よくまとまっていますから、それを抜粋してみます。

 ここに、ビーカーと三脚、アルコールランプがあります。あと水と生きたカエルが必要ですが、今日は実験ではありませんから、お話だけにします。
このビーカーには水が入っているものと考えてくださいね。
カエルを入れる一つ目の方法です。
あらかじめ水を沸かしてお湯にし、その中に生きたカエルを入れます。すると、その瞬間にカエルは跳び出して逃げます。カエルはお湯の熱さにびっくりするのですね。お湯の入ったビーカーはひっくり返るかもしれません。危険ですからまねをしないでください。
カエルを入れる二つ目の方法です。
生きたカエルを水の入ったビーカーに入れます。カエルは水の中をスイスイ泳いでいます。そこへ、下からアルコールランプの炎でゆっくり熱すると、カエルはどうすると思いますか?
水の温度はじわじわと上がります。でも、カエルは跳び出さないのです。水の温度の上がり方は、とてもゆっくりです。そして、何ということでしょう。ついにカエルはゆで上がってしまうのです。
これは「ゆでガエル」という実験にもとづいたお話です。
ゆっくりした変化にはなかなか気づきにくい。しかし、そのままにしていると、最後には命を落としてしまう場合もあるという教訓です。
私たちの暮らしの中で、このようなことはないかと振り返ることが大事です。急激な変化には誰でもが気づきますが、ゆっくりした変化には気づかず、無頓着に過ごしていることがありそうですね。伸びるためには十分気をつけなければなりません。
ほら、お家でのその姿、「ゆでガエル」になってませんか?

<校長 ○○>

 

板倉先生の話で調べたのが、このことでした。

ゆでガエルの実物は一度も見たことがありません。
残酷とはいえ、簡単にできる実験が、どうして話だけ伝わっているのだろう?

本当かもしれないし、板倉先生がいうように間違いかもしれません。
そうやって調べてはじめて、その話はかなり怪しいということがわかりました。どこにも、その実験の根拠が示されていないことが、そもそも怪しいのです。

 ウィキペディアにこうあります。https://ja.wikipedia.org

 2002年、ドイツの科学ジャーナリスト (enクリストフ・ドレッサー (de:Christoph Drösserは、ドイツ国内でコンサルタント活動家が盛んに使用する茹でガエルの話を疑わしいと感じながらも、証明するためにカエルを茹でたくはなかった。
困ったドレッサーがアメリカの爬虫両生類学者に質問したことを発端として話が学者仲間に伝わり、ホイット・ギボンズ (enから話を聞いたオクラホマ大学教授の爬虫両生類学者ハッチソンは「その伝説は全てが間違っている。動物学臨界最高温度 (Critical thermal maximum調査で、多くの種類のカエルは調べられており、手順として1分間に水の温度を華氏2度ずつ上げるが、温度があがるごとにカエルはますます活発になって温度の上がった水から逃れようとしたことから、蓋が空いていたり器が小さければ逃げる」と回答した[2]

 

以前「水は言葉を知っている」という話をめぐって、学校の先生たちがそれを授業にかけ始めたことがありました。道徳や理科の授業で取り上げ始めたのです。いよいよわたしの知っている先生たちもそういう授業をする人が出てきたので、「科学的とはどういうことか」という50ページくらいの冊子を書いたことがあります。興味のある方はお届けします(送料込み650円)⇨こちら

このゆでガエルも、それに類する話なのです。そして教育をめぐっては、こういう一見感動的な作り話がたくさんあります。

さて、最初に書いたノミの話はどうなのでしょう?

みなさんは本当のことだと思いますか? それとも、ゆでガエルと同じで、つくり話なのでしょうか?

予想を立てていると確実に賢くなることができますよ。

つづく

沖縄から全国に「たのしい教育」を発信するたのしい教育研究所。
授業の腕はいっきゅう品。とどけているのは「笑顔」と「元気」と「力」です!

2016年5月6日 授業で勝負|ノミの実験・ゆでガエルの実験(前半)|板倉聖宣から学んだこと はコメントを受け付けていません たのしい教育の哲学 発想法