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菜の花をたのしむ/島村暮鳥のユーモア

道端に菜の花が咲いていました、気持ちがあたたかくなります。

 

〈菜の花〉いっぱいの詩があります、山村暮鳥(ぼちょう)という詩人・児童文学者が作った作品です。

 はじめてこの詩の全体の形を見て〈絵の様な詩〉だなと感じたことを覚えています。
 声に出して読むと、本当に菜の花畑にいる様な気持ちになります、やってみてください。

 学生の頃この詩の鑑賞で〈副題〉のことや、最後の連の〈やめるはひるのつき〉が〈病めるは昼の月〉だということ、そしてそれが持つ意味などをつらつら語られて、詩の鑑賞というのが、その詩の魅力をごっそり削いでしまうことになるのだなと思いました。
 うっかりすると学校での授業も、そうなるかもしれません。

 そういうことよりも、この詩を構成するそれぞれの行が〈スクッと立つ菜の花〉の様に高さを揃えている美しさや、折り重なる様に咲く菜の花たちの様に〈なの花という言葉〉を重ねている美しさが何千倍も何万倍も大事だと思います。

 何十回も読んで、その中を構成している言葉が気になった時に解説するのも良いし、「そうだね、先生もよくわからないから調べてみようね」でもよいと思います。
 それを二、三回読んだだけで「〈病めるは昼の月〉っていうのは暮鳥の闇の部分を・・・」という話にもっていく、テストに出るからね的な授業は、詩に対する冒涜でさえあると思えてなりません。

 異なる言葉に注目するならまず「それぞれの連に一行ずつ異なるフレーズを織り込みながら、リズムは決して崩れないという妙」を讃えたい。

 中にはこの詩の副題を消し、最後の連を消して、ついでに一連だけにして紹介していることがあって驚きます。勝手にそういうことをするなら〈風景〉というタイトルも変えなくてはいけません、もうその詩ではないのですから。

 私は〈病めるは昼の月〉を暮鳥のネガティプな部分とは受け取っていません。
「これだけの見事な菜の花の周りにいるから、空に見えている昼の月さえ顔色を失ってしまったるんだろうね」という暮鳥のジョークとして読み取っています。
 こういう解釈は誰もしていないと思いますけど、けっこう真実に近いのだろうと思っているんですよ。
 副題の〈銀座モザイク〉も私なりの解釈があります、でもつらつら書くより、そのまま音としてたのしんでおくのもよいものです。優れた詩というのはまるで宝石の様です。

 いつかRIDEでたのしく深く味わう詩の授業をしてみたいものです。

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