学力とは、重要な知識・技能 × 意欲 の続きになります。
もう20年くらい前になりますが、NHKの朝の番組「おはようニッポン1997年4月8日」に板倉聖宣(現在 日本科学史学会 会長/元国立教育政策研究所室長)が出演して、こういう話をしていました。
科学が好きになる、そして科学の原理がわかる、その具体的な例としてお読みいただければと思っています。
※意味を変えないように最小限手を入れました(分責 喜友名)
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もんだい
磁石のあなに通す棒を板の上 にとりつけて、たおれないようにしたものを作ります。
そしてこれにはじめ、磁石を2枚同じ向きにかさねて、くっつきあわせておき、秤の上にのせて重さを計ります。(この時、重さは g です)
そこで次に、上の磁石を裏返して右の図のようにして、はかりの上に のせて重さをはかるのです。
このとき、はかりの重さはどこをさすでしょうか?
つまり、はかりの上にのっていないで中に浮かんでいる磁石の重さは下の秤にかかるかどうかというわけです。(磁石1コの重さは約 gです)
予想
ア 前と同じ( g)
イ 前より浮いている磁石の重さだけ軽くなる( g)
ウ 浮いている磁石1コ分ほどは軽くならないが、前よりは軽くなる
エ そのほかの考え
どうしてそう思いますか?
みんなの考えを出し合いましょう。
板倉
どうでしょうか, 予想してみて下さい。
アナウンサー
同じだと思いますけど… 迷います 。
板倉
迷いますね 。頭のいい人はみんな迷うんですね (笑)
じゃ答えはどうでしょうね?
実験してみましょう。
※読者のみなさんも予想してみてください Kiyuna
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実験する
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秤の目盛りは同じ
板倉
どうでしょうか?
アナウンサー:変わりません。
板倉:
そうですね、変わりませんね。
同じですね。
こういう問題を出して予想を出してもらって,そして話し合う授業なんですね。そのときに今は時間的に忙しかったので理由をいってもらいません でしたけど,理由をいろいろ考えて討論します。すると,ああ間違った! あたった!とかなるでしょ。
アナウンサー:
私は浮くからその分軽くなるかなと思ったんですが,逆に磁力があるからその分重くなるかなと思ったりして…説明してもらって答えを出すんですね 。
なんか謎解きみたいな気がします。
板倉:
子ともたちは哲学者ですから、謎解きが好きなんです。
だからのってきます。
アナウンサー:
でもこういう授業だとなかなか予習ができない
板倉:
教科書がないからね。
それに予習されちゃこの授業はぶちこわしでしょ
アナウンサー:
逆にねえ
板倉:
だって予習するとあっちゃうんですから。
予習すると優等生だけが勉強してきて,いいかっこして,予習しなかった劣等生はいつもみじめなことに なってしまいます。
しかも優等生だって自分で考えないでしょ。
だから予習はさせないんです 。
アナウンサー:
予習をさせてはいけないなんて考えられないです!これは意外な話ですね。
板倉:
今だったら塾の先生に聞いちゃうから塾の先生が“思師”ということになっちゃって,学校の先生は何だったんだと…試験官だと。
アナウンサー:
確かに興味をもってやるかも知れないけれど,時間がかかっちゃって授業が遅れちゃうでしょう?
板倉.
うん,そりゃ時間はかかります。
普通はさっと実験をして見せて,理屈を言いませんから。
優等生は先生に「なぜか教えてくれ」と言います。
へたすると、教えたって自分で納得できないかも知れない , そしたら押しつけになっちゃいます。
でもこのような問題をつぎつぎと重ねて出していくと誰でも納得できるようになる。
アナウンサー:
原理を理解できるということですね
板倉:
そうです。
原理を自分で発見するんですね。
先生が教えてくれた原理を覚えるんじゃなくて、自分で納得できる。
アナウンサー:
遅れは気になりませんか?
板倉:
全体的に理解が深くなるでしょ。
しかも勉強が好きになっちゃうんです。
自分で予想を立てて,だんだんあたるようになると,なんか自分が頭がよくなったような気がするなあって 。
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沖縄の学力向上、たのしい先生の養成、実践型カウンセリングに全力投球中の「たのしい教育研究所」です。