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たのしい教育の発想法/板倉聖宣「オイル(油)の語源はオリーブ」という話

 たのしい教育メールマガジンを配信するとすぐにいろいろな反響が届きます。その反響を元にして、その一部を公式サイトでも紹介することがあります。するとまた反響が届くという様に、うれしい連鎖が続きます。

 今回は最新メルマガの〈発想法の章〉に書いた「オイルの語源はオリーブ」という話を少し紹介しましょう。私がたくさん学ばせてもらった、そして今でもその講演資料などを中心にたくさん学ばせて頂いている板倉聖宣の語った内容からです。

 古代ギリシャの歴史を詳しく調べると、たいがいの本には「古代ギリシャの特産物は何か?」というのが書いてあります。
 たくさん外国に輸出したものはブドウ酒とオリーブと焼物です。でも、焼物とかブドウ酒では世界大国にはならないですね。
 問題なのはオリーブなのです。

 私は若い時から「ギリシャの特産物はオリーブだ」ということは知っていたのですが、オリーブがあると世界大国になるのでしょうか?
 青森県はリンゴ県ですし、和歌山県なんかはミカン県です。
 リンゴやミカンをたくさん輸出すると世界の大国になれるのか?
 まさか。
 ミカンやリンゴではダメですね。

 「じゃあ、オリーブもダメじゃあないかなあ?」と思っていたのです。

 

 今でもギリシャの一番重要な輸出物はオリーブです。
 オリーブは食用にビン詰で売っていたりして高いのですが、まずくはないけどもおいしくもない。
 実を食べることより〈オリーブ油〉が重要なのです。

 英語でオイルというのは、もともとはオリーブと同意語なのです(ハァー!)。
 古代ギリシャ時代にオリーブという特殊な油があったのではなくて、油といえばオリーブ油に決まっていて、他の油はほんの少ししかなかったのです。
 だから油といえばオリーブなのです。

 今でもギリシャはオリーブが特産物です。
 一番たくさん作っているのはスペインで、二番目がイタリアです。
 だからイタリア料理にはオリーブをたくさん使っています。第三番目がギリシャです。
 しかし人口一人当たりだとダントツに多いのはギリシャです。
 ギリシャはで今でもオリーブ大国なのです。
 たくさん作りながらも輸出できないぐらいすごく使っているのです。

 

 ところで「オリーブ油は何に使うのだろう?」ということが気になります。
 今オリーブ油はほとんど食用ですね。でも本来のオリーブ油は灯火、明かりに使ったのです。

 考えてみてください、たき火なんかすれば少しは明るいのだけど、うんと明るくはない。
 ローソクがあれば明るくはなるけど、ローソクよりもオリーブ油の方が安いし長く燃やせるのです。
 ですからオリーブ油があるということで、始めて人類の社会が明るくなったのです。
 〈暗い〉と〈明るい〉とでは〈明るい〉方が文化的でしょう。
 オリーブ油を使うようになってから明るい時代が始まったのです。
 ギリシャは不毛の地ですから、その明かりに使うオリーブ油をたくさん輸出して、不足している穀物を輸入したのです。

続く

 科学史の研究者であった板倉聖宣は〈本当に学ぶ価値のあるものは何か? それを研究して子ども達に提供する〉という仕事をしていました。
 このオリーブの研究もその一つです。

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