書簡:琉太郎「理想を掲げて妥協する」とは−『新哲学入門』より−

いっきゅうさん

琉球新報での記事を読みました。
ガリレオの生き方を通して、沖縄の未来を語る内容に強く納得している自分がいました。
できるだけ多くの沖縄の人に読んでもらえたらな、と思いました。
いっきゅうさんの書簡で紹介している板倉さんの
「理想を掲げて妥協する」も、私も学んでいます。

私はこれまで、板倉さんに学んで、数々妥協してきたような気がします。
でも、沖縄に仮説実験授業を実践する先生を増やしたい、
という大切な夢は継続中です。
これまで行動してきことを簡単に紹介しますね。

〇サークル活動をおこなう
〇仮説実験授業に関する講座をおこない、理解者を広げる
〇職場においては、一番の基本は、授業ができるということ
それを最優先にする。そのために妥協できることはする
〇人間関係でぶつからない
〇学び続ける
でしょうか

「理想を掲げて妥協する」と言う言葉は、とても実用的な言葉だと思います。
教育や政治経済、生き方にまで応用が利くと思いますので、
板倉聖宣さんの文章を読者の皆さんプレゼントしたいと思います。

「理想を掲げて妥協する」といのは「妥協せざるを得ない事情が
支配するところで妥協する」ということであって、「理想を捨てる、
忘れる」ということではありません。

自分の理想にばかりにこだわっていると摩擦が
大きくなりすぎるときは妥協し、
「妥協しなくてすむような条件下では、日頃の自分の考え、
理想をどしどし実現する」ということなのです。

多くの人々はそういう考え方ができないように思われてなりません。
では、どうして多くの人々は、「スキあらば理想を実現する」
というしぶとい生き方ができないのでしょうか。

それはどうも、多くの人々は妥協することが大嫌いでありすぎる
からのようです。
つまり、「どうしても妥協せざるを得ない状況下に置かれると、
妥協を嫌うあまり、それあまでの自分の理想を下ろしてしまう」
ということになるのでしょう。

妥協というのは理想を掲げるからこそ問題になることで、
理想を捨てれば「一切の妥協を排除する」ことも可能になるわけです。
したがって、理想を心にいだいた以上、
その実現までは妥協を重ねるのが当然です。

妥協をそんなに嫌うより、むしろ「いつも自分の理想が実現するときをうかがい、
スキあらばそれを実現していく」という覚悟が大切だと思うのです。
私のいう「理想を掲げて妥協する」という言葉、生き方の真意は、
そういうところにあるわけです。

私はこれまで、多くの人々にこの言葉を伝えて、
多くの若者たちが妥協を毛嫌いすることなしに理想を
持ち続けて生きることができるようになったことをよろこんでいます
板倉聖宣著『新哲学入門』(仮説社)

 (琉太郎:記)
新哲学入門―楽しく生きるための考え方 (ものの見方考え方シリーズ 1)

たのしい教育とは-書簡 琉太郎様「エリート効果の危うさについて」

りゅうたろうさんがこのサイトに書いてくださった内容を丁寧に読ませていただきました。
板倉聖宣の発想法と哲学を追いかけている私にとって刺激ある文章でした。

ところで私は、りゅうたろうさんが今回取り上げた「エリート効果」の危うさを感じている一人です。
「エリート効果」という確かにあるのでしょう。
「あの山に一番先に上りたい」という様な先駆者意識というものを大事にしている人達はたくさんいると思います。
けれど、たのしい教育活動の広がりは、そういうモノを拠り所にしてはいけないのではないか、そういう事を考えているのです。

その事を話したくて書簡として書かせていただく事にしました。

たのしい教育活動の始まりが例えば、周りの人達がやっていなかった事による「エリート効果」であったにせよ、たまたま知人がやっていて、その付き合いとして始まったにせよ、それはどういうきっかけもありだと思うのです。きっかけはいろいろあってよい。
ちなみに私は「たまたま」の組みです。

ある人が「たのしい教育活動」を続けていこうと決断する時、周りがやっていないという事による「エリート効果」で広がっていくのではなく、たのしい教育を試した事による、実験結果としての「子ども達の笑顔」であったり「自分のわくわく感」であったり、「保護者の方達からよせられるファンレター」であったり、そういう「自分の本質的な喜び」として継続していくことを目指したい。

もしかすると、あの文章の続きで、板倉聖宣はそういう趣旨の事を語っていたのではないだろうか?
語っていなかったにしても、「語りたかった」のではないだろうか、そんな事を考えています。

エリート効果というのは「周りの人達から一目置かれる」という、周りの評価を気にした行動です。
そしてりゅうたろうさんが引用していた様に、それが広まると必然的に意欲が低くなってしまうものです。

私たちが大切にしている「たのしい教育活動」が広がっていく時に、そういうものを拠り所にしていてはあぶないのではないか。
そういうものではなくて、
「これをやると自分がたのしくてたまらないんだよね〜」
という様な、個人として湧き出て来るものを大切にしていく、という事が私の活動の指針です。

さっきは、板倉聖宣はそういう事を語りたかったのではないか、と書きましたが、実はりゅうたろうさんも、そういう事を考えていたのではないか、そう予想しているところです。
いっきゅう筆
たのしい授業の思想

私が影響を受けた板倉先生の文章「学習意欲は先駆者意識、エリート意識により大きく左右される」

私が影響を受けた板倉さんの文章を紹介します。

もともと学習意欲というものは先駆者意識、エリート意識によって大きく左右されざるを得ないのです。ですから、「学習意欲というものは、その事柄についての教育が普及し、学習の物質的条件がととのえばととのうほど(必然的に)低下する」という法則性によって支配されているのです。(私はこの法則を「学習意欲に関する法則」「先駆者効果」「エリート効果」などと名づけています。
この法則は大学の教育学などの時間に講義すべきことでしょう)そのことを忘れて、ただやたらに昔のエリート教育の内容を大衆化しようとしても、それは学習意欲をおとろえさせ、授業を無気力なものにさせ、ついには生徒の犯行をよびおこすものにもなってしまうのです。
「たのしい授業の思想」20ぺ『たのしい授業の思想』所収(仮説社)

 

板倉さんは、「学習意欲は教育が普及すればするほど低下する」といいますが、
これまでそういうことを聞いたことがありませんでした。
大学の教育学でもこういう事は言ってくれませんでした。
(いつも講義のときには、居眠りをしていたので自信がありませんが・・)

「もともと学習意欲というものは先駆者意識、エリート意識によって
大きく左右される」とありますが、戦前や戦後、
進学率が低かった頃、子どもたちは、
勉強して高校大学と進学するにつれ両親の学歴よりも高くなっていきますね。

そういうところでエリート意識がでて子どもたちの学習意欲が高まったのでしょうか。
少し先駆者意識ということについて考えてみたいと思います。

私が仮説実験授業に巡り会った頃、まわりでこの授業を実践している人は、
ほとんどいませんでした。

ですから授業について質問もできないので、何度も本を読んで、
なるべく忠実に仮説実験授業の運営方法に従って
仮説実験授業を実践したところ、
子どもたちの評価は、たのしくて、わかる、
というものがほとんどでした。

初任者の私にも科学の授業がたのしく実践できたのです。
一人一人の感想を読んでいると、この授業をやってよかったと
評価できるものでした。

何よりも一つの授業書を終わることで私自身が学ぶことが多くて、
授業をするのがたのしみになっていたのですね。

そうなると誰かとこの授業について語り合いたくなります。
他の人にも良い実践はすすめたくなりますからね。
必然的に仲間を求めてサークルを作ることになりました。

先駆者意識というものが強く働いていたんだなー、
と今になって分析しているところです。
もし、周りが、みんな仮説実験授業を実施していたら、
サークル活動もすることはなかったでしょう。
その後の人生も又、大きく変わったものになっていたと思います。
(琉太郎:記)
たのしい授業の思想

[問題]様々な危機によって地球はどうなっているの?

カウンセラー協会の実践講座の骨子ができたので、今度は沖縄県の事業で、アジア各国から沖縄に集まってくる高校生向けの授業の準備を本格的にはじめています…英語なので普通の授業より時間がかかります。
カレンダーをよく見ると、カウンセラー協会での講座より、こっちの方が早かったな
(・_・;

今回いただいたテーマは「エネルギー問題」

授業づくりを始めると、どんどん大風呂敷になっていき、人類を取り巻く問題全体について触れる予定で構成し始めています。

その中でとりあげる予定の問題を一つ、みなさんも考えてみませんか。
事前に問題を出すというのは今までやったことがありませんが、いろいろな国から集ってくる高校生達が、このサイトを見て予習するという事はないだろうと思うので、忙しくなる前に載せておくことにします。

問題:地球を取り巻く問題はたくさんあります。「病気」「飢餓」「環境の悪化」…特に小さな子ども程その影響がすぐに出ます。
では二十年前と比べて、世界の乳幼児死亡率はどのように変化してきたでしょうか?

予想 ( )内も選んでください
ア(少し・とても)良くなってきた
イ(やや・とても)悪くなってきた
ウ ほぼ横ばい

どうしてそう予想しましたか?

 

おはなし
地球上ではいろいろな危機が叫ばれ、その中には、明らかに危機を煽っているようなものもあります…「マヤ文明のカレンダーによると2010年に地球は滅亡する」「ノストラダムスによって滅亡が予言されている」という話もありました。

しかし実際、食料危機、エネルギー危機、環境破壊、大津波、大地震、地球温暖化、ウィルスの感染など、現実問題として地球上では、様々な危機が叫ばれています。
ところで、いろいろな危機に最も早くそして強く影響が出るのが乳幼児だと言ってよいでしょう。
食べものが不足して真っ先に命を落としたり、抵抗力や衛生の問題からも感染症にも弱く、命を落とす事も多いからです。

最近、国連の機関であるユニセフがあるレポートを出しました…
Committing to Child Survival −子ども達の生存に関わる報告書−です。
webで閲覧できます。http://www.unicef.org/media/files/UNICEF_2013_A_Promise_Renewed_Second_Progress_Report_Full_Report.pdf

スクリーンショット 2014-08-03 10.44.55そこには乳幼児(5才未満)の死亡率がグラフで描かれています(11p)。

それを元に、世界各地の乳幼児の死亡率を見て行きましょう。
どう変化してきたのでしょう…皆さんの予想は正しかったでしょうか?

世界 乳幼児死亡率の推移1990-2012サハラ砂漠より南に位置するアフリカで45%減少
アフリカ中西部で39%減少
アフリカ東南部で53%減少
南アジアで54%減少

世界各国の乳幼児死亡率は全体として47%も減少しています。

いろいろな危機が叫ばれ、実際に悲しいことも起こっています。
しかし、もっとも影響を受けるだろうと思われる乳幼児の死亡率の減少にハッキリと表れているように、いろいろな危機に対して、人類は無力ではありません。
いろいろな知恵と力で、その危機に立ち向かっていると言っていいと思うのですが、どうでしょうか。

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