たのしい教育の向こう側② 集団の力学

 前回の続きになっています。未読の方は一つ戻って読み始めてください。学ぶ笑顔と賢さを元に教育を組み立てていくのが〈たのしい教育〉です、そしてそれは着実に支持を広げています。
 そうやって増えてきた、たのしい教育派の教師たちと集団の力学について書いてみたいと思います。

 今現在も活きる見方・考え方になると思います。

 

 「あの先生、自分に自信があるのだと思うけど、周りの人の意見を聞かなくて・・・」
 若い時代、とくに男性教師なら一定割合で、そのワナに陥ったことがあるのではないでしょうか、猪突猛進、若気の至りというやつです。
 人生で一度もそういうことをしたことはありません、という人がいたら逆に心配です。何かを突破しようとする時、猪突猛進した経験と、それによって失敗した経験が大きな糧になるはずだからです。
 たのしい教育は実験的にうまくいくことが分かっていても、強制できるものではありません。
 それに意義とたのしさを感じた教育者たちがはじめるものが、たのしい教育です。

 当然のこととして、実験結果を待たずに、これが正しいと考えてしまうことは気をつけなくてはいけません。
 そう考えない周りの人たちとの溝も広がっていきます。
 クラスの子ども達とも溝がでてきます。
 たのしい教育は〈強制・押付け〉の対極にある教育です。
 では自分が「これが正しい」と思っている時、周りの人たちのほとんどはそうは考えない、という時どうするか?
 苦しいかもしれませんけど〈引く勇気〉が大切です。
 ただし、単に引くのではありません。
 わたしの新作「ストローより愛をこめて-素粒子論入門-」に「ストローに静電気を起こして近づけると、石のかけらである〈砂〉がつくか」という問題があります。
 周りのみんなは〈つかない〉と予想している、自分は〈つく〉と予想した。
 本気でそう考えると、言い合いになったり怒ったりする子ども達もいます。それくらのめり込むのは、ある意味ステキなことです。
 しかし次第に、そういうことは無くなります。
 実験が決着をつけるわけですから、予想の段階で「ぜったいこうだ」とは考えなくなるのでしょう。
 周りの人たちと違う自分の予想のわけを丁寧に語り、実験結果を待つのです。

 仲間と意見が違う時も、授業で意見が異なる時のスタイルでいきたい。
 たのしい教育派の教師は、そうありたい。

 喧嘩の様にして「自分が正しい」という主張を強く通さない。〈自分の予想〉を明らかにして、引く。
 そして実験の結果を待つのです。
 別な言葉で言えば「旗幟鮮明にしてから引く」ということです。それは自らを失わずに和をもって貴しとなすことです。



 シンプルな例で考えてみましょう。

 「運動会のPTAの出し物をどうするか」というテーマで、綱引きを入れるのかPTAリレーを入れるのか、という類の議論は学校の職員会議でよく起こります。
 綱引きもたのしそう、PTAリレーはマンネリとはいえ盛り上がる、となった時、みんなで予想を立ててまず多数の発想で実験してみるわけです。
 例えば〈PTAリレー〉が多数になったら、それを実施してみる。
 その結果を元に、来年も続けるのか話し合う。
 もちろん〈綱引き〉という選択肢になることも、別なものなることも、それから「こども達主体の種目だけ」にしてPTAの出し物はなしという選択肢もあるわけです。
 何にしても、何が正しいのか分からない時には、予想を立てて確かめる方法しかないのです。
 自分はAがうまくいくと思うけれど、周りのほとんどの人たちはBだという。
 そういう時に〈ごり押し〉はよい結果になるとは思えません。

「自分はAがうまくいくと思うのですけど、ほとんどの人がBだということですから、意見は引かせていただいて、実施して後、その結果を元に次年度はどうするか検討していただけたら嬉しいです」
 そう語る教師でありたい。
 わたしはこう思うんですけど圧倒的少数ですね・・・
 ただ、実施してあとに、もう一度検討してもらえたら嬉しい、というスタイルです。
 学校では深刻なテーマの議論も起こります。
 わたし自信の例を書きましょう。
 個人的なものが特定できると困りますから、少し脚色して書きます。
 ある年、職員会議で安全部の提案として
「ガジュマルの木から落ちて複雑骨折した子が出たので木登りを禁止にしよう」
と議論になったことがありました。
 養護の先生がいなかったので、折れたところを固定して、救急車が来るまで、痛みに苦しむときには落ち着いてもらえる様に声をかけ、気を失いかける時には身体をさすりながら励ましてという様に、ずっとそばについていたので、その子の痛みも苦しみも強く感じていました。
 しかし「木登りそのものを禁止する」ということには賛成できませんでした。ほとんどの人たちは「禁止しよう」という考えです。
 〈1:全員〉くらいの勢いだったと思います。
 ここで強く出てもあまりうまくいかないことは経験上も知っていますし、授業の中で違う選択肢を選んだ時とも同じです。
わたしは
「〈近頃の子ども達は木登りもできない〉と語っている私たち大人が、実は〈子どもが木登りできない状況〉を作ってしまっていると思うんですよ。せめて学校は、安全な登り方を教えてたのしんでもらえる場所でありたいです」
と語り、周りの人たちの様子をうかがいました。
 判断保留の人たちもいたと思います。禁止派の人たちの気持ちも少し動いた気がしましたが、ごり押しはしません、危険だと考える母親的な感覚は十分理解できることだからです。

 その上で「禁止するというのはいつまでのことですか?」と問いかけると、安全部の先生たちも
「そういえば、いつまで禁止するんだろう」と考えはじめました。
「この学期が終わる時に、やはり禁止を続けよう、とかゆっくり解禁しようという様に話し合うのはどうでしょうか」と提案すると、その案が通りました。

 学期が変わる頃の話し合いでは、木登り場所に近い低学年の先生たちから「子ども達があまり外に出なくなって、狭い場所で多くの子ども達があそぶのでケガも起こりやすくなった」という意見も出て、また木登りできる様になりました。




 「予想を明らかにしてから、いったん意見を引く。その実験後に、どちらがより良いのかを検討する機会をもつ」
 集団がゆっくり良くなる豊かになるのは〈強い力で押し付ける〉ことで成しうるものではありません。

 たのしい教育派の教師がどんどん増えていってからではなく、今の少数派の時にこそ、必要な発想法だという気がしています。
 そして〈たのしい教育派〉の教師が増えてきたら、ますますそういう発想を明確にして組織を運営していく必要があると思います。

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たのしい教育派の先生たちが増えていく、その向こう側 ①/周りの先生たちとの意見の対立をどうするか

 このサイトを熱心に読んでくださっている皆さんやメルマガを購読してくださっている皆さんはRIDE( ライド:たのしい教育研究所 )の活動の着実な広がりをご存知のことと思います。
 お陰様で自主講座も外部から要請される講座も、合格特訓も、市町村との連携による授業も順調にすすんでいます。

 その流れの中で〈たのしい教育派〉の教師は確実に増えて来たと思います。
 しかし全体としてみれば〈子どもの興味関心〉を中心に実際に授業を構成していく教師より、基本的に何年も変わらないカリキュラムの中で授業を続ける教師が圧倒的多数派でしょう。もちろん工夫は加わっていると思いますが、本質のところでは〈とにかくこのことを分かってもらう型〉〈このことをやらせる型〉の教育です。〈これをしてこれをやらせる〉〈得点をあげるためにこういう工夫をする〉というような教育、それはその先生が子どもの頃受けた教育スタイルを維持したままの教育です。

 そういう教育スタイルの具体的な変革が「たのしい教育」です。
 わかる、できる、やらせるを優先して組み立てるのではなく〈学ぶたのしさ〉を優先するのがたのしい教育です。
〈たのしくないのに納得させられてしまう〉というのは、たのしい教育・楽しい教育の対極で、そうやって身についたものは、生きて働く力になるとは思えませんし、人間の生活をより豊かにし、周りの人たちの笑顔につながるものになるとは思えません。

 子ども達の学ぶ笑顔を骨格にするたのしい教育をすすめていく力のある教師はまだまだ少ないのですけど、だからこそ〈RIDE〉の活動はたのしくやりがいに満ちていると言えるでしょう。
 拠点の沖縄は島ですから、よその県より活動の実験結果が着実に出て行くことでしょう。

 そうやって次第にたのしい教育派の教師が増えていき、一つの学校に複数の教師が存在する状況になる。
 それがさらに増えて過半数がたのしい教育派の教師で占められる様になる。

 まだまだ先のことですけど、そのことを想定するのも大切なことです。

 たのしい教育派の教師が増えると、クラスの中の子ども達はどんどん学ぶ意欲を高めます。
 ところが教師集団の集合体としての学校の運営は別な力学が働きます。

 教師集団がうまくいくことと、クラスの子ども達が授業が好きになることとは違うところがあるのです。
 そのことはたのしい教育派の教師が増えていく中で、強く意識しておく必要があると考えています。

 これは〈たのしい教育〉だからというわけではなく、自分の授業に自信をもった人間が陥るワナです。
 子ども達との関係が良くなり、教師としての自信も豊かさも高まってくる。そんな中で、まわりの教師との関係を配慮できなくなってしまうと困ったことになります。
 私の処に相談に来る中からいえば、管理職あるいは管理職を目指しているの人たちの中に〈力で強制するタイプ〉が多く、その周りでイヤな思いをしたり、苦しんだり、中にはウツになったりする人たちがいて、それをテーマに書いていくこともできますけど、今回はそういう話ではありません。

 周りの先生たちと意見が対立する時、たのしい教育派の先生たちは、力で強制するタイプにはならないでしょう。〈笑顔と賢さ〉そして〈和を以って貴しとなす〉が基礎にあるたのしい教育派の教師はどうしたらよいのか、という話です。

つづく

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料理も予想チャレンジ

 前回の〈ベジタリアンは太る〉の反響がいくつも届いています。太る原因は「炭水化物」であるという話は一般常識になっていますけど、炭水化物が多いのは肉ではなく圧倒的に野菜類です。
 そういう話はまたいずれ書かせていただくとして、今回の話もア~ルの野菜食から始まります。

 ア~ルは毎日〈ヨーグルトキャベツ〉や〈肉キャベツ〉を食べるので研究所にキャベツは欠かせません。

 野菜そのものが大好きなので、置いてあるとそのままかじってしまうほどです。

 忙しいある日、ア~ルのキャベツをゆずってもらって、仕事の合間にメンバーで〈お好み焼き〉を作ることにしました。

 見よう見まねで生地にまぜて焼いてみると・・・


 けっこう美味しく出来上がりました。

 さて話はここからです。

  以前から〈イカスミお好み焼き〉はきっと美味しいに違いない、レストランで出すとインパクトがあってヒットするだろうと考えていて、この機会に作ってみることにしました。
 いいアイディアだと思うのですけど、どうですか?

 普通のお好み焼きを焼いて最後に残った生地にスーパーで仕入れた〈イカスミ〉を入れて作るわけです。
 これがイカスミを入れた生地&キャベツ、なかなかの迫力です。
 美味しい様には見えません。


 プレートに乗せて焼いてみましょう。
 ここで大切なことに気がつきました、しっかり焼け焦げがついているのか、この色では判断できないのです。

 まあ、何となくの感覚でひっくり返してみました。


 これは見た目の感じではヒットしそうにないな。

 けれどまだあきらめるのは早い、とても美味しいかもしれません・・・食べてみましょう。

 食べてみると、まったくイカスミの味わいは感じられず、普通のお好み焼きの味。
 目を閉じて食べたらイカスミを入れたとは気づかないでしょう。

 「美味しいに違いない」という私の予想は外れてしまいました。
 ちなみに、研究所のスタッフみんなも同意見でした。

 予想は外れることもたくさんあります。
 しかし外れても一つ階段を上がったことは間違いありません、何しろ予想チャレンジは暮らしを豊かにたのしく賢くするキーです。

 また新しいアイディアを思いついたらためしてみたいと思います。

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教員採用試験合格特訓の様子/地球の公転と季節の変化

 週一回、教員試験合格を目指す先生たちに特訓の時間をとっています。私いっきゅうが準備に最も時間を割いているのがこの特訓です。
 学校の教師を早めに辞めた私にとって、集まってくる先生たちは教え子と同じとても可愛い存在、この7月の試験で全員合格してもらいたいと本気で考えています。
 
 これは地球の公転と気温・季節の変化について地球儀で説明しているところ。

 特訓では教員試験に実際に出題された問題をとりあげていくのですけど、解き方の効率やノウハウ重視ではなく、自分の腑に落ちる様な解き方をすることが結果的に合格につながります。そしてそのことが、教師になって子ども達に授業をする時の宝物になります。

 地球は太陽の周りを23.4度の傾きを保ちながら回っています。
 この角度が季節の変化を生み出しています。
 私いっきゅうはたのしい教育のエキスパートです。たのしい教育は面白おかしい教育ではありません。それを学んでたのしいという感覚、そして自分の思考の中にパチンとはまる感覚、そういったものを追求しているのがたのしい教育ですから、受験問題に関しても、似た様なアプローチですすめることが可能です。

 ただし、受験には独特の特訓も必要になってきます。頭の中にパチンとはまった後は、各自でスピードを出して解く練習に入ります。
 特訓の中では、本当にスピードよく解くことができるのか、試合感覚の時間もあります。他では体感できない内容であることは、合格していった人たちが口々に伝えてくれることですから間違いないでしょう。

 この週一回の特訓の時間は、わたしにとってもたのしい時間です。

 そして受講した一人ひとりも「今日もとてもたのしかった」と評価してくれています。
 ますます全員を合格させてあげたい気持ちがつのる日々です。
 大好評のたのしい教育授業プラン「ストローより愛を込めて」を生み出す頭脳全開で、また来週の特訓内容を練っています。
 来年、この先生たちが新採用教師として、いろいろな学校で活躍してくれると思います。

 四月から新しいコースが始まります。
 この読者の皆さんの周りにまだ採用試験を突破していない人たちがいて、その中で「この先生、早く本務の教師になって欲しい」と思える人がいたら、この記事を紹介してあげてください。
 研究所の活動に強く共感できる人なら受講可能です。
 リーフは研究所の関係者ごく少数の方達にしか配布していませんが、お問い合わせいただければ、お渡しすることが可能です。

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