「たのしさを軸に授業を創る」 時事出版「内外教育」へ執筆したもの

              ※時事出版社刊「内外教育」へ執筆したもの
「たのしさを軸に授業を創る」     喜友名 一 2006.4

「たのしさ」を軸に授業を創(つく)る仮説実験授業の魅力にとりつかれ、
二十年の時が流れていきました。
「たのしさ」という言葉に、何かしら軽いイメージを結びつける人もいるかもしれません。

しかし研究を重ねるごとに、「たのしさ」という言葉が、
深い価値を含む概念である事を発見しています。

授業中おもしろおかしい事をいって笑わせる授業でも、
奇をてらったものを挟んで引きつけておく授業でもなく、
その授業内容の本質的なたのしさで勝負するというのですから、
軽いどころか自ずと本格的な内容にならざるをえないのです。

日頃そういう授業を目指していると、仮説実験授業以外でも
「たのしさ」を意識せずにはおれません。
つい数日前、四年生の子どもたちと
「アウト・ドア入門/食べられる野草・たべられない野草」という
授業をした時のことです。

感想文に「前の日は調子が悪くて休んだのですけど、
先生の授業がうけたくて今日はがんばって来ました。
来てホントによかったです」と書いてくれた子がいました。

「あまり無理しちゃいけないよ」と思いながらも感動してしまいます。
子どもたちの多くは単に「食べておいしかった」ということよりも
「畑でつくるものではなく、校庭や道端に生えている野草をおいしく食べる事ができる。

そしてキケンな植物を見分ける力がついた」という事を喜んでくれます。
応急処置の仕方を授業プラン化した「救急法入門」では、
応急処置の基本中の基本「まずケガなどをした人に落ち着いてもらう」
という事を学びます。

ある事故の時、それを実践できる子どもたちがたくさん出てきて
感動した事がありました。
人を助ける技術を身につける授業はたのしくなるはずで、
たのしければ深く身につくことも多いのです。

心配なのは、つまらなく、嫌いになって身についてしまった場合です。
もはやその中身は、その子が問題を解決するための手だてには
ならないのだろうと思えてなりません。

ところで去年今年と二度、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の選考を通過し、
米ヒューストンでの宇宙探査教育者会議/SEECに
参加させていただく機会を得ました。

いろいろな発表の中にNASAの宇宙飛行士の講義やNASAの研究の
視察が織り込まれる魅力あふれるプログラムです。
今年は年はJAXAが「日本のメンバーに発表してもらいSEECの場で
評価をうけよう」と試み、三人が選出されました。

私はプレゼンテーション形式ではなく、仮説実験授業をそのまま参加者に
体験してもらう方法をとる事に決め、
「長い吹き矢・短い吹き矢」という授業書を選びました。

ストローを一本二本と長くしていき、それでマッチ棒を飛ばしながら
加速度を体験してもらう授業です。
対象が外国の研究者・教育関係者で、しかも通訳などはつきませんから、
私のつたない英語での授業になります。

授業はとても好評で、授業後、多くの人達が
「とてもたのしかった/It’s very enjoyable」と握手を求めてきてくれました。

授業で使ったストローを大切にもっていてくれて、数日後、
「これこれ」と笑顔で振ってみせてくれたり話しかけてくれたり・・・
SEECでは参加者が発表者を五項目・五段階評価します。

その数値もかなり高かったということで、
SEEC本部から「来年も日本に発表してもらいたい」という
嬉しい報告がきたそうです。

「たのしさ」はいろいろな事を突破する鍵になるのでしょう。
宇宙から見るとこの地球に国境などみえないと語った飛行士がいます。
それと同じようにきっと「たのしい授業」そのものに国境はないのだと思います。

「たのしさを軸に授業を創る」、それは教師を続けていく限り
ずっと追い続けていきたい魅力に満ちあふれるテーマです。

 

 

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