仮説実験授業研究会が1964年3月3日に「仮説実験授業の記録」①②を創刊しました。「仮説実験授業研究 別冊」となっています。
雑誌「理科教室」に発表した 仮説実験授業の授業書「ふりこと振動」の授業記録です。
仮説実験授業創設期の重要メンバー「庄司和晃」が、成城学園初等学校の5年生38人に実施しています。
その中に、とても興味深い記述があります。
子どもがつぶやいた、こういうアイディアです。
Cくん「糸でんわでもやっぱり振動するので、声がつたわると思う。もしも大きな山と大きな山に、糸でんわでじゃまがないようにして、片方でしゃべったら、糸の振動でむこうの山にも伝わるだろうか」
これは、とても面白い実験です。
実は私が子どもの頃、糸電話がとてもたのしくて、友人たちと、どれくらいの長さまで聞こえるか実験したことがあるのです。
教室の端から端までは簡単に届き、廊下の端から端でも大丈夫でした。
といっても15mくらいじゃないかと思います。
もっと長い糸電話を作ろうということになって、実験の場所を探しましたが、結局運動場くらいしかみつからず、みんなで外に出て50m近く伸ばした状態で試してみました。
今だと、先生たちに注意される様な実験ですけど、あの頃はノーマーク。
自由と危険が隣り合わせという感じですね。
普通の糸で張ろうとすると何度も切れてしまい、大工さんの使う様な水糸(タコ糸の様な丈夫なもの)を使ったと記憶しています。
では、声は聞こえたと思いますか?
[問題]50mくらいの糸電話でお互いの声は伝わったでしょうか?
予想
ア.ふつうに聞こえた
イ.なんとか聞き取れた
ウ.声だとはわかるが、なんと言っているかわからなかった
エ.聞こえなかった
どうしてそう予想しましたか?
あなたの考えを聞かせてください。
驚くことに、全く声は届きませんでした。
耳に届くのは、風が糸を震わせるブーンという音だけです。
わたしの子どもの頃の実験ですし、いろいろ工夫すると何とかなったかもしれません。
web上で調べてみると、針金を鉄棒などにピンと張ってから、その針金から1-2mくらいの糸電話を結んで両端で話せばちゃんと聞こえる、という様な紹介もありますけど、それは普通にイメージする糸電話とは別物だという感じがします。
いずれにしても、糸電話で「山と山を渡すほどの糸電話」では、情報を伝えることは無理です。
仮説実験授業の授業書「ふりこと振動」には、こういう問題はでてきませんが、糸電話として独立した授業プランを作成して、とりあげたい問題の一つです。
古い資料の中には宝物がいっぱいだと感じるできごとでした。