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決まり・規則・ルールを作れば世の中は良くなるという考え方について考える/たのしい教育の規則・決まり

 教師をしていた頃学んだ発想法・哲学の一つが〈規則・ルール〉を増やすことで、違反も増えていく、正しいと思うことでも、それを規則にしてしまうと、意図したことと違う問題、反作用的なものまで起こってしまう、ということです。
 以前にも少し似たことを書いた気がしますけど、最近、ある先生のスーパーバイズで取り上げたことなので、ここでも紹介しましょう。

 学校にはたくさんの規則、生徒指導の担当であった私自身ですら覚えきれないほどの規則があります。
 中には〈古すぎる〉というものまで残されています。


 たとえば「ハンカチは白の無地(模様がない)」という規則があります。その規則に一体どういう意味があるのか?
 無理に考えれば〈マンガ的なものは教育的にマイナスである〉ということに端を発していたのでしょう。

 ところでハンカチ一つにそういうルールを設定する学校は、必然的に靴下も、シャツも、鉛筆も、筆箱も、下敷きもそうなっていくことになります。

「書き方を〈学校に持ってくるものは全て無地〉と決めれば済むではないか」と思う人もいるかもしれませんが、表記の仕方の問題ではないのです。
 たとえば子どもの鉛筆からはじまって持ち物全部をチェックするのは現実的に不可能でしょう。

 信じられないかもしれませんが、私の教師のスタートだった30年近く前は、体育の着替えの時などを利用して、子どもの肌着に模様が入っていないかチェックして保護者を指導している先生もいました。今ならクビになっていた可能性が高いでしょう。

 そういう持ち物指導が正しいのかどうか分からないということと並行して、世の中はゆっくりではあっても確実に新しい方向に進んでいきます。つまり時間が経っていけばたいていのものは子どもたちの感性が勝つのです。

 今はもうそういうルールは無くなっているでしょうから、それが一つの証です。

 指導が不可能なほど増えていくというだけでなく、そういうことに力を注いでいくと、それだけで勤務時間のかなりの部分を使ってしまい、大切な授業にかける時間と集中力が減ってしまいます。
 しかも子ども達同士が行う生徒指導も増えていきます。「キミ、違反の消しゴム使っているでしょう」という様ないざこざが〈いじめ〉に発展する危険は十分に予測されます。

 仮説実験授業研究会代表・日本科学史学会会長だった故 板倉聖宣が、こういう言葉を残しています。


〈規則ふやせば 違反もふえる〉
 真理をついている言葉だと思います。

 子ども達が〈たのしい〉〈もっと学びたい〉〈体調はよくないけれど、学校に行って先生の授業をうけたい〉という様になることが学校の本分だと思うのですが、どうでしょうか。
 だとしたら、規則を増やしていけば学校は良くなるとかいろいろな規則があるからこそクラスが保たれているという様なことではなく、規則は基本的なものに限定してスリム化する方向ですすめていけたらと考えています。

 私いっきゅうは、本来的に〈決まり、規則〉というのは警察関連の領域、取り締まりに属するもので、教育の本分とは異なると思っています。
 基本的な規則を残して、多くは〈教育〉の力ですすめていく。
 つまり「仲良くしなくてはならない」といる規則ではなく「仲良くするって気持ちがいいね」と感じてもらう様な授業を展開していくということです。

 取り締まりはすぐにできるけれど、教育は時間がかかります。それは、その子の一生ものの宝物を育てていく活動だからです。

 たのしい教育研究所は、取り締まりではなく〈教育〉の力で少しずつ学校や社会を良くしていく力のある先生たちを育てようと考えています。賛同してくれる方が増えていくことで、その活動も加速します。
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