仮説実験授業研究会代表で日本科学史学会の会長でもある 板倉聖宣は、子ども向けの科学の本を最もたくさん書いている人物です。
板倉聖宣が文部科学省の教育政策研究所の室長をしていた頃に書いた文章があります。50年近く前のものですけど、たのしい読書教育について、とても興味深いことをたくさん語ってくれています。
たのしい教育メールマガジンに、その文章を書き取って掲載していますが、その一部をお届けします。
夏休みの読書のきっかけになれば幸いです。※古い資料からの書き起こしなので、文章の責任は喜友名に在ります。
「科学読物をなぜ読まなければならないか?」
そのひとつの理由として前回、こういうことを書きました。
「今の理科教育の欠陥のために子どもが科学というものを正しく理解する自信を失うのを防ぐことにある」
それなら、学校の理科がよく勉強できさえすれば、読物は文学作品だけ読んでいればそれでよいのでしょうか?
私はそうは思いません。
学校にすぐれた理科の先生がいて、たくさんの実験をやらせてくれたり、わかりやすく教えてくれれば誰だって科学の勉強がたのしくてしかたがなくなるでしょう。
実際、私どもがいま小学校でやっている新しい理科の授業(「仮説実験授業」という)では、どのクラスでもほぼ全員の生徒が「科学の問題を考えたり、実験したり、討論をしたりするのが好きだ、大好きだ」といってくれます。しかし、そうなってもやはり科学読物は読ませなければならないのです。
「学校の理科の時間に実験をしながら科学の勉強をしていく」ということはすばらしいことです。しかし、「実験することだけが科学の勉強」だと思ってはいけません。
私たちは、自分では簡単に実験できないことについても、すぐれた科学者たちの研究したことについて勉強しなければなりません。彼らがどのように考えて自然のなぞを解きあかしていったか、その考え方にも学ぶ必要があるでしょう。
こういうことについて教えてくれるのは科学読物よりほかにないのです。
読書教育もたのしくいこう!
たのしい教育研究所です。