学校にいると、その言葉を聞いたり見たりしない日はないくらい重視されているのが「学力」という言葉です。
もちろん教員採用試験でも必ず狙われる重要キーワードです。
質問1
日本の最も基本となる法律が「日本国憲法」です。
ではその「日本国憲法」に「学力」という言葉は使われているでしょうか?
いいえ使われていません。
日本国憲法
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S21/S21KE000.html
質問2
教育に関わる最も基本となる法律はなんでしょう?
「教育基本法」です。
では、「教育基本法」に「学力」という言葉は使われているでしょうか。
予想 ア 使われている イ 使われていない
使われているとしたら、どのような文脈で使われていると思いますか?
たとえば「教師は児童生徒の学力を高めなくてはならない」というような文脈として使われている、など
教育基本法に「学力」という言葉は全く出てきません。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H18/H18HO120.html
教育の目的は
「人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない」
と定めています。
教育の目標でも「学力を高めよう」という表現ではなく
「幅広い知識と教養を身につけ、真理を求める態度を養い・・・」とあります。
原文で確認してみてください。
原文
(教育の目的)
第一条 教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。
(教育の目標)
第二条 教育は、その目的を実現するため、学問の自由を尊重しつつ、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。
一 幅広い知識と教養を身に付け、真理を求める態度を養い、豊かな情操と道徳心を培うとともに、健やかな身体を養うこと。
二 個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神を養うとともに、職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと。
三 正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を重んずるとともに、公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。
四 生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度を養うこと。
五 伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。
この赤にした部分はわたしの気に入りのことばです。
教育基本法に「学力」という言葉は出て来ない。
では「学力」という言葉はどこにでてくるのでしょうか?
続けましょう。
教育基本法の次に重要な法令が「学校教育法」です。
質問3
「学校基本法」に「学力」という言葉は使われているでしょうか。
予想 ア 使われている イ 使われていない
使われているとしたら、どういう文脈で使われているのでしょう?
たとえば「教師は児童生徒の学力を高めなくてはならない」というような文脈として使われている、など
「学力」という言葉は「学校教育法」でやっと登場します。
「学校教育法」http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S22/S22HO026.html
しかしその使われ方は、「学力を高める」というような文脈ではありません。
「高校には中学卒業に準ずる学力があると認められる者が入学できますよ」という文脈です。
原文はこうです。
第五十七条
「高等学校に入学することのできる者は、中学校若しくはこれに準ずる学校を卒業した者若しくは中等教育学校の前期課程を修了した者又は文部科学大臣の定めるところにより、これと同等以上の学力があると認められた者とする」
たとえば、義務教育では
第十六条保護者(子に対して親権を行う者(親権を行う者のないときは、未成年後見人)をいう。以下同じ。)は、次条に定めるところにより、子に九年の普通教育を受けさせる義務を負う。
とあるのです。
では、学力を高めるというような表現に近い文章はみられないのでしょうか?
どう思いますか?
予想 ア.そういう文章はみられない イ.近い文章がある
原文を書きぬきます。
下線斜体は私が記しました。
第二十一条 義務教育として行われる普通教育は、教育基本法 (平成十八年法律第百二十号)第五条第二項 に規定する目的を実現するため、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。
一 学校内外における社会的活動を促進し、自主、自律及び協同の精神、規範意識、公正な判断力並びに公共の精神に基づき主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。
二 学校内外における自然体験活動を促進し、生命及び自然を尊重する精神並びに環境の保全に寄与する態度を養うこと。
三 我が国と郷土の現状と歴史について、正しい理解に導き、伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する態度を養うとともに、進んで外国の文化の理解を通じて、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。
四 家族と家庭の役割、生活に必要な衣、食、住、情報、産業その他の事項について基礎的な理解と技能を養うこと。
五 読書に親しませ、生活に必要な国語を正しく理解し、使用する基礎的な能力を養うこと。
六 生活に必要な数量的な関係を正しく理解し、処理する基礎的な能力を養うこと。
七 生活にかかわる自然現象について、観察及び実験を通じて、科学的に理解し、処理する基礎的な能力を養うこと。
八 健康、安全で幸福な生活のために必要な習慣を養うとともに、運動を通じて体力を養い、心身の調和的発達を図ること。
九 生活を明るく豊かにする音楽、美術、文芸その他の芸術について基礎的な理解と技能を養うこと。
十 職業についての基礎的な知識と技能、勤労を重んずる態度及び個性に応じて将来の進路を選択する能力を養うこと。
国語算数理科社会体育音楽図工に関わる学力的な表現は全て「基礎的な力を育てる」となっています。
「学力を高める」という趣旨の表現ではなく「基礎的な能力・理解・技能を養う」ということです。
ではいったい「学力を高めよう」というのはどういう法律を元にしているのでしょう?
受験生の皆さんは、そういう意識で「教育法規」を学ぶということも大切です。
たのしみですね(^^
がんばっていきましょう。
いっきゅう