私は「言葉」の成り立ちを調べる事がとても好きです。
そこには、推理小説を読むかのような、もちろんそれ以上のワクワク感、ドキドキ感があります。
今回はその一つの例として、ある学校でのお話を書かせていただきます。
「たのしい自由研究」の一つとしても読むことができると思います。
某月某日、高校生と大人一緒になって科学の話をしていた時のことです。
星座に詳しい子どもが「コンパス座」のことを語ってくれて、それをある人達は「羅針盤」と思い、ある人達は「文具」をイメージしていました。
言われてみると、同じ呼び方ですね。
「予想を立てる」ということで画期的に賢くなります。
はずれても、です。
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もんだい1
星座の中に「コンパス座」があります。
その星座は「文房具のコンパス」をイメージした星座でしょうか、
それも羅針盤・方位磁石をイメージした星座でしょうか?
予想
ア.文房具のコンパス
イ.羅針盤・方位磁石のコンパス
ウ.その他のもの
どうしてそう思いましたか?
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お話「コンパス座」
残念ながら日本からは見ることができないのでなじみの少ない星座です。
コンパス座はこの様に3つの星を結んだ星座です。
そうです。
今学校で使う文房具の「コンパス」をイメージした星座なのです。
質問
文房具のコンパスと羅針盤・方位磁石のコンパスとは違うものなのに、どうして同じ「コンパス」という呼び方をするのでしょうか?
たまたま呼び名が重なっただけかもしれません。
あるいは深い意味があるかもしれません。
あなたはどうしてだと思いますか?
お話
文房具のコンパスと羅針盤のコンパスがどうして同じ呼び名なのか。
そこに意味があるのか特に無いのかを調べるために、いくつか予想を立てながらすすめていきましょう。
問題2
文房具のコンパスと、羅針盤のコンパスとは、どちらが先に「発明」された道具でしょうか?
あなたはどう思いますか?
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予想
ア.文房具(コンパス)が先に発明された
イ.羅針盤(コンパス)が先に発明された
ウ.ほとんど同じ時期に発明された
どうしてそう思いましたか?
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おはなし「コンパスの発明」
文具のコンパスには「ディバイダ」という呼び方があります。
「分割(ディバイド)するもの」という意味です。
たとえばこうやって、5cmとって、その長さでいろいろ分割していけるからです。
もちろん、正確な円を描く事も簡単です。
羅針盤(コンパス)は、旅に欠かすことができません。
特に、海をゆく人々は、周りに目印がみつからなかったり、夜の暗さで周りが見えなくなるので、羅針盤は命に関わるくらい大切な道具です。
では、みなさんは、どのコンパスが先に発明されたと予想したでしょうか?
実はその2つの発明された時期はとても離れています。
羅針盤は14世紀(1301〜1400年)ルネッサンスの3大発明(火薬・羅針盤・印刷術)の一つに数えられています。
「いや、もっと古くて、中国で既に発明されていた」というお話もあって、それは11世紀(1001〜1100年)のことである、とも言われています。
いずれにしても、今から1000年くらい前あたりに登場した道具です。
「え? それじゃあ、それまでの船旅はどうやって方向を知っていの?」
という疑問もあるかもしれません。
それまでは、星・星座などを主に利用して方角を定め、航海していたのです。
さて、文房具のコンパスはどうでしょう。
今でも学校で使われている暗いですから、ここ100年くらい前の発明なのでしょうか?
いいえ、それよりずっと古いのです。
今使われている文房具のコンパスは、古代ギリシャ(今から3000年くらい前)で発明され、学校教育でも利用されていたということがわかっています。
※オズワルド・ディルク「数学と測量」大英博物館叢書 学芸書林
ずいぶん古いのです。
星座にある「コンパス座」も、この古くから利用されて来たコンパスをかたどったわけです。
さて、ではどうして、この図形用の道具と羅針盤とが、同じ「コンパス」と呼ばれるのか、そこに意味があるのか偶然か、それは次回に書かせていただきます。
たのしみにしていてください。
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