渡辺敏(はやし)という人物/たのしい科学実験の伝統

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内容は
「今週のたのしい教育研究所の様子」
「たのしい授業の方法」
「映画の話」そして
「たのしい教育の発想法」
の4本立てです。

今週は、たのしい科学実験の元祖ともいうべき渡辺敏(はやし)についてまとめました。

渡辺敏(1847~1930)は幕末から大正にかけて生きた教育者です。
渡辺敏255

一つの瓶(ビン)で試すことができる100の実験をまとめて
「一瓶百験(ひとびんひゃっけん)」という本を著しています。

原本はインターネットでも読むことができます。

http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/829985
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彼、渡辺敏 について板倉聖宣(仮説実験授業研究会代表・日本科学史学会会長)が、こう語っています。
 長野県での講演会での内容です。

 昔、ここには渡辺敏(ビン/ハヤシ)という人がいたのですが、みなさんはご存知でしょうか?
 この人は幕末の維新の戦争の時に、今の福島県の二本松の藩土で、その時に命拾いをして、官立の東京師範学校を経て、長野の大町の小寺椴の校長さんをやっていた方です。
 この人のことは講演の内容に多少とも関係がありますので、もう少しお話しますと大町で自由民権運動に参加して、それから《一瓶百験》という一つのビン:フラスコのことです。一つのフラスコで百もの実験をするということを始めて、そして1890年、明治の23年、この年は私ども年配の人聞にとってはきわめて象徴的民主年号で〈教育勅語〉が発布された年です、その年に、日本で始めて全国的な教育研究集会が聞かれました。〈全国教育者大集会〉という名前ですが、いわば文部省としては新しく総選挙が行われたりするので、教員を文部省の筋の方にもっていきたいと思ったのでしょう。文部省関係者が中心になって、今で言えば教研集会のようなものが聞かれました。その時に渡辺敏さんは長野県代表として出席しました。そのー瓶百験を実験しようと思ったのです。
 今でも教研集会などで実験をする人はほとんどいませんね。僕はある時、日本科学教育学会というところで話をした時に実験道具を持って行って、実験をして話したのですが.「ああ、実験道具を持って来て話をしてもいいのか!?」と言う人がいてビックリいたしました。
「科学教育では実験が大事だ!」とさんざん言われてきました。その会でも「実験が大事だ! 大事だ!」と言う人がいるにもかかわらす実験器具を持って来ない。日本人は「実験器具を持って来てもいいよ」と言われないと、持って来られないという、お上の思想に毒されております。
それにもかかわらず渡辺さんは日本最初の教研集会に実験道具を持って行って見せようと張り切っておりました。しかし、そこには宮様が来ることになっています。
「宮様に水がかかったら大変だ」ということで実際には出来ませんでした。
それで、その集会では長野県代表と石川県代表が特に激しい対立をしました。
「何が大きな対立になったか?」と言うと「教育は国家的であるべきか、あるべきでないのか」と言うことについて、石川県代表は「国家的であるべきは当然」と言う論陣を張り、長野県代表は「そうではない。教育は民衆の希望によって徐々に進展すべきものだ」と主張したのです。

石川県は「教師が家庭訪問をして、学校に子どもを出すように運動をすべきだ」と主張したのですが、渡辺敏さんたちは「そんなことはしてはいけない。教師は学校で授業をすればいいので、今多くの人たちが学校に子どもを出さないのは、出せないのだ。経済的に豊かでないからだ。それを無理して出させてはいけない。民衆が豊かになればおのずと学校に子どもたちを出すようになる」という議論を展開したのです。

長野県は江戸時代に小さな藩がたくさん集まった県です。石川県は加賀百万石の大藩でした。
なんでも「国家的に、画ーに考える」という石川県に対して、「バラバラがいいのだ」ということを主張したのが長野県です。これは非常に対照的であります。

 その後、長島県は教育県として有名になりますが、その渡辺さんは信濃教育会の創始者の一人であります。渡辺敏の弟さんを浅岡ー(はじめ)さんと言いますが、長野師範学校の校長として来て、この人が確か初代の信濃教育会の会長であります。

 渡辺さんは長野市の、はじめは長野町でした長野町のあらゆる学校の校長でありました。今では考えられないことですが、長野長の全ての学校の校長と言うことは教育長と同じととであります。実際に教育長と同じ役割を果たしました。自分が「こういう学校があるといい」と思うと勝手に作ってしまう。後で予算処置をさせるということで、今より遥かに自由に振舞って、1930年に亡くなるまで大変ユニークな仕事をしてまいりました。

 この渡辺敏さんの伝記については、「かわりだねの科学者たち(仮説社)という私の本に詳しく書いてありますが、との本の半分ぐらいは渡辺敏さんの話になっております。
私は長野にそういう伝統があるのをうらやましく思います。

 

次回は、実際に渡辺敏が実施した実験をいくつか紹介させていただきます。
おたのしみに。

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「月」の学習/ブルームーン って何?

最近書いた「月の満ち欠け」の続きで、「月」のお話を書きましょう。

みなさんは、ブルームーンという言葉をご存知でしょうか。
大気中の細かい塵で、月が青く見えることがあります。
まさにブルームーンです。

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それだけではなく「めったにないこと」をブルームーンと表現します。
今月2015年7月は、そのめったにないことが起こる、今月はブルームーンの月です。

月の満ち欠けと暦とのズレで、一ヶ月に2度、満月になるのです。

7月2日が満月でした。
7月31日も満月です。

さて、こういうことは、どれくらい「めったに起こらない」ことなのでしょう?

次のブルームーンは、どれくらい後なのでしょうか。
予想してみてください。

 

ブルームーンは、およそ3年ごとに起こります。

次のブルームーンは2018年5月30日です。
今月は3年に一度の貴重な月です。
晴れるといいですね。

「新月(月がほぼ見えない状態)」から次の「新月」が起こるまでを元にする「太陰暦」にしてしまえば、こういうことは起こらずにすむのですけどね。

わたしは「太陰暦」が大好きです。

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たのしい教育Cafe 7月!/たのしい授業のネタにことかきません/プリッツ団子

昨日は月に一度の「たのしい教育Cafe」の日でした。
いろいろな人たちが集まって、たのしい教育の方法を紹介し合います。
もちろん、ただ味わっていただくというのでもOKです。
残念なことに台風が接近してしまい、急遽、その対策に追われて参加できなかった方もでましたが、時間いっぱいとてもたのしい研修会でした。

・焼きチーズ フォンデュ・プリッツ団子
・非常食の食べ比べ
・たのしい薬物乱用防止授業プラン「薬と毒」
・たのしい読み語り
・たなばたの願い
・たのしいゲーム入門
・中学生に伝えたこと
・サイエンスチャレンジの話
・来月の たのしい教育 in  宮古島 について
・ドキドキ狩猟入門
・その他

毎回毎回、よくこれだけたのしいものに事欠かないなと不思議に思います。
今回は偶然にも「食べ物ネタ」がいろいろ出ました。

その中から、まず「プリッツ団子」を紹介させていただきます。

学期末のクラスパーティーでも盛り上がると思います。
およそ20分くらいでは一クラスで味わうくらいたのしめると思います。

ものづくりハンドブックにある島百合子さんの記事が元になっています。

流れを簡単に書くと
1.白玉粉を水でといてお団子にします
2.沸騰した鍋に入れて、浮き上がったら冷やします
3.砂糖ときな粉をまぜて、それに団子をからめます
4.プリッツを串にして、プリッツごと味わいます
スクリーンショット 2015-07-08 22.00.01 スクリーンショット 2015-07-08 22.00.07 スクリーンショット 2015-07-08 22.00.16とても好評でした!

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たのしい自由研究のすすめ/自由研究こそ本物の研究!「花の給水実験」2-きのこも同じかな?/植物のからだの研究のきっかけとして

自由研究の題材/自由研究のネタ として書いてみます。私が小学校の頃やったことがある実験で、たのしい教育の伝統としてぜひ受け継いでいきたい内容です。

以前に書いた

「実験に失敗はない  予想が外れただけ」https://tanokyo.com/archives/6235

の続きです。
そこでは植物の着色実験(給水実験)をしました。普通に見られる植物と、キノコの色のつき方(給水)が違う結果が出ています。

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いつもの様に忙しいさなか
「身近にあるキノコで試してみると変化のスピードが速くてわかりやすいのではないか?」
という、かるい気持ちで試してみると、たしかに予想した通り、変化のスピードは速かったのですけど、色のつき方(給水の仕組み)でハッキリとした違いがある。という事を知ったわけです。

落ち着いて考えると、色のつき方が違うのは、当たり前なことなのです。
でも、実験をしてみたおかげで、自分でもそれをハッキリ認識することができた、というわけです。

だから

「どっちに転んでもシメタを探せ」座右の銘

なのです。

その後、学校の先生方への授業の時に、キノコの茎を二つに割いて、色の染み込み方を調べてみました。

30分くらいで、この様に変化していきます。
先生たちも、興味をもってくれました。
一回の授業の間で見せてあげられると思います。

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どうして、そういう色のつき方になったのか?

キノコなどの菌類と、普通にみられる植物との身体のつくりが違うのです。

よく見られる植物は「維管束(いかんそく)」といって、水の通る道や、作ったデンプンなどを通す道がちゃんとできています。
人間の血管の様なイメージです。

この写真をみると、色水が通っていく場所がハッキリとしますね。
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ところがキノコなどの菌類は、そういう仕組みが身体の中にできていません。
ですから、ティッシュや脱脂綿が水を吸い込んでいく様に、全体的に染み込んでいくのです。

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「キノコの様なからだをもっている生物と、バラの様なからだの仕組みをもっている生物(植物)たち、そしてその中間の様な生物(植物)たち」

そういう視点で調べてみる。

また

キノコは植物といって良いのか?/キノコは何類?

という視点で「分類の基礎」からまとめていくということも、たのしい研究の一つになると思います。

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