日本人の成人の学力-好奇心が低いのは日本特有の現象か-読者の方からの質問に答えて(前編)

 先に〈成長するに従って好奇心が失われていくことを防ぐには〉という話を書きましたが、その続きとして「読者の方からの〈好奇心が失われていくのは日本特有の現象なのか〉という質問についての答えを早く読みたい」というメールも届いています。少し長くなりそうなので前後編に分ける可能性が出て来るかもしれませんが、書き始めましょう、お付き合いください。

 学校に勤めていた頃の話題は子ども達の学力が中心になりますが、RIDE(たのしい教育研究所)を設立して子ども大人関係なく〈たのしい教育〉を広げる活動をはじめると、大人の学力得点データも見ていく様になりました。

 OECDは国際的な学力テストを子どもだけでなく大人にも実施しています。〈国際成人力調査(PIAAC:ピアック)〉といって、16-65歳の成人を対象に、読解力、数的思考力、ITを活用した問題解決能力を調査しています。

日本の子ども達の学力

 子ども達の学力テストの得点については詳しい方も多いと思います。
 低くなったと騒いでいる向きもありますが72の国・地域が参加した中でこういう順位になっています。

2015年の日本の順位
「科学的リテラシー」2位
「数学的リテラシー」5位
「読解力」8位

 読解力が2012年で4位だったところ8位に落ちたことについては、テストの方式が変わったので、単純に前回の順位と比較できないと言われています。

 いずれにしても、日本の子ども達の学力は世界トップクラスです。


 では私たち成人の学力テストの得点の結果はしはどうでしょう?
 以下の国々が参加しているテストです。
 アイルランド、アメリカ、イギリス、イタリア、エストニア、オーストラリア、オーストリア、オランダ、カナダ、韓国、キプロス* 、スウェーデン、スペイン、スロバギア、チェコ、デンマーク、ドイツ、ノルウェー、フィンランド、フランス、ベルギー、ポーランド、ロシア*、日本   24か国・地域 ※は国全体ではなく一部

 子ども達の様に世界トップクラスを維持しているでしょうか?
 それとも、子ども達よりも低い得点だったでしょうか。
 予想してみてください。

 

 予想
 ア.子ども達とほぼ同じ
 イ.子ども達より明らかに高い得点
 ウ.子ども達より明らかに低い得点
 エ.その他

 
  どうしてそう予想しましたか?

 

大人・成人の学力得点

これがPIAACの結果です。
数字は得点で( )は順位を表しています。

 表なので少し確認しづらいかもしれませんが、日本人成人の国際学力テストの得点はダントツ1位です。
 これは文科省がまとめた資料です。

⇨こちら

 これだけ圧倒的な得点を示しているということを知っていた人は少ないと思うのですけど、どうでしょうか。

 それにしても、たとえばITで世界トップを走っているアメリカが、読解力16位、数的思考力21位、ITを活用した問題解決能力17位という結果や、他の先進国、たとえばイギリス・フランス・ドイツなどもそれほど振るわない成績であることなどを見ると、〈テストの得点〉が高いことが、その国の力を示すわけでもないことがわかる様な気がします。

 では、いよいよ好奇心についてみて行きましょう。後半に続く。

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日本は明治以来はじめて〈教育〉の〈供給過剰〉に陥った-板倉聖宣2013-このサイトを読んでくださる皆さんがRIDE( たのしい教育研究所 )の大きな支えです

 たのしい教育は〈たのしさというスパイス〉をふりかけることで、子どもたちが少しは勉強してくれるだろう、という様な小手先の手法ではなく、教育を根本的に改革するものとして提唱しています。それは「たのしくてもっと勉強したい」という構造であり、新学習指導要領に謳われた〈自主的・対話的で深い学び〉も「たのしい教育」の元でこそ成立すると考えています。

 現在は、明治期に近代的な教育制度がスタートして以来、新しい時代へ向けて大きな変革が始まっているのです。

 文科省の国立教育研究所でその始動を感じ取っていた板倉聖宣は、仮説実験授業という画期的な教育方法と共に、時代の変化をわたしたち教育者に伝え続けてきました。
 今から五年前、科学技術振興機構(JST)の講演に呼ばれた板倉聖宣は、こういう話をしています。わたしにとっては何度も聞かされてきた内容で、特に新しい話ではありませんが、こういうことを聞いていない方達には刺激ある内容だと思います。紹介させていただきます。


 一番重要な今日的課題は〈日本は明治以来初めて、教育の供給過剰に陥った〉ということでしょう。
 これは余り認識されていないことですが重要な問題です。
 明治以来の歴史の中で、教育だけはなかなか需要が頭打ちにならなかったので、いつまでたっても上級学校がいばっていて、「勉強するまで入学させないよ」という入学試験の差別制度を保ってきました。
 しかし10年近く前、それ以来から、急速に大学院が供給過剰になって、上級学校に行けば行くほど得をするという時代は終わりました。
 そしてみんな勉強しなくなりました。

 明治以来、入学試験を軸にして日本は教育を発展させてきました。入学試験があって初めて日本の教育が成り立っていたのです。
 ところが入学試験が機能しなくなってきた。
 これは見方をかえればチャンスです。

 しかし一部では、いまだに入試で生徒を勉強させようとしている。
 入試がだめならTOEFLというようなことで「受かったら得する試験を課して勉強させる」という構造を維持しようとしています。
 しかしそういう方法は供給過剰のときには機能しないのです。

 日本の教育は〈入試はいけない〉といいながら入試に頼ってやってきました。このことを認めて、かつ、その構造が機能しなくなっていることを認識して新しい方向性を考えないといけないんです。
 しかしそこのところがうまく認識できてないから、今いい加減なことをやっているのではないかと思います。

板倉聖宣2013.7.7
仮説実験授業研究会ニュースより抜粋

 新しい時代は変革の痛みを伴うものですが、〈たのしい教育〉は、ゆっくり着実に〈たのしさ〉という旗幟を掲げて歩いて行きたいと考えています。それは多くの人たちの感動と希望を原動力にして進めていくもので、決して闘いや苦しみの中で進めていくものではありません。
 みなさんの周りの子ども達が〈こういう勉強ならもっとやりたい〉〈もっといろいろなものも学びたい〉と思ってくれる、それは未来の希望以外の何ものでもないでしょう。
 そして、このサイトを毎日読んでくださっているたくさんの皆さんが、その未来の希望を大きく支えていると考えています。
 最近は「こういうものを読みたい」「以前書いたあの話の続きを書いてもらいたい」という様なリクエストもいろいろ届く様になってきました。
 ますます読み応えあるサイトにしていきたいと感がています。
 ご意見、リクエストがありましたら遠慮なくお寄せください!⇨こちら

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新作教材〈ごめんなさいねカード〉-自由研究でもたのしく使えます

 またまた新作教材が出来上がりました。名づけて「ごめんなさいねカード」。

 みなさんは、周りの人たちにすなおにあやまることができますか?

 あやまること、謝罪は子どもだけでなく大人にとっても難しいですよね。

 そんな時に、このカードと一緒に使うと、相手が笑ってくれるかもしれません。ただし、真剣に謝罪しなければいけないときは、やめておきましょう。また使う相手を間違えると、よけい怒らせたりすることもありますから注意してくださいね。

 これが〈ごめんなさいねカード〉、手にすっぽり入るサイズで、一緒に頭を下げてくれます。

 

 手に乗っけると・・・

ほら、すぐにこうなります。

 トレーシング・ペーパーが曲がる性質を利用して作りました。
 これ以外にも〈かかってきなさいカード〉など、たのしいカードがいろいろ出来上がっています。

 最新号のメールマガジンに簡単に作成する方法などをまとめました。
 メルマガには毎週毎週、この様にたのしく子ども達(大人でも)たのしめる教材が載っています。現在310号になり、人気もどんどん高まってきています。このサイトで〈たのしい教育〉に興味をもって、さらにもっと学びたいという方達はご購読ください(有料⇨こちら)。

 たのしいものづくり系として夏休みの自由研究などでもいろいろ利用できると思います。

 講座などをおたのしみに!

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好奇心を失わない、潰されないためには?-好奇心が失われていくのは日本の現象なのか? 読者からの質問に答えて①

 ネコのア~ルを紹介しながら〈好奇心の大切さ〉を説いた先日の内容の反響がいくつも届いています。熱心に読んでくださる方たちがゆっくり増えてきていることを感じて嬉しくなります。
  ア~ルが可愛いというメールもありました。
 現在ア~ルは〈癒し担当・スマイル担当〉の仕事が無いので休憩中ですけど、ソファーの上で眠りながら、回転競技の選手のような格好をしていて、癒し笑わせてくれています。


 さてその中に質問が入っている便りがいくつかありました。
「現在の教育の状況で子どもの好奇心が失われない、潰されないためにはどうしたらよいでしょうか」
「好奇心が失われていくのは世界共通のことなのでしょうか、日本人特有のことなのでしょうか」
という質問です。

 はじめの〈好奇心が潰されないためには〉という問いに答えるのは実は簡単です。
「たのしい教育を学ぶこと」であったり、「危ないからやめなさい」ということを少しずつ減らしていくことであったり、「子どもに尋ねる」ということだったり・・・

たとえば
⭐ このサイトを毎日読む、隅々まで読む
⭐ たのしい教育メールマガジンを購読する 
⭐ たのしい教育研究所の講座に積極的に参加する
などの〈たのしい教育を学ぶ〉シリーズ

子どもに対してなら
⭐ 病院にいくなどの大きな危険がなければ、そばで安全を確認してあげながら子どもの自由にさせてあげる 
⭐ 予想チャレンジの機会を積極的に作ってあげる 
 これをこうしたらさぁ~、どうなったと思う 的なものなど色々
⭐ いろいろな提案をして、子どものリクエストに応じてあげる
 ・釣りをする ・木登りをする ・山登りをする ・野菜を育てる etc.

 大人が自分の好奇心を膨らませるには
⭐ 同じジャンルに興味をもっているグループと活動する 
⭐ わたし、いっきゅうのLEAPカウンセリングを受ける
⭐ 〈~なのでやめよう〉という自己制限を1日1つはずしてみる
 ・お金がもったいないから高いお弁当を買うのはやめよう など

実はたっぷりと考えられるのです。

 ア~ルの様な好奇心を超えて、わたし達人間はもっとたのしいことをたくさん味わうことができます。
 衣食足りていれば、ア~ルよりたのしくゆたかな暮らしができるはずなのです。

 そして好奇心たっぷりの人たちが増え、才能を開花していくことで、未来がよりたのしく素敵で豊かなものになるに違いありません。

 続きの「好奇心が失われていくのは日本特有のことなのか」については、また機会をみて書かせていただきます。

 元気にたのしく行きましょう!

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