マスコミから流れる情報から遠い生活をしている私も、今回の鬼怒川決壊は、とてもつらいおもいをしながら見ています。
3.11の大地震の後、居ても立ってもいられず、気仙沼ではまだ炎が収まっていない状況の中、テントを背負って飛んでいった日の事を思い出しています。
被害でつらい思いをしている方たちの事を思い、こういう災害を少なくしていくために、科学的に物事を見ていくことのできる人たちが増えていくことは不可欠です。
「学び方コース」でこういうお話をしました。
少しその事を書かせて頂きます。
今回の鬼怒川決壊に関連して、『水の力はすさまじい』という言葉を異口同音に耳にしています。
これはしかし
『水』だから恐ろしい
のではなく
『大量の原子が絶え間なくぶつかってくる』
から恐ろしいのです。
小学校の理科で「三態変化」を学びます。
簡単にいうと、私達の周りの原子は、
温度の状態で「個体」「液体」「気体」の3つの状態に変化する
ということです。
そしてそのイメージを、こう説明している図をよく見ると思いますが、実はこれを見ていると勘違いしてしまいます。
同じ体積なら、そこに存在する原子の数が同じように感じてしまうからです。
実は、「気体」と「液体・個体」では、そこに存在する原子の量が「とてつもなく」違います。
気体はすき間(真空)の中をわずかな原子が飛び回っています。
私が個人的に好きだという事だけでなく、「原子論を教育する時の原点」であると断言してよい絵本があります。
もしも原子がみえたなら―いたずらはかせのかがくの本
(いたずらはかせのかがくの本 新版)
その中の絵を見てみましょう。
気体はこういうイメージです。
針の先でほんの小さくつついたよりももっと小さな一点を拡大してみましょう。
ずいぶんたくさんのすき間(何もない空っぽ/真空)の中をわずかな空気の原子・分子(原子がくっついた分子の状態)が飛び回っています。
これは0.000001 cmを拡大してイメージした図です。これを見ているメディアによって表示される大きさが異なるので、詳しい方からすると「縮尺的に変だ」と感じる人もいるかもしれません。しかしあえて「こういう目でみたかの様なイメージを持つことができる」ということも「学ぶ力」です。
では、液体はどうでしょうか?
「液体」と「固体」では原子や分子(原子が組み合わさったもの)の量はあまり違いません。どちらも原子・分子同士が隣りどおしくっつき合っているからです。
液体のイメージはこうです。
ほんの一滴の水をさっきの様に拡大してみた図です。
液体から少し離れて自由にとびまわりはじめたものが「気体」です。
気体と液体・個体では、そこに存在する量がとてつもなく違う、ということが伝わるでしょうか。
今回の項は今回の鬼怒川決壊で『水の力はすさまじい』という言葉を耳にするという話からはじまりました。
そこに戻りましょう。
たとえば家・建物にぶつかってくるものが「気体」の『空気』であった場合と「液体」の『水』であった場合には、「それが空気だから、水だから」ということではなく
◎絶え間なくぶつかってくる原子の量がとてつもなく違う
⇒ 破壊力が比較にならない程大きい
ということなのです。
たのしい教育研究所は『沖縄』にあります。
沖縄は海が近いので、大量の水が山から流れ込んで来ても、それが比較的早く海に流れてしまいますから、洪水の被害は少なくてすみます。
その沖縄では「台風」はとても大きな災害の一つです。
毎年の様に被害があります。
台風は「気体」のスピードが増加することに伴う災害です。
しかし水は「液体」ですから、もともと持っている破壊力がすごいのです。
防災に関して単純に比較はできないといいつつも、そのものが持つ破壊力ということで考えれば「より怖いのは液体が激突してきた時である」ということです。
そこに存在する原子の量がとてつもなく違う、つまり破壊力が違うのです。
液体がぶつかってくるという事は、原子の量で言えば、固体がぶつかってくる、つまり大きな岩石・土砂などが絶え間なくぶつかってくることとあまり差がないのです。
「津波」はこの液体が、台風並みのスピードで押し寄せてくるわけですから、さらにすさまじい破壊力になります。
小学校で学ぶ三態変化が『原子論』的にいきいきとイメージできる様になれば、ここで書いた内容であっても、小学校低学年の子ども達、いやもしかすると保育園の子ども達でも理解できる様になると思います。
たのしい教育研究所の授業は、そういう本格的なものを、子どもたちだけでなく、いろいろな方達に伝えたいのです。
今回は「学び方コース」で取り上げる内容を書かせて頂きました。
日を改めて、その②として「川の作り」から見た今回の災害について科学的にみていくことにします。
教育に全力投球
力のある子ども達を着実に育てる
たのしい教育研究所です