研究所の授業スーパーバイズの様子をお届けしましょう。子ども達を惹きつける授業、魅力的な授業についてのヒントになると思います。
今回は〈三年生の算数:かけ算の筆算〉でこういう問題を考えてもらいます。
一本40円のえんぴつを3本かいました。代金は全部でいくらになるでしょうか
段階としては、二年生でかけ算九九を学び〈一桁と一桁のかけ算〉は済んでいる段階で、三年生になって今度は〈40×3〉の様な〈二桁×一桁〉を学ぶ単元になっています。
皆さんならどの様に授業を組み立てるでしょう。
教師として基本的なことですけど、二年生で一桁同士のかけ算を学んだから、子ども達はそのかけ算ができると考えてはいけません。
しかし、経験が浅いと「みんな7×6はいくらだった?」という様に、子ども達が知っている前提で授業を構成していくことがあります。
そういう基本前提は抜きにして、一体子ども達が身を乗り出して授業に入ってくる構造について考えてみたいと思います。
このサイトでいくつか書いて来ましたが「人間は〈予想を持って問いかける〉ことによって新しいものごとを見出すことができる存在である」ことがその大きな骨格となります。
ウィキペディアの様な知識を羅列しても、優等生の良い子たちはついてきてくれるでしょう。知らなかったことを知るのはたのしいことでもあるからです。
しかし〈勉強が嫌い、苦手だ〉という子ども達も確実に存在しています。
統計的にいえば、特に好きではない、嫌いだという子ども達の方が多数だと思っていた方がよいでしょう。
そういう子ども達が乗って来てくれる様な問題を考えるのです。
教科書の問題が解ける様になる前に〈苦手だ・嫌いだ〉という子ども達でも予想を立ててくれる様な問いかけを考えてみましょう。
それが教材研究のキモであると言っても過言ではありません。
わたし自身がパッと目の前に出されたこの問題を見せられて〈さてどう組み立てようか〉と瞬間的に考えたアイディアの一つを紹介します。
20円のおかしを2個買ったらいくら払えばいいんだろう?
たし算してもいいし、みんながもっている教具のお金モデルを机にならべてもいいよ
考えてみてね
難しかったら、近くの人たちと相談するのもOK
と問いかけて考えてもらう。
少し時間をおいて答えがでたところで〈かけ算の式と答え〉を書く。
20×2=40
ところでさ、2円の切手を2枚買ったら、いくら払えばいいんだろう?
と問う。
これは二年生の復習にもなっています。もちろん少し時間をおいてから落ち着いたところで、〈かけ算の式と答え〉を書く。
2×2=4
なんか、数字がとても似ているねぇ・・・
・・・
今度はねぇ、4円の切手を3枚買ったらいくらか考えてみて
4×3=12
じゃあ、40円の切手を3枚買うとどうかなぁ。
お金モデルとか、友達と相談するして考えてみましょう
40×3=120
もちろん、この計算ができない人がいてもOKです。クラスの半分くらいの人たちがお金モデルなどで答えを導き出せた段階でもいいと思います。
あれれ、今度も数字がとても似ているねぇ・・・
じゃあさ、次の問題はどうだろう。
こうやっていくつか繰り返していくうちに〈何十×一桁〉の計算というのは〈一桁×一桁〉の計算を十倍する、ゼロを一つつけることで簡単に計算できることを発見してもらうことができる様になるでしょう。
もちろん準備時間がしっかりあれば、もっと視覚的にインパクトのある教材づくりも可能です。
こういうアイディアが練られていくうちに〈かけ算の筆算授業プラン〉としてまとまっていくことになります。
授業は回を重ねればうまくいくというものではありません。
若くても魅力的な授業ができる人たちもいれば、経験を重ねていってもなかなか子ども達がくいついて来ないという悩みをもった方達もたくさんいます。
子供たちにとって魅力ある教材を作っていくことは、たのしい教育の骨格の一つです。興味のある方は、研究所の講座を受講してください。直近でいうと8月19日(日)の自由研究の講座があります。
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