カウンセリングやSV(スーパーヴィジョン)などで、特別支援教育に関わる保護者の方の相談や先生方、管理職の先生たちとお話しをすることがあります。
それぞれ具体的な差異はありながら、根本的な部分で認識が異なっていることを感じることがほとんどです。
このサイトを熱心に読んでくださっている皆さんは、私いっきゅうをはじめとするたのしい教育研究所のメンバーが特別支援教育についてもプロフェッショナルだということをご存知だと思うのですけど、検索にたまたまヒットしたという方もいるので、たのしい教育研究所と特別支援教育が関わるのかについて少し触れてからすすめましょう。
教育者を私いっきゅうには大学卒業後に進む三つの選択肢がありました。
一つは普通の公立小学校の先生、もう一つは法務省の専門職員として少年院で子ども達に教える法務教官、もう一つが養護学校の先生です。
普通学校で10年くらい修行を積んでから特別支援系の学校か法務教官にと思っていたのですけど、結果的に普通学校の先生として30年勤めてから仲間たちとたのしい教育の組織を作って独立しました。
特別支援学校で勤務することはなかったものの、長い教師生活の中で、ハンディーのある子どもたちとたくさん関わってきました、一つひとつが大切な想い出です。
たのしい教育研究所に集う先生たちのほとんどは、特別支援教育に携わったことのある先生たち、それに深い関心をもつ先生たちです、これは偶然ではないでしょう。広くたくさんの子どもたちの笑顔と可能性を広げる教育ですから、自ずとそういう先生たちが集まってきてくれくるのでしょう。
この項では知能検査に触れることになるのでもう一つ、私いっきゅうがお世話になった研究室は学力構造の分析をしているところだったので、指導教官の先生の手伝いで知能テストや読書能力テスト、心理検査などを実施し分析していました。その意味でも学力や心理検査の素人ではありません。
さてそれらを前書きしておいて、はじめていきたいと思います。
質問
知能検査は今からどのくらい前に作られたと思いますか?
ア.20~30年くらい前
イ.50~60年くらい前
ウ.100年くらい前
エ.200~300年くらか前
オ.その他
どうしてそう予想しましたか?
別に、知能検査の知識をここで確認しようというのではなく、もっと大切なことを語りたいのですけど、そのためにもその歴史からはじめたいと思います。
知能検査の歴史
知能検査は今から100年くらい前(1906年)にフランス人のビネーとシモンによって作られました。それまで知能という曖昧な概念を数値化する方法はなかったのです。
ビネーとシモンが提唱した知能検査は世界中の研究者に注目されアメリカで改良されたスタンフォード・ビネー法が世界中に広まっていきました。〈精神年齢と生活年齢との比で求める比例知能指数〉で「比例IQ」と呼ばれる方式です。
知能指数=精神年齢÷生活年齢×100
で算出します。
9歳の子どもに知能テストをして、その得点が8歳の子どもたちの平均点と同じだとすると、知能指数(IQ)は、8÷9×100≒88となります。
実はシンプルな検査なのです。
今私たちが利用する知能検査には様々な形があって、中には精神年齢という概念を利用しないものも出てきたのですけど、基本的にはスタンフォード・ビネーの方式がベースにあることを頭に置いていてください。
現在の知能検査では〈70未満〉の数値が出た時に〈知的なハンディーがある〉と認定します、70~85はボーダー(境界域)で、85~115が標準です。
さてやっと本題です。
この知能検査の数字は、その子の〈能力〉を表しているのでしょうか?
あるいは将来のその子の力の高まりの幅を予測できるものなのでしょうか?
知能検査の数字で、その子の能力やその後の能力の伸び幅を判断する人たちがとてもたくさんいます。
IQ65は知的障害だと認定されてしまいます。
けれど、それは信頼できるのでしょうか?
一度みなさんも立ち止まって考えてみませんか。
知能検査は〈能力〉を測定しているのではありません、同じ年齢の子ども達の平均点と比較しているのです。
例えば私が子どもの頃、読んだり数字を見たりすることが嫌いで、周りの人たち話をすることも嫌いで、虫たちを追いかけ回して毎日を過ごしていた。
その私が知能検査を受けたらどういう数値がでるか、予想できると思います。
そのIQの数字は、同じ年齢の子どもたちより明らかに低い。
しかしそれは〈私の能力が低い〉ことを意味するのか?
いいえ、IQテストでは、今現在の比較で〈同じ年齢の子どもたちの平均より低い〉ということを意味するだけです。
もちろんその数値を示す人たちの中には脳の機能的な不具合によって、将来的にも高まりが遅いこともあるでしょう。けれどそれは日常生活の様子を専門的に判断していくのであって、IQテストの数値から判断できるものではありません。
ところが多くの人たちは知能検査の数値によって「この子の生涯の能力」をも判断してしまいます。
それは何より、その子にとって不幸なことです。
本質的には〈IQの値が将来的な能力をも意味するものではない〉からです。
もちろん、こういう心理検査は、受けるこども達が、検査のやり方を理解して、自分の力をしっかり出していることを前提としているのですけど、先に触れた様に、本人がやる気・意欲を出して取り組んでいるという前提は本当に成り立つのかという、大きな問題も含めて考え直してみる必要があります。
たのしい教育研究所の教材・プログラムはIQが低いと判定された子どもたちも大好きです。予想して実験で確かめていく教材をたのしんだり、計算をたのしんだり、読むことをたのしんだりしていくうちに、自分の力を高めていくでしょう。
今は子ども向けの個別のレッスン・SVを実施するゆとりはなかなかみつからないのですけど、自分の子どもに個別にたのしい教育を実施してほしいという方は、面談を経てその子が喜んでくれるプログラムを準備して実施したいと思います。お問い合わせください。
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