たのしい教育研究所は政治的な活動から最も遠い位置に身を置いています。たのしい教育研究所は、批判をする集団ではなく提案する集団ですから、森友問題についてコメントすることは無いだろう、ともいえますが、いろいろな方達から〈森友問題は何がどうなっているのか整理できない〉というお話や「いっきゅう先生がよく話す〈科学的な見方・考え方〉からすると、どういう様に見て考えていけばよいのか、少しで良いので聞きたい」という話が来ています。
〈政治の見方・考え方〉としてそういう方達の要望にお応えすることと、もしかすると、もやもやと見ている方達のひとつの示唆になるかもしれないということで書いてみたいと思います。興味のある方はお付き合いください。
わたし いっきゅうに近い方たちには有名ですが、わたしはテレビをほとんど見ませんし、ラジオも聞きません。さすがに車に乗っている時くらいはラジオを聞くだろうと思うかもしれませんが、あまりにも車好きな私が運転中に耳にしているのはエンジンの音とタイヤが道路をとらえる音と風の音くらいです。
新聞もほとんど手にしません。
世の中の流れに関しては、ネット上のニュース見出しを目にすることと、友人たちから来るメールに添付された記事を読んだりすることがメインです。なのでこれを読んでくださっている皆さんよりずっと森友問題に関する情報は少ないと思っていてください。ですから、もしかすると、みなさんが持っている新しい情報と食い違うところが出て来る可能性があります。と言いつつも、これから書きたいのは、そういう細かいことで左右されるものではなく、根本的な見方・考え方についてなので、その危険は少ないでしょう。
いろいろな方たちから耳にするのは〈誰は犯人か〉〈誰が指示したのか〉〈森友の籠池氏や佐川元局長は騙されただけではないか〉〈佐川氏の前の迫田局長が問題ではないか〉〈契約に関わった人物たちの証人喚問が必要ではないか〉〈○○︎などを守るためにみんなが動いたのではないか〉という話です。
迫田局長という名前すら初めて耳にする名前くらいですから、それらに関して答える知識を私は持っていません。
科学の世界での改ざん・捏造
ところで、政治の世界ではなく、科学の歴史の中でも、とてもたくさんの改ざん、捏造が行われて来ました。
記憶に新しいところでいえば、数年前2014年には〈STAP/スタップ細胞〉問題がありました。
数十年のスパンでみるとDNAの二重螺旋構造をめぐる〈疑惑〉もあります。
福岡伸一の名著『生物と無生物のあいだ』(講談社現代新書)には、DNAの構造でノーベル賞を受賞したワトソンとクリックが〈ロザリンド・フランクリン〉という女性科学者の二重螺旋のDNA構造というアイディアを盗んだのであろうことが記されています。
真実はどこにあるのか、推理小説並みにおもしろく読めると思います。
1世紀を遡るあたりで有名なところでは〈ピルトダウン人事件〉も起こっています。
サルからヒトへ進化した証拠の人類化石として約100年前に英国で発表され、約40年後に偽造の骨とわかりました。
左巻健男さんの〈面白くて眠れなくなる人類進化〉という本にこうあります。
一八五六年にネアンデルタール人の化石が発見されて以来、人類と類人訟は共通の姐先から由来しているという進化論にもとづいて、現在の人類と、類人猿との共通の祖先との闘を結ぶ「猿人・原人」の存在が予測されていました。当時、猿人と原人は区別されていませんでした。
しかし、それを証明する化石がなかなか発見されず、進化の過程がわからない期間は“ミッシングリンク”と呼ばれていました。
とくにイギリスの古生物学者たちは、イギリス本土でその化石が発見されることを熱望していたのです。
センセーショナルな大発見
一九0八年、ロンドンの南およそ六0キロメートル、イースト・サセックス州ピルトダウンの砂利採石場で、作業員が一つの頭がい骨(頭がい冠)片を発見しました。頭がい骨片は、弁護士でありアマチュアの考古学者でもあったチャールズ・ド-ソンに渡されました。ド-ソンは調査を続け、一九一二年に、いくつかの骨片を大英博物館の地質学部門の主管であったア-サ--スミス・ウッドワ-ドのところへ持ち込みます。
この顕がい骨は、ネアンデルタ-ル人やジャワ原人の頭がい骨に比べて大きかったことから、現代人の直系の祖先とされました。ピルトダウン人と名づけられ、学界に一大センセーションを巻き起こしました。
しかし時がたち、北京原人などの頭骨の研究が進むにつれて、人類進化史におけるピルトダウン人の位置が疑問視されるようになります。
現代人のように脳が大きく発達したのはもっと後世であることがわかり、人類進化史のなかで、ピルトダウン人だけが例外的な存在になっていました。
再検証が行われた結果、一九五三年、問題の化石は、現生人類の頭がい骨とオランウータンの下顎骨に加Lと着色を加えた偽造化石であったことが判明したのでした。
こういうことは、2014年の〈スタップ細胞〉から100年前の〈ピルトダウン人〉で止まるわけはなく、そのもっと以前はもっとたくさんの書き換え、捏造が起こっていたに違いありません。そしてその時にも〈犯人は誰か〉〈もっとも悪いのは誰か〉が問題になったに違いありません。
STAP細胞事件を見ても〈現在の科学の世界では、そういう事件を完全に克服できるわけでは無い〉ということはわかるのですが、それでも科学は〈そういう事が起こらない仕組み〉を具体的に組み立て続けていることは間違いありません。チェック体制もどんどん厳しく正確になってきています。
たとえば病院で処方してもらう抗生剤をインチキでは無いかと疑う人はいないでしょう。インフルエンザに効く薬は劇的に症状を緩和するといいますから、自分の身体でもそれを確かめることができるでしょう。
アインシュタインの相対性理論(特殊・一般)を詳しく知らない人も、それ疑う人もいるかもしれませんが、カーナビやGPSの情報は相対性理論の効果分を補正して〈一兆分の445〉を補正して正確な位置に近づけています。
もしも相対性理論その効果がアインシュタインの捏造なら、すでにその捏造は明らかにされて捨てられていたのです。
今回の問題でもっとも憂慮されること
森友の問題に戻りましょう。
誰が犯人か、誰が最も悪いのか、そういうことを問うことは必要な作業だと思います。
しかし今回の問題でもっとも憂慮されることは〈誰かの意図で書きかえができてしまい、それがわからない様に隠すことができ状況である〉こと、それを克服できずに〈まだそういうことができる状態であること〉が最も憂慮すべきことなのです。
そして〈その仕組みをどう改善していくか〉が最も大切なことで、そこに最も高い叡智を注がなくてはいけないのです。
残念な事に、恥ずかしいことに、悲しいことに、こういう事が起こってしまった。自ら命を絶ってしまった方もいるということですから、その中枢に居た人たちにとっても惨劇だったのです。
法に照らして罰を受ける人たちが出て来るでしょう。
しかし、圧力をかけた人が誰なのかがはっきりして、その人、その人たちを罰することができたからOK、というものではありません。
繰り返しになりますが
「こういう事ができない様にするためのシステムの構築」が最も大切な事なのです。
国の根幹に関わる重要な書類でも捏造・改ざんができてしまう、という実態を、悲しい事件の連鎖や、内部告発的なものによって、やっと気づくことができるという今のシステムではなく、その初期で発見できるシステム。そして重要なデータを扱う人々が、改ざんという犯罪に手を染めることができないシステムの構築をどうするか、そのことにどう取り組んでいくか、それがカギなのです。
私にもいくつかの具体的なアイディアがあります。
一つはA.I.の導入です。
もう一つはモンテスキューによって体系的に提唱された行政・司法・立法という〈三権分立〉の仕組みを、それぞれの中にも構築してしまうことです。〈行政〉の中にも三権が分立して成り立っている〈重層三権分立〉です。
例えば今問題となっている〈行政〉についていえば、その行政システムの中に〈純粋に行政を司る部門〉と〈行政内で法に基づいた政令の仕組みを構築する部門〉と〈不正・迷惑行為等を訴え法令に照らし合わせて判断することのできる部門〉がある。もちろん、それらの上に国全体の司法と立法の仕組みもある。
今回の森友問題の発端について、わたしのつたない知識での誤認もあるかもしれませんが、ある区議会議員の方が、現在問題になっている森友の土地について近畿財務局に文書の公開を求めたところ、それはできないということであったので、おかしいということで裁判所に訴えて文書を入手したところから始まったと聞いています。
そういうことまでしないと、私たちの税金の使い方を私たち国民が知ることができないような今のシステムではなく、行政の中にも国民主権による三権分立システム、もっとシンプルな形での枠組みを作って〈これはおかしいのではないか〉と訴えることができる仕組みをつくるのです。それを三権それぞれの中につくる。
おかしなアイディアだと思われるかもしれませんが、将来的に有望な仕組みだと思っています。
A.I.と組み合わせることで、それがさらに強化されることでしょう。
これについて詳しく書くと、このサイトの読者の興味関心を超えたところに進むと思いますので、ここまでにしておきます。興味のある方は御要請いただければ、さらに詳しくお話しできると思います。
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