人工知能|コンピュータに心は芽生えるのか?

その頃の社会全体が、科学や技術の進歩にたくさんの夢と希望を重ねていたこともあったのでしょう、子どもの頃から科学・技術に大きな魅力を感じていました。

今でも科学・技術は様々な発展を見せています。
巧妙な「疑似科学」の台頭、「科学・技術に疑問を提唱する人たち」の考え方もあって、現代社会は、わたしが子どもの頃の様に両手を上げて迎えいれる様子はありません。しかし革新的という意味では、今の方が多大な成果を上げていると思います。

ところで小学校の頃から、わたしの心に宿っていた大きなテーマが、進歩によってコンピュータにも「心」が芽生えるのかということでした。

ai,人工知能時は流れ、大学に入学した頃、やっとパーソナルコンピュータが普及し始めました。
今のiphoneの持つ処理能力の 1/1000 にも満たないコンピュータが150万円くらいした頃です。
何とかそれを手に入れ、プログラムを打ち込みながらコンピュータを学ぶうちに、
「人間が体系づけた命令系の延長にあるコンピュータに心が宿ることはない」
というのが私の一つの結論になりました。

ところで最近、画像認識に関する画期的理論ディープ・ラーニング(深層学習/多層構造学習)をきっかけに、〈人工知能〉が気になって学び始めています。

コンピュータが膨大な画像の中から「これはネコだ」「この数は1だ」と認識するプログラムは、かつてのコンピュータ技術からブレイク・スルー(画期的進歩)し、それがグーグルやカナダ トロント大学の成果ではっきりしてきました。
表面的にはわずかな変化に見えるかもしれませんが、コンピュータ自身による《教師なし学習》の可能性が見えてきたのです。

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板倉聖宣(日本科学史学会会長)の発想法

私が発行しているメールマガジンには「たのしい教育の発想法」の章があって、仮説実験授業研究会代表・日本科学史学会会長の板倉聖宣が語った内容を紹介しています。

最新号に載せたのが「あきらめる志」です。

熱意あふれる教師が「これでもか」というような勢いで、いわゆる「できない」と表現されている子ども達にいろいろなことを指導する。
それは良いことなのか?
一生懸命がんばることがよいことなのか?
そして「教育」とは誰のためのものなのか?

それらを的確に語った「たのしい教育」の根幹に触れる迫力ある内容です。
rp_e906fc0cff95ba328495b925a5774a70-250x193.jpg興味のある方はメルマガをご要望ください。

さて、その文章の前書きとして、こう書きました。

 今回も30年ほど前の板倉聖宣のお話からお届けします。わたしが「たのしい教育」にのめりこんだ時期なので、十分に個人的バイアスがかかっている可能性がありますけど、この頃の板倉聖宣はかなりの勢いです。1986年5月28日東大阪の先生方の集まりで語った内容です。

すると、読者の方からすぐにこういうメールが届きました。

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ノミの実験 (後編)|板倉聖宣から学んだこと「王様は裸だ」

さて、前回紹介した「飛べなくなったノミと仲間の力で飛べる様になった(➡︎こちら)」という実験は本当なのでしょうか?

みなさんはどう思いますか?

二日間にまたがってweb上で検索してみましたが
「ご存じの方もいると思いますが」とか
「師匠から聞いた話ですが」とか「これは先輩から聞いた話」とか
この話は有名な話なので聞いたことある方が多いと思いますが」という様な伝聞の連続で、誰がいつどこでやった実験結果なのか、けっきょくわかりません。

海外のサイトも調べてみました。

 まず一つ、それらしいサイトに当たりました。

The Naked Scientists (裸の科学者)
http://www.thenakedscientists.com/forum/index.php?topic=11394.0

スクリーンショット 2016-05-07 7.39.08

です。

しかしそこも

I found it on the web:(こんなwebサイトを見つけました)

という「伝聞」でした。

もともとは

Real Woman.(本物の女性)
http://www.realwomen.co.nz/content/view/43/17/

というサイトということです。

たどってみましょう。

How High Can You Jump?

Flea trainers have observed a predictable and strange habit of fleas while training them. Fleas are trained by putting them in a cardboard box with a top on it. The fleas will jump up and hit the top of the cardboard box over and over and over again. As you watch them jump and hit the lid, something very interesting becomes obvious. The fleas continue to jump, but they are no longer jumping high enough to hit the top. Apparently, Excedrin headache 1738 forces them to limit the height of their jump.

When you take off the lid, the fleas continue to jump, but they will not jump out of the box. They won’t jump out because they can’t jump out. Why? The reason is simple. They have conditioned themselves to jump just so high. Once they have conditioned themselves to jump just so high, that’s all they can do!

Many times, people do the same thing. They restrict themselves and never reach their potential. Just like the fleas, they fail to jump higher, thinking they are doing all they can do. If You Think If you think you are beaten, you are. If you think you dare not, you don’t! If you want to win, but think you can’t, It’s almost a cinch you won’t. If you think you’ll lose, you’re lost; For out in the world we find Success begins with a fellow’s will; It’s all in the state of the mind. Life’s battles don’t always go To the stronger and faster man, But sooner or later the man who wins Is the man who thinks he can.

 

ノミ・トレーナーたちが観察したところによると・・・
 Flea trainers have observed 〜 

とありますが、いつどこで、どういう人なのかはわかりません。

しかも「ノミ・トレーナー」ってどういう仕事なのでしょう?

もっといろいろたどると

The 100 Top Inspirational Anecdotes and Stories
(高いインスピレーションを与える逸話と物語100)
https://books.google.co.jp/books

ノミの実験に似た内容が書かれています。
しかし、そこにも「ノミのトレーナーたちが観察したところ」と始まります。

名前も実験の日時も記されていません。

また、ノミを箱の中で閉じ込めてあと開けても外に飛び出ないという話はありますが、「仲間のノミを入れると、また高くジャンプした」という話はありませんでした。

もう一つ

LOST POTENTIAL Why Kids Give UP!
(失われた可能性 どうして子どもたちは諦めるのか)
https://books.google.co.jp/books

にも関連する記述が見つかりました。

ノミの実験 たのしい授業の考え方1

ノミの実験 たのしい授業の考え方 文章上から十行目にこうあります。

I once heard about an experiment where fleas were caught, placed in a box and a lid placed on top of it. The fleas would jump again and again and again in attempt to get out.

私は以前、こういう話を聞いた事があります。閉じ込められた箱の中でノミは外に出ようと何度も何度も何度もジャンプします…

またもや『伝聞』です。

たどっていくのはここまでにしましょう。

もしもこのノミの話がきちんとした実験結果によるものだとしたら、「誰が、いつ、どこで」くらいの情報はすぐに入手できるはずですが、ここまで探してもたどることはできませんでした。

わたしの結論は

「ノミの話は〈ゆでガエル〉と同じく〈作り話〉である」

 

感動的な話はどんどん広まっていきます。しかしそれは本当の話ではなく「つくり話」である可能性があるのです。

もしも読んでくださっているみなさんの中で〈この実験は真実である〉という場合には連絡をください。ソースをたどって確かめてみたいと思います。

いろいろな人たちが「わからないことはわからない」と声をあげる。つまり子ども達の様に「裸の王様を、ハダカだ!」と声をあげてはじめて、一歩先にすすむことができるのです。私が板倉聖宣から学んだ重要な一つが、この事です。

長くなりました。
わたしが先生たちに初めて話した、このノミの話を「それは誰の実験ですか?」と聞いてくれたR先生に感謝しつつ、この項を閉じたいと思います。

 

たのしい教育で届けるのは「力」と「笑顔」と「元気」です!
たのしく実力ある教師を育てる活動も「たのしい教育研究所」の大切な仕事です。

授業で勝負|ノミの実験・ゆでガエルの実験(前半)|板倉聖宣から学んだこと

2016年春。連日「授業で勝負」の日々。

研究所に学びに来る若い先生たちに、「仲間と学ぶのもよい」という話題のきっかけに「こういう話を知ってる?」という感じで『ノミ』の話をしました。

ご存知の方もいるかもしれません。
周りの状況から自分で限界を設定してしまうこと、つまり「獲得された無力感」と、それを突破する力についての話です。

わたしの話に感心してくれたたくさんの先生達の中で、ある先生が
「それは誰の実験ですか?」
という質問してくれました。

「そういえば、誰の実験なんだろう? フィクションの可能性はないのかな?」

以前から、それが気になっていたこともあって、わたしがこの『ノミ』の話を出したのは今回がはじめてでした。フィクションなら、訂正が効きやすい上に、このことからも学ぶことができます。

話はかなりさかのぼりますが、板倉聖宣先生が沖縄に来てくれた時のことです。

板倉聖宣板倉先生が沖縄に来る時にはほぼ付ききりでいろいろお話させてもらっていましたから、これまで膨大な量の個人レッスンを受けたことになります。いつかまとめて本にしたいと思っている一つです。

ある時、わたしが喫煙に関する授業プランを作成していた時だったので、それに関して私が気になっていた実験についてした質問に対して
「一回こっきりしか起こらなかった現象に対しては、〈それは間違いかもしれない〉という選択肢も立てて調べた方がよい」という話をしてくれました。

みなさんは「ゆでガエル」の実験をご存知ですか?

インパクトの強い話なので、いろいろなところで紹介されています。読売新聞で紹介されて広まったという話ですけど、わたしはその原点に当たるデータを持っていません。web上で公開されている、某学校の校長先生が二学期に子ども達に向けて出した〈たより〉の中でふれたものがあります、よくまとまっていますから、それを抜粋してみます。

 ここに、ビーカーと三脚、アルコールランプがあります。あと水と生きたカエルが必要ですが、今日は実験ではありませんから、お話だけにします。
このビーカーには水が入っているものと考えてくださいね。
カエルを入れる一つ目の方法です。
あらかじめ水を沸かしてお湯にし、その中に生きたカエルを入れます。すると、その瞬間にカエルは跳び出して逃げます。カエルはお湯の熱さにびっくりするのですね。お湯の入ったビーカーはひっくり返るかもしれません。危険ですからまねをしないでください。
カエルを入れる二つ目の方法です。
生きたカエルを水の入ったビーカーに入れます。カエルは水の中をスイスイ泳いでいます。そこへ、下からアルコールランプの炎でゆっくり熱すると、カエルはどうすると思いますか?
水の温度はじわじわと上がります。でも、カエルは跳び出さないのです。水の温度の上がり方は、とてもゆっくりです。そして、何ということでしょう。ついにカエルはゆで上がってしまうのです。
これは「ゆでガエル」という実験にもとづいたお話です。
ゆっくりした変化にはなかなか気づきにくい。しかし、そのままにしていると、最後には命を落としてしまう場合もあるという教訓です。
私たちの暮らしの中で、このようなことはないかと振り返ることが大事です。急激な変化には誰でもが気づきますが、ゆっくりした変化には気づかず、無頓着に過ごしていることがありそうですね。伸びるためには十分気をつけなければなりません。
ほら、お家でのその姿、「ゆでガエル」になってませんか?

<校長 ○○>

 

板倉先生の話で調べたのが、このことでした。

ゆでガエルの実物は一度も見たことがありません。
残酷とはいえ、簡単にできる実験が、どうして話だけ伝わっているのだろう?

本当かもしれないし、板倉先生がいうように間違いかもしれません。
そうやって調べてはじめて、その話はかなり怪しいということがわかりました。どこにも、その実験の根拠が示されていないことが、そもそも怪しいのです。

 ウィキペディアにこうあります。https://ja.wikipedia.org

 2002年、ドイツの科学ジャーナリスト (enクリストフ・ドレッサー (de:Christoph Drösserは、ドイツ国内でコンサルタント活動家が盛んに使用する茹でガエルの話を疑わしいと感じながらも、証明するためにカエルを茹でたくはなかった。
困ったドレッサーがアメリカの爬虫両生類学者に質問したことを発端として話が学者仲間に伝わり、ホイット・ギボンズ (enから話を聞いたオクラホマ大学教授の爬虫両生類学者ハッチソンは「その伝説は全てが間違っている。動物学臨界最高温度 (Critical thermal maximum調査で、多くの種類のカエルは調べられており、手順として1分間に水の温度を華氏2度ずつ上げるが、温度があがるごとにカエルはますます活発になって温度の上がった水から逃れようとしたことから、蓋が空いていたり器が小さければ逃げる」と回答した[2]

 

以前「水は言葉を知っている」という話をめぐって、学校の先生たちがそれを授業にかけ始めたことがありました。道徳や理科の授業で取り上げ始めたのです。いよいよわたしの知っている先生たちもそういう授業をする人が出てきたので、「科学的とはどういうことか」という50ページくらいの冊子を書いたことがあります。興味のある方はお届けします(送料込み650円)⇨こちら

このゆでガエルも、それに類する話なのです。そして教育をめぐっては、こういう一見感動的な作り話がたくさんあります。

さて、最初に書いたノミの話はどうなのでしょう?

みなさんは本当のことだと思いますか? それとも、ゆでガエルと同じで、つくり話なのでしょうか?

予想を立てていると確実に賢くなることができますよ。

つづく

沖縄から全国に「たのしい教育」を発信するたのしい教育研究所。
授業の腕はいっきゅう品。とどけているのは「笑顔」と「元気」と「力」です!