学力=重要な知識・技能×意欲 (その2)

学力とは、重要な知識・技能 × 意欲 の続きになります。

もう20年くらい前になりますが、NHKの朝の番組「おはようニッポン1997年4月8日」に板倉聖宣(現在 日本科学史学会 会長/元国立教育政策研究所室長)が出演して、こういう話をしていました。

科学が好きになる、そして科学の原理がわかる、その具体的な例としてお読みいただければと思っています。
※意味を変えないように最小限手を入れました(分責 喜友名)

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もんだい
磁石のあなに通す棒を板の上 にとりつけて、たおれないようにしたものを作ります。

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そしてこれにはじめ、磁石を2枚同じ向きにかさねて、くっつきあわせておき、秤の上にのせて重さを計ります。(この時、重さは   g です)

そこで次に、上の磁石を裏返して右の図のようにして、はかりの上に のせて重さをはかるのです。
このとき、はかりの重さはどこをさすでしょうか?

 つまり、はかりの上にのっていないで中に浮かんでいる磁石の重さは下の秤にかかるかどうかというわけです。(磁石1コの重さは約  gです)

スクリーンショット 2015-06-14 18.35.19

 

予想

ア 前と同じ(  g)

イ 前より浮いている磁石の重さだけ軽くなる(  g)

ウ 浮いている磁石1コ分ほどは軽くならないが、前よりは軽くなる

エ そのほかの考え

どうしてそう思いますか?
 みんなの考えを出し合いましょう。

 

板倉
どうでしょうか, 予想してみて下さい。

アナウンサー
同じだと思いますけど… 迷います 。

板倉
迷いますね 。
頭のいい人はみんな迷うんですね  (笑)

じゃ答えはどうでしょうね?
実験してみましょう。

 ※読者のみなさんも予想してみてください Kiyuna

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   実験する

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   秤の目盛りは同じ


板倉
どうでしょうか?

アナウンサー:変わりません。

板倉:
そうですね、変わりませんね。
 同じですね。

 こういう問題を出して予想を出してもらって,そして話し合う授業なんですね。そのときに今は時間的に忙しかったので理由をいってもらいません でしたけど,理由をいろいろ考えて討論します。すると,ああ間違った! あたった!とかなるでしょ。

アナウンサー:
私は浮くからその分軽くなるかなと思ったんですが,逆に磁力があるからその分重くなるかなと思ったりして…説明してもらって答えを出すんですね 。

 なんか謎解きみたいな気がします。

板倉:
子ともたちは哲学者ですから、謎解きが好きなんです。
だからのってきます。

アナウンサー:
でもこういう授業だとなかなか予習ができない

板倉:
教科書がないからね。
それに予習されちゃこの授業はぶちこわしでしょ

アナウンサー:
逆にねえ

板倉:
だって予習するとあっちゃうんですから。
予習すると優等生だけが勉強してきて,いいかっこして,予習しなかった劣等生はいつもみじめなことに なってしまいます。
しかも優等生だって自分で考えないでしょ。
だから予習はさせないんです 。

アナウンサー:
予習をさせてはいけないなんて考えられないです!これは意外な話ですね。

板倉:
今だったら塾の先生に聞いちゃうから塾の先生が“思師”ということになっちゃって,学校の先生は何だったんだと…試験官だと。

アナウンサー:
確かに興味をもってやるかも知れないけれど,時間がかかっちゃって授業が遅れちゃうでしょう?

板倉.
うん,そりゃ時間はかかります。
普通はさっと実験をして見せて,理屈を言いませんから。
優等生は先生に「なぜか教えてくれ」と言います。
へたすると、教えたって自分で納得できないかも知れない , そしたら押しつけになっちゃいます。
でもこのような問題をつぎつぎと重ねて出していくと誰でも納得できるようになる。

アナウンサー:
原理を理解できるということですね

板倉:
そうです。
原理を自分で発見するんですね。
先生が教えてくれた原理を覚えるんじゃなくて、自分で納得できる。

アナウンサー:
遅れは気になりませんか?

板倉:
全体的に理解が深くなるでしょ。
しかも勉強が好きになっちゃうんです。
自分で予想を立てて,だんだんあたるようになると,なんか自分が頭がよくなったような気がするなあって 。

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沖縄の学力向上、たのしい先生の養成、実践型カウンセリングに全力投球中の「たのしい教育研究所」です。

おすすめDVD/「Coral Seas」サンゴの授業でおすすめです

わたし自身が映画が好きなので、たくさんの作品をみています。

理科でサンゴ礁の様子をイメージしてもらおうと思って、いろいろ探していて、意外におすすめの作品は少ないことに気づきました。

気合を入れて十数本借りて観た中で、もっともよかったのが

BBC制作ブルー・プラネットシリーズ6 Coral Seas. です。

スクリーンショット 2015-06-14 14.53.03 ドキュメンタリー作品では定評のあるBBCが作成したシリーズの一つです。

このシーンは、サンゴが岩にくっついてポリプ化

し、無性生殖で分裂するシーンです。

CGかもと思ってしまうくらい、よく撮れています。

スクリーンショット 2015-06-14 15.00.03

夏に向かって一直線の日々、海の様子で涼むのもよいかと思います。

沖縄県の学力向上にまっしぐらの「たのしい教育研究所」です。

おすすめ読み語り/「ノラネコぐんだんパンこうじょう」工藤ノリコ(白泉社)

我が家には、ニケランジェロという、のんびりネコがいます。
ある日の朝、研究所に行こうと準備していると、ニケランジェロがいつもの顔つきではない、哲学的な顔をしていました。

なにやら考え事をしているようです。

「お、かっこいい」と思い、パチリと写真をとりました。

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するとそれから10秒もしないうちに‥‥

‥‥バタリとこうなりました。

スクリーンショット 2015-06-13 12.15.40
なんだ、眠かったのね。

‥‥朝なのに。

ということで、わたしもネコは大好きです。
もちろんワンちゃんも大好きです。

今回は、本大好き人間のHina先生が、たのしい教育Cafeで紹介してくれた

『ノラネコぐんだんパンこうじょう』   工藤ノリコ (白泉社)

をUPします。

このネコさんたちが、たまらないのです。
ぜひ、自分も味わいながら、子ども達に読んであげてほしい作品です。

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ノラネコぐんだん パンこうじょう (こどもMOEのえほん) (コドモエ[kodomoe]のえほん)

ここは「ワンワンちゃん」の「パンこうじょう」です。
中にはおいしそうなパンが、ずらーっと並んでいます。
「ニャー、パンおいしそう」

「ニャー、パンたべたいね」

とノラネコぐんだんが、窓からのぞきながら、パンのつくりかたをみています。
このときの何かをたくらんだような顔もなかなかいいですよ。
夜、ノラネコぐんだんは、パンこうじょうに忍び込んで、パンを作りはじめます。

作ったのはいいのですが、なんと、パンこうじょうを吹っ飛ばすほどの大きなパンが・・・

 

ワンちゃんにばれて説教をされ、その時に、素直にあやまるところ、ワンちゃんとノラネコたちとの掛け合いもおもしろいですよ。

悪いことをしたノラネコたちは、すぐには許してもらえません。

がんばってはたらくノラネコたちの様子など、とてもかわいくて思わず笑ってしまいます。

ワンちゃんと陽気な猫たちのキャラクターも可愛くて大好きな絵本です。
大人が読むと、癒しにもなると思いますよ。

大人にも子どもにもおすすめします。

Hina記

学力=重要な知識・技能×意欲 その1) 学力方程式

「沖縄の子ども達は学力が低い」とか「沖縄の小学生の学力テ

スクリーンショット 2015-06-13 15.23.22ストの順位が昨年急上昇した」という言葉を耳にします。
あるいは「沖縄の子ども達の学力低下の原因は、親が夜型の生活をしているからだ」という様に、「学力」という言葉はいろいろなところで使われています。

たのしい教育研究所のサイトにはあえて
「活きた学力・生きた学力」
という様にしていますが、単に「学力」と言い換えてもよいと思っています。
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言葉を添えたのは、「学力」という言葉を「テストの結果」という様に考える人がいるかもしれないと考えてのことです。

テストの結果・テストの得点は「学力」の一部を説明することではあっても、「学力」そのものを説明するものではありません。

いろいろな考え方があって当然だと思いますが、たのしい教育研究所は「学力」をこういう公式で表しています。

 重要な知識・技能 × 意欲 = 学力
  学力方程式 by たのしい教育研究所

 

たとえば、算数の図形の問題をテストで正確に解ける子がいる。

しかしその子は、図形のごちゃごちゃした計算が嫌いである。
そういう子どもは、何か自分の人生の中で起こる課題を、図形的な力を利用して解こうとするでしょうか?

はなはだ疑問です。

自らの人生を切り開く力となるものが「学力」であるはずです。
テストでは解ける、ということだけでは、まだ学力がついたとは判断できないのです。

個人的なことでも、その例を幾つもあげることができますが、その一つ。
わたしは子どもの頃、習字のコンクールで金賞とか銀賞とかをよくもらっていました。
わたしの先生の書道の指導は
「とにかくこう書け、こう払え、ここで1秒止めてから…」
の連続でした。

結果として賞状は増えていっても、わたしは、その書道の時間が苦痛で苦痛でなりません。
ですから悲しいことに、わたしは墨汁のフタを開けた時の、その匂いすら嫌いなまま成長していったのです。

そういうわけですから、何か大きな文字を書くというときにも、筆を持とうという気持ちは全く起こりません。逆に、書道をする場面に直面するのをいかに避けるか、ということが目標であったりします。
つまり「書道」はわたしにとって、何かの課題に立ち向かうための力になりませんでした。

「賞/ほうびを与えればそのうちに好きになる」と考える人もいますが、それは、一部の人たちに当てはまるもので、一般化して考えて良いものとは思えません。

わたしが教師を始めた頃
「できるようになれば、そのうちに好きになるんだ」
と語る教育関係の方達がとてもたくさんいました。
しかし、現実はどうでしょう?

国際的な科学力・数学力を測るテストで、日本はトップクラスです。
しかし、私たちの周りに「理科はかんべんしてほしい」という人たちがどれだけ多いことでしょう。
科学の魅力を伝える活動を展開していると、そういう人たちがとても多いことを肌身で感じます。
勉強してきたであろう教師仲間でさえ、理科嫌いが多いのです。

たとえば「NHKオンラインサイト」にこうあります。

勉強への自信のなさも突出しています。「数学に自信がある」という割合はわずかに2%にとどまり、タイと並んで世界で最も低くなっています。楽しくも、好きでもなく、自信もないのに成績はよいというのは不思議な感じがします。
http://www.nhk.or.jp/school-blog/500/141363.html

 

テストに書きなさい、といえば書けるけれど、それは嫌いなのだ、という子どもたちを育てることは、学力向上にならないのではないか?
逆に、「図形の問題が好きだ」という子どもたちを育てることが、学力向上につながるのではないか? その子は、もしかすると、今はまだテストの得点がふるわないかもしれない。しかしそのうちに上昇してくる可能性は高い。
そして、何か自分の前に出てきた課題を解こうとするとき、きっと図形処理の力をどんどん発揮してくれるのだと思います。

ですから「たのしい教育」は、ゆっくりとではあっても、学力を根底から上げていくことになるだと思っています。

沖縄県の学力の問題は、日本全体の学力の問題とつながっていると思います。
沖縄の子ども達が「算数が好き」「国語が好き」「理科が好き」そういうようになっていくことで、じわじわと、生きた学力・活きた学力がつき、それがいろいろな問題や課題を突破していく力となる。
もちろん、沖縄が抱えている問題、沖縄だけでなく世界が抱える問題を解く力のある人間も、そこから間違いなく育っていくのだと、そう考えています。

Kiraku記

沖縄県の学力向上に全力投球の「たのしい教育研究所」です。