琉球新報掲載原稿シリーズ第二回「先生おれたち頭よかったんだなぁ」

琉球新報の教育欄に今年書かせていただいた内容の「テキスト掲載版」第二回です。
今回は「先生、おれたち頭よかったんだなぁ」です。
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まだ教師数年。
たのしい教育活動・仮説実験授業に本格的に魅了されて、いろいろな授業づくりを本格的にはじめだした頃のことです。

新聞の文字制限や語句使用の決まりごとを少し緩和させて書き足します。

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 恩納村の学校に赴任していた頃の事。
「小学校に新しい先生がやって来たぞ」というので元気者の中学生たちが数名、私の理科室に遊びにやって来た事があった。
しばらくはたわいのない会話が続き、彼らが学んでいるという空手を見せてもって後、授業のはなしになった。
はじまりは、けっこうらんぼうな言い方だったのを今でも覚えている。
「弟から聞いたけどさ、理科って、おもしろいわけ?」
「うん。だってねぇ、科学はさ、この地球が、ジェット機より速く太陽を回っている、って信じられないような事をどんどん明らかにして来たんだから、たまらないよね」
「これ虫眼鏡だろ?」と一人が手に取る。
「そうだよ。小学校の時に使った?
ところでさ、今ちょうどその準備しているところなんだけど、虫めがねで、外の景色がこの紙に映しだせるって知ってた?」
と私。
「普通は太陽の光を紙にあつめたりするでしょ? 向きを変えて、外の景色を紙に映すのさ」
※近くに虫めがねがあったら、みなさんも部屋を暗くして外の景色を虫めがねで白い紙に集めてみませんか。
昼でも可能です、虫めがねと紙を10cm〜30cmくらいに調整すると映ります。

私が、外の景色をまるで映画の様に白い紙の上に映し出すと、
「お〜、マジかぁ」と彼らの声の調子が明らかに変わった。
そして我先にと実験を始めた。
「すごい!」と中学生たち。

一息つくと、「ねぇ、先生、前から思ってたんだけど、何で逆さまに映るわけ?」
もう一人が「分かった、先生。虫めがねが一本だからだよ。二本の虫めがね戻るんじゃない?」
「おもしろい。さっそくやってみよう」と私。
「問題…一本のレンズでは逆さまだった像は、二本のレンズで正しい向きに戻るでしょうか?
予想 ア 逆さまのまま イ 上下が正しく映る 」

皆さんも一緒に予想してみませんか。

お互い予想を出し合って討論して後、の実験で更に盛り上がった。
やってみると、逆向きはそのままに、とてもクリアな像が映し出されたのである。「お〜」というさらに大きな歓声があがり、その後も虫めがねの実験は続いた。

帰る時に彼らが語った言葉が今も忘れられない。
「先生、おれたち、頭よかったんだなぁ…」
彼らの言葉が今も忘れられない。
その言葉に感動して、今も教育の世界にのめり込んでいるのかもしれない。

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写真は仮説実験授業「光と虫めがね」

おすすめ絵本 『おきゃくおことわり』 ボニー・ベッカー (岩崎書店)

「おきゃくおことわり」今日は、『おきゃくおことわり』ボニー・ベッカー (岩崎書店)を紹介します。

「仲良しの友達がいるって幸せだよね〜」って
ついほほえんでしまう絵本です。

クマの気持ちの変化がとってもかわいいんです。
長い間お客が来なかったクマはお客さんが来るのをいやがり
「おきゃくおことわり」と玄関に張り紙をします。

そこへ、小さなネズミが一緒にお茶を飲もうとやってきます。
が、追い返されてしまいます。
素直に謝って帰っていくのですが…

ねずみはしつこくいろんなところに隠れて出てくるんです。
ページをめくるたびにねずみが隠れているところを当てっこするのも
おもしろくて盛り上がります。

くまは根負けして一緒にお茶を飲んだりおしゃべりをしたりして
過ごすことになるんですが、最初いやがっていたくまは
ねずみと過ごすうちにだんだんたのしくなってきます。

「おいらさかだちができるんだよ」とクマが逆立ちしたり、
おかわりのお茶をそそいだりするくまもかわいいです。
ねずみが帰ろうとするとき「いかないで!」と引き止めるほどね。

クマの表情の変化はこちらまでほんわかした
あたたかい気持ちにさせてくれます。
私もこんなたのしいお茶会がしたくなりました。
( by hina )

ダチョウの卵 エミューの卵?

研究所には、いっきゅうハカセの持ち物がいろいろ出てきます。
教材開発であたらしいものもどんどん増えてきたので、研究所のメンバーで秋の片付けをしていると、おもしろいものがたくさん出てきます。
その一つがこれです。

ダチョウの卵

「ハカセ、ダチョウの卵が出てきました」
「あ、これ、エミューの卵だとおもうけど」
「ハカセ、調べてみると、エミューの卵は色がついていて、これはダチョウの卵だと思います」
「あれぇ、いろいろもらって食べたのは覚えているけどなぁ。
しかも友人から、エミューのたまごだって言われてもらったんだけどなぁ・・・」
「え〜、食べたんですか?」
「うん、学校で先生達みんなに料理してあげた。
あの頃はたしか土曜日が隔週で学校でさ、
その土曜の昼食に卵焼き作ってあげたらみんな喜んでくれたよ」
「へぇ〜、どんな味なんですか?」
「ふわふわして美味しかった。
上に両方から穴あけて、一方にストロー差し込んで、
ふ〜って空気を吹き込んだら反対側から出てきてさ。
もうこれがフライパン何回分よ、ってくらいたくさんあった」

ということで、ハカセの持ち物、エピソードとともにどんどんいろいろ出てきそうです。

「学力」という言葉と「たのしい教育」 教育法規から見る①

学校にいると、その言葉を聞いたり見たりしない日はないくらい重視されているのが「学力」という言葉です。
もちろん教員採用試験でも必ず狙われる重要キーワードです。

質問1
日本の最も基本となる法律が「日本国憲法」です。
ではその「日本国憲法」に「学力」という言葉は使われているでしょうか?

いいえ使われていません。

日本国憲法
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S21/S21KE000.html

質問2
教育に関わる最も基本となる法律はなんでしょう?

「教育基本法」です。
では、「教育基本法」に「学力」という言葉は使われているでしょうか。
予想 ア 使われている  イ 使われていない

使われているとしたら、どのような文脈で使われていると思いますか?
たとえば「教師は児童生徒の学力を高めなくてはならない」というような文脈として使われている、など

教育基本法に「学力」という言葉は全く出てきません
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H18/H18HO120.html

教育の目的は
「人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない」
と定めています。

教育の目標でも「学力を高めよう」という表現ではなく
「幅広い知識と教養を身につけ、真理を求める態度を養い・・・」とあります。
原文で確認してみてください。

原文
(教育の目的)
第一条  教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。

(教育の目標)
第二条  教育は、その目的を実現するため、学問の自由を尊重しつつ、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。
一  幅広い知識と教養を身に付け、真理を求める態度を養い、豊かな情操と道徳心を培うとともに、健やかな身体を養うこと。
二  個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神を養うとともに、職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと。
三  正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を重んずるとともに、公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。
四  生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度を養うこと。
五  伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。

 この赤にした部分はわたしの気に入りのことばです。

教育基本法に「学力」という言葉は出て来ない。
では「学力」という言葉はどこにでてくるのでしょうか?
続けましょう。

教育基本法の次に重要な法令が「学校教育法」です。

質問3
「学校基本法」に「学力」という言葉は使われているでしょうか。
予想 ア 使われている  イ 使われていない
使われているとしたら、どういう文脈で使われているのでしょう?
たとえば「教師は児童生徒の学力を高めなくてはならない」というような文脈として使われている、など

「学力」という言葉は「学校教育法」でやっと登場します。
「学校教育法」http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S22/S22HO026.html

しかしその使われ方は、「学力を高める」というような文脈ではありません。
「高校には中学卒業に準ずる学力があると認められる者が入学できますよ」という文脈です。
原文はこうです。

第五十七条

「高等学校に入学することのできる者は、中学校若しくはこれに準ずる学校を卒業した者若しくは中等教育学校の前期課程を修了した者又は文部科学大臣の定めるところにより、これと同等以上の学力があると認められた者とする」

 

たとえば、義務教育では
第十六条保護者(子に対して親権を行う者(親権を行う者のないときは、未成年後見人)をいう。以下同じ。)は、次条に定めるところにより、子に九年の普通教育を受けさせる義務を負う。
とあるのです。

では、学力を高めるというような表現に近い文章はみられないのでしょうか?
どう思いますか?

予想  ア.そういう文章はみられない  イ.近い文章がある

原文を書きぬきます。
下線斜体は私が記しました。

第二十一条  義務教育として行われる普通教育は、教育基本法 (平成十八年法律第百二十号)第五条第二項 に規定する目的を実現するため、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。
一  学校内外における社会的活動を促進し、自主、自律及び協同の精神、規範意識、公正な判断力並びに公共の精神に基づき主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。
二  学校内外における自然体験活動を促進し、生命及び自然を尊重する精神並びに環境の保全に寄与する態度を養うこと。
三  我が国と郷土の現状と歴史について、正しい理解に導き、伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する態度を養うとともに、進んで外国の文化の理解を通じて、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。
四  家族と家庭の役割、生活に必要な衣、食、住、情報、産業その他の事項について基礎的な理解と技能を養うこと。
五  読書に親しませ、生活に必要な国語を正しく理解し、使用する基礎的な能力を養うこと。
六  生活に必要な数量的な関係を正しく理解し、処理する基礎的な能力を養うこと。
七  生活にかかわる自然現象について、観察及び実験を通じて、科学的に理解し、処理する基礎的な能力を養うこと。
八  健康、安全で幸福な生活のために必要な習慣を養うとともに、運動を通じて体力を養い、心身の調和的発達を図ること。
九  生活を明るく豊かにする音楽、美術、文芸その他の芸術について基礎的な理解と技能を養うこと。
十  職業についての基礎的な知識と技能、勤労を重んずる態度及び個性に応じて将来の進路を選択する能力を養うこと。

国語算数理科社会体育音楽図工に関わる学力的な表現は全て「基礎的な力を育てる」となっています。

「学力を高める」という趣旨の表現ではなく「基礎的な能力・理解・技能を養う」ということです。

ではいったい「学力を高めよう」というのはどういう法律を元にしているのでしょう?

受験生の皆さんは、そういう意識で「教育法規」を学ぶということも大切です。
たのしみですね(^^
がんばっていきましょう。
            いっきゅう