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宮崎駿のエピソード/片渕須直〈終わらない物語/フリースタイル刊〉

  片渕須直さんは爪に火をともす様な暮らしの中で世界的名作「この世界の片隅に」を生み出したアニメ監督で、私にとって作家 堀田善衛(ほったよしえ)の様に背筋を伸ばして向かい合う人物です。

 

 最近、片渕さんの「終わらない物語」、フリースタイル社から出版されている本を手にしています。

 分厚いので、片渕須直さんの映画人生をたっぷり味わえます、アニメ好きにもおすすめです。

 この中に片渕須直さんが大学の頃、宮崎駿が特別講師で来てくれた時のエピソードが語られていました。

 宮崎駿のその時の姿が目の前に浮かんできます、その部分を切り取って紹介しましょう。

 1980年の当時、映画学科映像コースの池田ゼミ2年生は、男3、女47人位だったはずだ。

 学外から人を呼ぶと言うことで、他の学年にも声をかけて大きめの教室を用意していたのだが、いざ宮崎さんが来る当日になってみると、その大きめの教室が結構満席になってしまった。どうもどこかで話が広まったらしく学外からも人が入ってきているようだった。

 その存在を知るようになって2年目にしてご本人に初めてお目にかかった宮崎さんは、まだ30代だったはずで、ワイシャツにセーターと言う姿は学生とあまり変わらず、なんだか我々の親類のお兄さんが来たみたいな感じだった。

 宮崎さんはまだ人前に出慣れていなかったようで、映写スクリーン前で、チェリーに100円ライターで火をつけようとして、禁煙の表示が出ていることに気づいて慌てて黒板でもみ消し、またいつの間にかタバコに火をつけて吸っていたり、非常に緊張しておられた。

 いっきゅう付記:
 「チェリー」はタバコの銘柄の名前

 テレコムのレイアウト用紙に話すべきことをメモして持参されていて、それをもとに話された中身は
ツアーのは旅行案内の写真に紹介された通りの風景ではない。写真とは適宜フレームで切り取ったものだ」
と言うような話だった。

〈黒板でタバコをもみ消して、それでも気づいたらまた吸っていた〉という下りに、私は笑ってしまいました。

 本体2200円+税という価格は映画と飲み物&ポップコーンくらいですから、片渕さんが気になる人にはおすすめです。

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