溶ける量の たのしい不思議(2)理科の問題・採用試験の問題を解く

  前回の「溶ける量のたのしい不思議」の原子論的見方、つまり科学的な見方で実際の理科の問題(教員採用試験・高校入試レベル)を解いてみましょう。「科学、特に化学が大の苦手です」という方からの質問内容です。

 みなさんも一緒に考えてみませんか。

問題 
以下の物質の中で、60℃で溶けていた物質を20℃に下げた時、結晶として出てくる量が最も少ない物質は何か?

たのしい溶解問題

 

考え方
[硝酸カリウム]
 グラフを見ると、硝酸カリウムは60℃の時110g 近く溶けています。それが20℃になる30gくらいしか溶けません。
 とすると、溶けきれない80gは結晶として見える形で現れます。
 硝酸カリウムの結晶は針の様な形をしているので、それがどんどん重なっていく様に見えます。

たのしい溶解 硝酸カリウム
[ミョウバン]
 ミョウバンは60℃でほぼ60g、20℃では10gくらいしか溶けませんから、50gくらい結晶として出てきます。硝酸カリウムが30gほどでしたから、かなりの量です。
 ミョウバンの結晶は正八面体です。糸を垂らして結晶をつくると、正八面体の宝石の様な結晶がどんどん大きくなっていくので、自由研究などでも定番のものの一つです。コップをそのままにしておくとこんな感じで結晶が見えてきます。

たのしい溶解 ミョウバンの結晶

 この様な形でグラフを読み取っていくと、食塩が最も少ないことがわかると思います。⇦答え

 はじめはまどろこしい感じがするかもしれませんが、一回はこうやって丁寧に考えて解いてみてください。
 そのうちに「グラフのカーブがゆるやかなものだ」ということもイメージできると思います。だからと言って、子ども達に「ほら、カーブがゆるやかな方が答えなのよ」という様な教え方をすると、苦手な子や嫌いな子は、ますます・・・、ということにもなりかねません。

 

  教員採用試験の合格を目指して方達向けに、少し関連することを書きましょう。

=食塩は塩化ナトリウムか?=

 

「〈食塩〉は科学的には〈塩化ナトリウム〉といいます」
という様に説明されることもあるので、混同してしまう人が多いのですが、化学的にいうと「塩化ナトリウム」という場合は、その純粋な物質です。「食塩」という場合はカリウム、マグネシウムなど、他のものも混ざった混合物です。
 ですから厳密には違うのですけど、食塩の主成分(そのほとんど)は「塩化ナトリウム(NaCl)」なので、「ほぼ同じだ」という様に扱うこともある、ということで理解してください。

 

=アルカリ性物質と中性物質とを中和させてできるものは食塩か?=

 違います。
 中和させてできる物質を「塩」と書きますが「しお」とは読まず「えん」と呼びます。実にまぎらわしいですね。日本語を少し進化させて別な名称にした方がよいと思う一つです。
 学校では酸性物質の代表として「塩酸」を使い、アルカリ性物質の代表として「水酸化ナトリウム」を使うので、結果として〈塩化ナトリウム〉ができます。つまり食塩の主成分なので、当然舐めると塩の味がするわけです。今では危険だということでなめされることはしませんが、わたしは何度も舐めたことがあります。
 酸性の〈硫酸〉とアルカリ性の〈水酸化バリウム〉をちょうどよい割合で中和させると〈硫酸バリウム〉という「塩(えん)」ができます。これは食塩とはぜんぜん違う物質ですね。胃の検査でX線撮影する時に、苦しい思いをして「バリウム」を飲んだ人もいると思いますが、あれです。

 「塩(えん)」といってもいろいろあるのです。ですから、「酸性とアルカリ性を混ぜて中和させると〈食塩〉ができる」というのは間違いです。

こちらの「いいね」クリックで〈たのしい教育〉を広げませんか ⇨ いいねクリック=人気ブログ!-

溶ける量の たのしい不思議(1)

 この宇宙はすべて原子・分子の世界です。お砂糖も塩も水も空気も、原子・分子でてきています。科学の歴史は原子論の歴史であるということもできます。科学は、この世界が原子・分子の世界である、ということを発見し、その原子論の元でいろいろなことをイメージできる様になってから、どんどん発展していきました。最近わたしのところに「いっきゅう先生、科学が苦手で特に化学が意味不明で、高校の授業が苦痛です」というお話がありました。今日はその方を中心に化学が苦手で苦手で、という方達向けの、原子論を基にしたお話です。一般の方達にも読んでいただける内容になると思います。

 さて、ここにAB二つのコップがあって同じ量の水が入っています。Aのコップに砂糖をBのコップに塩を入れてかき混ぜます。同じ量の水なら、塩も砂糖も同じ量とけるのでしょうか? それともどちらかが多く溶ける、ということがあるのでしょうか?

たのしい原子論予想
 ア.塩がたくさん溶ける
 イ.砂糖がたくさん溶ける
 ウ.ほぼ同じくらい溶ける
 エ.ぴったり同じ量溶ける

どうしてそう予想しましたか?

 

==== 実験すると ====

簡単に家で実験できますから、やってみましょう。
砂糖がはるかにたくさん溶けます。たとえば25度くらいの水なら砂糖は塩の4倍くらい多く溶けます。
実は、物質が水にいくら(何グラム)溶けるかし正確にわかっています。

 表とグラフを見ていただきたいのですが、その前の予備知識として二つ。 
1) 砂糖を科学的には「ショ糖」と呼んでいます。砂糖というと「砂状の糖」という意味になりますから、ショ糖というのは科学的・化学的な成分を意味した言葉だと思ってください。
2) 塩は科学的には「塩化ナトリウム」といいます。書くと長いので「NaCl」という書き方をすることがよくあります。

 ではこの表とグラフを見てください。表にはいろいろな物質が書き込まれていましたが、砂糖・ショ糖と塩・塩化ナトリウム(NaCl)だけ切り取ってみました。少数第二位までで止まっていますが、詳しく書けばもっと長い数字になります。しかし、これくらいの数字でほぼ、他の物質との違いがわかるので、長くても第二位くらいでおさめている表が多いのです。 たのしい化学2 そのいろいろな物質が溶ける量をグラフにしたものが下です。砂糖・ショ糖は黒で、塩・塩化ナトリウム(NaCl)は青で描かれています。

たのしい化学 たとえば〈20度Cの水が100g〉あれば、砂糖・ショ糖は197.62g 溶けます。これが、アメリカではそうだけど日本では196gだなんていうことはありません。
 実は物質が水に溶ける量は〈気圧〉も影響するのですが、それはとても小さいので、一般に表にすることはありません。
 塩・塩化ナトリウム(NaCl)は35.83g溶けるのです。

 ここのxy二つの物質があります。
 xは砂状で、yは2-3mmくらいの四角い粒で、見た目が違います。
 その二つを40℃の水100グラムに入れて溶かしたところ、どちらも36.33g溶けました。すると、このxとyは同じ物質だといって間違いありません。しかも、上の表から、見た目の大きは違っていても、それは塩・塩化ナトリウム(NaCl)だと言って100パーセント間違いありません。

 それが科学です。
 実際に科学者たちは、目の前にある物質が何であるのかを特定するために、この溶解度をよく利用するのです。
 純粋な○○なのか、混ざり物があるのかも、この溶解度を調べればわかります。

 では、この性質を利用して、実際のテスト問題を解いてみましょう。(2)に続く。

こちらの「いいね」クリックで〈たのしい教育〉を広げませんか⇨いいねクリック=人気ブログ!-

ヨシタケシンスケ「このあとどうしちゃおう」袋/この袋ならお金を出しても欲しい!

 研究所でものづくりが大好きなA先生が、xヨシタケシンスケの絵本「このあと どうしちゃおう」の表紙を利用して手さげ袋を作ってくれました。
 これはすばらしい!
 わたしはヨシタケシンスケが大好きです。
 おもわず「さぁ、オークション。500円から!」と言ってしまいました。
 もちろんわたしのものではない上に、もったいなくて売る気はないけど。 スクリーンショット 2017-01-14 22.53.44 それにしても見事な出来です。
 中に入れた品物の重量にもしっかりと耐えてくれます。
 たのしい教育Cafeで、気に入りの絵本の表紙を持って来て、みんなでオリジナル手さげ袋を作るのもいいですね。
 ずいぶん以前に、サークルでカレンダーや包み紙で、袋作りをたのしみましたが、絵本のカバーで作るというのはかなりうれしいアイディアです。

 さぁ、商品開発したくなった企業のみなさん。
 たのしい教育研究所へ どうぞ(^-^

たのしいことがどんどん広がる
たのしい教育研究所です

こちらの「いいね」クリックで〈たのしい教育〉を広げませんか ➡︎ いいねクリック=人気ブログ!=

たのしい教育を学ぶなら「たのしい教育メールマガジン」

 毎週金曜日は「たのしい教育メールマガジン」の発行日です。最新号は236号を数えます。「たのしい教育」を学ぶなら、まずこのサイト、そしてその次は〈たのしい教育メールマガジン〉をお勧めします。

たのしい教育を学ぶならメールマガジン

 

 最新号の主要メニューは「分子ゴマの作り方とコマ回し大会のたのしみ方」「おすすめ映画 フォレスト・生命の森」そして私が16年くらい前に書いた「この道がたのしくてならない」です。

 さっそくいろいろな感想が届いています。特に「この道がたのしくてならない」への高評価が多い様です。
 かつて板倉聖宣が私に書いてくれたメッセージ

真理への道は長い…
それはいばらの道であるかのように言う人が少なくないが
       私にはとてもたのしい道のように思えてならない。

を織り込みながら、私がかつて「何をやるにも仮説・実験」という言葉を英訳する時の徳島の仁木先生との交流を中心に書いた文章です。

たのしい教育を学ぶならメールマガジン2 今でも仁木先生とは繋がっています。校長先生を退職する頃、たのしい教育研究所の応援にも名乗りを上げてくれ、リーフにも名前を刻んでくれています。四国で直接お会いして、何時間も語りあったこともありました。仮説実験授業では、全国的に目立った活動をしている方達もたくさんいます。しかし自分の足元で地道に活動している方もいます。そういう人たちが、たのしい教育を守り育ててきた力は、実はとても大きなものがあるのだと思っています。

 数年後、沖縄が仮説実験授業のメッカだと言われることも届かぬ夢ではないでしょう。
 夢は人を豊かにしてくれます。 たのしく元気にこれからも活動していきたいと思っています。

こちらの「いいね」クリックで〈たのしい教育〉を広げませんか⇨いいねクリック=人気ブログ!-