クランボルツのキャリア教育理論〈偶発性学習理論〉2

 画期的な理論であるクランボルツのキャリア教育理論〈偶発性学習理論ーHappenstance Learning Theory〉のことを数回前に紹介したところ、いろいろな反響が届いています。日本では初期の名前である「計画的偶発性理論ーPlanned Happenstance theory」が有名なので、それを聞いたことのある人が多いかもしれませんけど、どちらの名称に関しても私の周りでは「はじめて聞きました」という人たちがほとんどです。

 加えてメルマガにさらに詳しく紹介したところ、さらに反響が広がっています。

 いろいろなメールやお話などを見て聞きながら、注意しなくてはいけないと感じているのは「夢や目標を持つことは意味がないとか悪いという話をしているのではない」ということです。
 クランボルツは「成功したビジネスマン数百人の調査によれば、その80%の人たちは想定外の偶然に成功に導かれたと語ってくれている。その偶発性を〈たまたま〉ということで終わらせず、積極的に自分のキャリアに活かせる人たちを育てよう」というのがクランボルツの主張です。※高橋俊介『キャリア論』東洋経済、2003年
「あまり目標に固執してばかりいると、その偶発性のチャンスを逃してしまう」ということも心しておかなくてはいけません。

 クランボルツは JOURNAL OF COUNSELING & DEVELOPMENT ï SPRING 1 9 9 9  VOLUME 7 7 117 の中でこう語っています。

小さな子どもは好奇心が旺盛です。
景色や音、手触りなどを通して好奇心は子どもに世界を広げます。
しかし子どもが物に手を伸ばすたびに、親が「あなたの目標は何?」と問い続けたらどうなるでしょう?

 子どもが野球部に入ったら〈甲子園〉までやめさせないくらいの勢いの保護者の方たちを何人も知っています。そういう熱意ある人たちが子育てをしていると「キミの目標は何なんだい?」と問うと「甲子園です」と子どもが答えるようにもなるでしょう。

 〈目標は大切〉そして〈偶然性も大切〉だというのは矛盾することではありません。そのことは大人が一度しっかり考えておかなくてはいけないことでしょう。たのしい教育全力疾走RIDE(たのしい教育研究所)、みなさんの応援が元気の源です。一緒にたのしく賢く明るい未来を育てましょう。このクリックで〈応援〉の一票が入ります!

 

たのしい学力向上 1/2×1/3が1/6になることをいろいろな方法で説明してください(たのしい算数で賢くなる)

 小学校の頃、たのしい教育研究所で連続授業を受けたこどもたちが全員現役でいろいろな大学に合格してあいさつに来てくれたことを数回前に書きました。「どういう授業をしていたのですか」という質問が届いているのですけど、〈原子論〉や〈たのしい漢字学習〉などの他に算数で「〈1/2×1/3=1/6〉をいろいろな方法で説明してください」という授業をしたことを覚えています。私が小学校でやっていた授業なので思い違いがあるかもしれませんけど、算数の力がグッと高まりますから、みなさんも一緒に考えてみませんか。
 計算の仕方ではありません、つまり〈分母は分母にかけて分子は分子にかけるからだよ〉というのは答えではありませんよ。

 この問題を出したきっかけは、東京の某有名大学の入試で「〈1/2×1/3=1/6を計算ではなく図で描いて説明しなさい〉という問題を出したところ、他の難しい計算処理はできている受験生の多くが答えることができなかった」という話を聞いてからです。
 日本のトップクラスの大学を目指す人たちも〈数処理〉の基本概念ではなく、受験テクニックや計策テクニックなど、記憶を主にして入試を突破していくのだということへの大いなる疑問を出発点にしています。

 こどもたちには「いろいろな方法で説明してください」と投げかけましたが、ここでは図によって説明していく方法を紹介したいと思います。

 まず、自分自身で考えてみてください。

 保護者の皆さんは子どもが「ねぇお母さん、どうして ½✕⅓は1/6になるの?」と質問してきたと想定して考えてみましょう。

 さぁ、どうしてでしょう?

 あなたの考え!

 

たのしい算数の計算(かけ算の本質)

 〈かけ算〉とは何でしょう?

 たとえば〈✕2〉というのは、あるものが2セットになることです。

〈✕3〉というのは、あるものが3セットになることです。
 

では〈✕ ½〉はどういうことでしょう?
 「2つに分けた1つ分」にすることです。

〈✕ ⅓〉はどういうことでしょう?
 「3つに分けた1つ分」にすることです。

 

では〈 ½✕⅓〉というのはどういうことなのか?

 自分で図を描いてみませんか!

 

1/2 ✕1/3は「〈2つに分けた1つ分〉を〈3つに分けた1つ分〉にすること」です、こうです。
 まず一つのかたまり(全体の正方形)をタテに1/2にします、左半分の緑のバー で表しています。

 その緑の部分今度はをヨコ(タテ割りが続くより見やすくなります)に3つに分けてみましょう、その一つ分が〈1/2 ✕1/3〉の答えです。
 ピースを数えてみてください、一つのかたまりを6つに分けた1つ分になっていますね。※正方形の左下、濃くなった部分です
 つまり〈1/2 ✕1/3〉は〈1/6〉ということです。

 学校でこういうレッスンはほとんどやっていないので、塾などでいい点数をとっているこどもたちも、なかなかできません。けれど、丁寧にそれを教えていくうちに「そうか、わかった」と喜んでくれます。

 練習してみましょう。

a.1/2✕1/4 を図で説明して答えを出してください(答は1/8)

b. 1/3×1/4 を図で説明して答えを出してください(答は1/12)

c. 〈3×1/2〉はどうして3/2になるのか、図で説明してください

〈数量のイメージ〉を〈図で描きながら理解〉できるようになると単に〈計算方法〉で進めていく人たちより遥かに算数・数学のちからが高まります、私がすでに何度も実験済みです。

 なれていくと、1/2➗1/3 も図で答えを導き出せるようになります。いつかこのサイトで説明してみましょうね。

 学校では計算が得意な子は「頭がいい」と言われがちです。しかし〈図で描けるこどもたち〉のほうがずっと賢いのです。これからの本質的な学力向上に向けた重要なベクトルです。

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たのしい教育を〈原理〉としてみる−クランボルツの〈偶発性学習理論-Happenstance Learning theory /旧:計画的偶発性理論-Planned Happenstance theory〉

 計画的偶発性理論(Planned Happenstance theory)という名前を聞いたことがあるでしょうか、心理学者クランボルツが提唱した理論です。のちに〈Happenstance Learning Theory〉と名称を変えています、和訳がまだ広まっていないので〈偶発性学習理論〉と名付けておきます。「クランボルツのキャリア理論」としておいてもよいでしょう。

 沖縄県からの依頼で県内の親子向けにキャリア教育の授業を引き受けたり、予算を組んでもらって県内の学校向けのキャリア教育副読本を作成している時入手した本や資料の中で「まさに〈たのしい教育〉だ」と感じていたのが計画的偶発性理論です。

 板倉聖宣が「たのしい授業」を提唱して後、松本キミ子(故人)さんのキミ子方式と出逢い『楽しい授業』として広く紹介した様に、計画的偶発性理論はキャリア教育に関わる重要な理論で〈たのしい教育〉の原理から派生する理論だとみることができます、クランボルツの方が有名ですけど。
 とはいえ、有名さの大小が理論的順位を決めるのではありません。より原理的なものがたのしい教育なのです。

0.現在の教育は、その子の目標や夢に向かって努力し、それを成し遂げることを想定している

1.しかし、成功した人々の人生をたどってみると、その多くは〈偶然性〉に左右されていた。すてきな英語の先生に出会ったから英語が好きになった人がいたり、私の様に中学で学ぶと同時に英語が大嫌いになったり、趣味で偶然出会った人のアドバイスでその職業についたり

2.そういう偶然性によるものを〈縁〉とか〈ラッキーなこと〉にするのではなく、自然に任せるのではなく積極的に活かせるような教育が大切である。たまたま出会ったチャンスを自分の人生にプラスに活かせるのはどういう人間か?

(1)「好奇心」 ――行動を狭く限定せずいろいろなものに興味関心をもつ力
(2)「持続性」 ―― すぐに投げ出さず一定期間は継続して結果をみることができる力
(3)「楽観性」 ―― どうせダメだと考えずポジティブに捉える力
(4)「柔軟性」 ―― ある考え方等に固執せず起こるできごとや状況に柔軟に対応する力
(5)「冒険心」 ―― ある程度のリスクがあっても挑戦できる力

こういう力をもったこどもたちをそだてようではないか。

 そういう理論です。

 まさに〈たのしい教育〉が提唱する「自分の興味関心を大切にして、いろいろな予想を立て挑戦するこどもたち先生たち大人たち」を育てる活動です。〈たのしい教育〉の「キャリア教育分野」だといってもよいでしょう。

 大きな報告ものが一区切りついたので、週一度のメールマガジンにさらに詳しくまとめはじめています。

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敬愛する カヌーイスト〈野田知佑〉生を閉じる

 私の愛読する雑誌Be−PALでカヌー旅を連載していた頃から大好きだった野田知佑さんが他界した、2022年3月27日に生を閉じ、広く告知されたのは私が年度まとめの〆切に追われて夜中まで数字とにらめっこしていた30日のこと・・・

 これは在りし日の野田知佑とカヌー犬ガクの姿。

 84歳だったんだな。

 野田知佑さんのことはこのサイトにも以前、とりあげたことがあります。
 先月の〈たのしい教育メールマガジン〉の「発送法の章」にはさらに詳しく書きました、書き抜いてみましょう。

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  たのしい教育の発想法
    反論の技法
     いっきゅう2022.02.08
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いっきゅう
 公式サイトに野田知佑が語った「力のない奴に限って横文字を使いたがる」という話の評判がよく、いくつか便りをいただきました。その一つから、私の記憶していたその話の出展は「文芸春秋社刊 本日順風(廃刊)」だとわかりました、ありがとうございます。
 読者からの質問に野田知佑が答えるという形式でまとめられた本です。さっそく読み直して、久しぶりに野田節の爽快な感覚を味わっています。
 その中から一つ反論の例として取り上げさせてください。
 野田知佑はカヌーで自然を味わうことを生きがいとしていて、環境保護についてもハッキリ物言いする人物です、ダム建設反対運動には積極的に関わっています。
 それに対してある読者からこういう批判が届きました。

—--—
果たし状
 野田知佑に物申す。
 どうしてなんでもかんでもダムに反対するのだ。
 俺はダム作って飯を食っている、妻子を養っている。
 文句あるなら一対一で勝負するから俺をねじ伏せてみろ。
 宮城県岡本直義28歳建設業
—--—

 

いっきゅう
 さてみなさんならどう答えるでしょう。
 ダム建設に賛成か反対かによって違うとは思うのですけど、建設反対の野田知佑はどう答えたか?
 反論の仕方の流れという視点でごらんいただこうと思います。
 ところで〈たの研〉は「批判ではなく提案をする組織」だからなのか、これまで批判らしい批判を受けたことがありません。
 とはいえいわれのない批判が来た時、ケンカは避けるとしても、しっかり物申さなくてはいけない場合もあるでしょう。そういう時に冷静に整えて相手に伝えていくことになるでしょう。
 対して野田さんは血の気が多く、相手がケンカモードで来ていると察して、後半には荒い言葉づかいになっています。それはまぁ野田さん一流の物書き技法だと思って、真似はしないようにするとよいでしょう。

 

—-

野田知佑
 現在、日本国中で建設中のダム、または建設を計画しているダムは500ある。そのうち本当に必要なダムがいくつあるのか?
 建設庁や県の土木課はいつもの例でもっともらしい理由を挙げるだろう。
曰く
1.洪水防止
2.農地への灌漑用水を得るため
3.発電のため
4.飲料水を得るため
——
 と、まずダム建設としてあげられている理由を列記しています。その後一つ一つについて反論していきます。

—-

 

野田知佑
 まず1について。
 現在、日本の洪水の恐れのある川でダムを持たない川はない。ダムを作るべき川にはすでにみなダムを作ってしまっている。少なくとも現在建設中および将来作られるダムに関して言えば、その建設目的は治水とは別のものだ。例えば建設庁か県庁か市町村役場と土建業界と建設族の政治家との癒着、土建業者のための仕事を作るためのダムだ。治水のためなら50年で埋まってしまうダムより、山に木を植える方がより効果がある。
2の農業用水についていえば、たいていそこの農業は後継者がいない、減反している。つまり農業用水を使う見込みのないところである。
3,4、電力会社のパンフレットにはそう書いていないが、現在わが国では電力は余っているのだ。ごくわずかの地区を除いて水も余っている。
 ちょっと図書館に行って行政側ではなく民間の学識者の書いた本を読んでいただきたい。水不足、電力不足の話は作り物だ、ウソなのである。なぜそうするのかといえば、ダムや原子炉などの巨大なものを作りたいからだ。
 日本には現在、適正数の約三倍の土建業者があるといわれる。普通なら食っていけないはずの土建業者が食っていけるのは、工事をつくることによって利益を得る政治家、官僚が多いからだ。
 そのことは金丸信の事件によって明らかになった。

 

いっきゅう

 ここで終わるわけではありません、さらに伝えたいことに進みます。


野田知佑
 さて投稿の件に移る。
 ボクは全てのダムに反対しているのではない。作られてしかるべきダムもあったのだろう、過去には。
 しかしここ二十年間に作られたダムで本当に必要なものがあるなら、ボクはぜひ知りたい、教えてもらいたいくらいだ。
 住民や市民の声がどれだけダム計画、ダム建設の時に吸い上げられ反映されているか。全てお上の一方的な決定によるものではないか。
 先進国の例をみると住民数百人、数千人の反対でダム計画は潰されている。
 日本のダム建設のゆき先を見て日本は民主国家ではない、ひどい土建屋独裁国家だと思っている人は多い。
 ダム建設で食っているのなら、マンガばかり読んでいないで少しは日本のダム問題について勉強しなさい、それから文句を言え。
——
 

私としてはここからが爽快でした。

 


野田知佑
 もう一つ、この種の問題とキミが妻子を養っている話はぜんぜん関係がない。
 自分の仕事の話に妻子を持ち込むのは卑怯である、公私混同してはいけない。
 山賊が「オレは人を殺してメシを食っている、それで妻子を養っている」言って自分の仕事を正当化しようとしたら、キミなら何というかね。

 

いっきゅう
 批判を正面から受け立つことは疲れるので軽く受け流すことが楽に生きるコツでしょう。私は武道家なので正面から受けて立つことも苦手ではないのですけど、そういうことは避ける様にしています。
 勝敗に関わらず負の荷物が増えていくからです。
 批判に受けて立つ立たないは別にして、受けて立つと〈負けるに決まっている〉というのは残念なことです。特に自分が大切にしているものへの批判を跳ね返す力は持っておく必要があるでしょう。
 その意味でも、批判に対して受けて立つ人の論理組み立てを見ていくことは悪くないと思うのですけど、どうでしょうか。

 

 

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