寒い風の中でも熱い想いを

〈あっという間の一年〉という使い古された言葉があるけれど、たとえば今日という日さえあっという間に感じることはありません。ほんとうにたくさんのことをしてきました、それが365日、とても密度の濃い一年でした。

 たのしさという方向に伸びていくたのしい教育研究所(RIDE)のメンバーはおかげさまで今年も元気にたくさんの活動を進めることができました。
 暴れまわるコロナも、私たちのたのしさを妨げることはありませんでした。

 RIDEの〈たのしさ〉は、自分一人だけがたのしいと感じる様なものではなく、社会的なものです。いろいろな人たちがたのしいと感じるものごと、そしていろいろな人が周りの人たちの笑顔を見ることによってたのしくなっていくもの、そういうものが対象です。感染症対策もたのしい教育の重要な対象です。そうやって日々、いろいろな活動を重ねてきた一年でした。

 やむなくサイトをストップして引っ越し作業に2~3ヶ月費やしましたけど、こうやってまたみなさんに気軽に読んでいただけることも嬉しい一つです。

 2021年は2020年の続きということではなく、新たな展開を考えつつたのしく活動していきたいと考えています、ご期待ください。

 さてたのしい教育研究所(RIDE)の第三研究所に掲げていた、いろいろな人達の2020年の願いを寒い夜、雨と雨の合間に〈原子分子〉にして夜空に舞上げ灰を土のなかにしみたらせました。

 全て叶うわけではありませんけど、だいたい7割以上の確率で願いは成就しています。

 炎を見ていると、寒い冬の中でも熱いものがこみあげてきます。

 今年もお世話になりました。
 2021年も応援よろしくお願いいたします。

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はやぶさ2の快挙

 私いっきゅうは石マニアで、石や砂を〈地球のかけら〉とよんで大切にしています。今まで旅したところキャンプしたところの石はたいてい大切に保管しています。またいろいろな人たちが石をプレゼントしてくれるので、コレクションはかなりたくさんあります。

 地球外から来た石もあるんですよ、そう〈隕石〉です。隕石コレクションも20以上にのぼると思います。
 RIDEの廊下に展示してありますから、興味のある方は自分で手にしてみるとよいですよ。

 さてさて〈はやぶさ2〉の快挙が続いています。2014年12月3日に地球から飛び立って〈小惑星りゅうぐう〉に降り立ち、収集した岩石をカプセルに納めて今月2020年12月5日にそのカプセルを地球に送り届けてくれました。

 前回の〈はやぶさ〉はこな粒ほどの岩石サンプルだったのですけど、その〈はやぶさ〉での実績が功を奏して〈はやぶさ2〉では小石くらいのサンプルがゴロゴロ入ったカプセルを届けてくれました。一個研究所にもらえないかな。

 前回の〈はやぶさ〉はカプセルを届けるとほぼ同時に燃え尽きたのですけど、今回〈はやぶさ2〉はそのまま飛び続け、何と次の小惑星に向かったというのも驚きです。

 経済にしろ政治にしろ暗く重い話が続く日本で、これだけのことができる日本人チームがいることは誇りです。

 ちなみにたのしい教育研究所(RIDE)は「はやぶさプロジェクト」とけっこう関わりがあります。

 RIDE応援団のメンバーには前回・今回とはやぶさチームと強く関わっている的川泰宣先生がいます。わたしはTVと離れた暮らしをしているので直接は観ていないのですけど、今回もテレビに映っていたといいます、観た方から〈元気そうでしたよ〉という嬉しい言葉もありました。

的川泰宣(まとがわやすのり)先生のこと

〈はやぶさ〉チームでカプセル回収をリードした並木道義さんも重要な応援団の一人です。オーストラリアでカプセルを回収した時の話など、ドキドキたのしい話がいっぱいです。コロナがあけたら、いつか少人数で、その時の話をしていただきたいと思っているところです。

応援団 並木道義先生からのメッセージ

〈はやぶさ〉のチームリーダー川口淳一郎さんが沖縄に来てくださった時にはトークの相手を勤めさせていただいたこともありました。

川口淳一郎さんと/はやぶさの魅力を伝える本

 沖縄でのはやぶさのカプセル展示のイベントにもかかわらせてもらったこともありました、とすると沖縄で〈はやぶさプロジェクト〉と最も関わりの大きな集団がたのしい教育研究所(RIDE)かもしれませんね。

 お世話になった方たちに書いた年賀状には「RIDEの2020年は驚いたことにコロナ以前とほとんど同じ元気でたのしい日々でした」と書いたのですけど、2021年は〈はやぶさ2〉を見習って、さらに元気に活動をすすめていきたいと思っています。

 

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古典もたのしむ②/季節のたのしみ

 前回の「古典もたのしむ」についてさっそくいろいろな反響が届いています。いずれ間を置いて書こうと思っていたのですけど〈質問〉も来ているので続けて書かせていただきます。

 「季節のたのしさ」を綴って今の私の心を揺さぶってくれた「枕草子」、それは〈清さん〉という女性が1000年も前に書き残してくれたものでした。

 京都の寒い冬、清さんが「いいよね」と語ったものはあったのか、あったとしたらそれは何か?

 ありました、こうです。

冬はつとめて

〈つとめて〉って何でしょう?

 仕事の〈勤めて〉とは違います、「早朝」という意味です。

 冬はやっぱり〈早朝〉がいい。

 と語っているのです。

 かつて私から学んだAさんから、こういう質問が届きました。

 いっきゅう先生〈春はあけぼの〉で〈冬はつとめて〉というと、どっちも朝のことですよね、どっちが早い時間なんでしょう?

「春は〈太陽の光〉が差し込む時がいい」「冬は朝早い時間がよい」と言っているのです、方や〈光〉方や〈時間〉ですから、早い遅いで比較しているわけではありません。

 それにしても寒い冬なのに、その中でも寒さを感じる〈朝方〉がいいんだよ、っていうのはびっくりですね。

 続く言葉をのせておきます。
 どういう意味か、予想してみることをおすすめします。少しだけ言葉をおぎなっておきました。わからないところは自分で調べてみませんか。別にテストではありません、ゆっくり味わうといいですよ。

  冬はつとめて
  雪の降りたるは
  いふべきにもあらず
  霜のいと白きも
  またさらでもいと寒きに
  火など急ぎおこして
  炭もてわたる(渡る)も
  いとつきずきし(似つかわしい)
  昼になりてぬるく
  ゆるびもてゆけば
  火桶の火も白き灰がにちに
  なりてわろ(悪)し 

「今回の古典もたのしく」は〈しみじみ共感できる〉というテーマで書きました。
古典のたのしみはそれだけではありません。こちらが気づかなかった感性を呼び覚ましてもらう時もあります。ものの理(ことわり)を教えてもらえることもあります。

 みなさんからの反響を元に、また古典のたのしみもつづりたいと思っています。

 

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古典もたのしむ

 たのしい教育研究所(RIDE)の仕事納めは済んだのですけど、後回しにしてきた事務系の仕事はしっかり残っていて、まさに〈残務処理〉の日々です。
 公式サイトはRIDEの日々の活動を中心にお届けしているのですけど、公的な活動は納めたので、それを離れて個人のエッセイ的なものをつづりましょう。
 といってもご心配なく、RIDE代表いっきゅうの人生は〈たのしさ〉の追求がテーマですから、そこから外れることはありません。

 いつかたのしい教育プランにしたいテーマの一つが〈古典〉と呼ばれているジャンルです。この〈古典〉という言葉は早く別なものに変えていく必要があると思います、一般の人たちには「ふるくさいもの、難しいもの」という手垢がついているからです。

 RIDEは批判をする集団ではなくたのしい提案をする組織です。そのためにも「どうして古典が嫌いなのか」を明らかにした上でたのしい提案をする必要があります、その部分から書いていきましょう。

 古典の〈典〉は「重要な書物」というイメージの言葉です。従って〈古くて重要な本〉というのが「古典」という言葉の辞書的な説明です。
 ところが勝手に「これは重要だ」と押し付けられてきた私を含めて多くの人たちにとって、それは困ったことです。
 教育には「押付けるとつまらなくなる」という法則があって、押付けが大きくなると〈つまらなさ〉から〈反感〉へすすんでいきます。

 何しろ古典で使われている言葉そのものが、今は使われてなかったり、今と違うイメージだったりするものですから、「これは大事だ」と押付けられたけれど〈意味不明〉。それが続くとヘトヘトになります。

 多くの国語の先生たちは〈古典のたのしさ〉を伝えるより、〈これは○○何段活用〉という様な文法を、「これなら計算処理的に教えることができる」と感じているからでしょうか、本気で伝えようとするので、もう大変なことになります。
 ガリレオが発見した「ふり子の等時性」の感動的かつ簡単な実験をとりあげて「ふりこのヒモと天井に結びつけた部分の摩擦力の計算」をしている様なものです、ガリレオ自身がそういう授業を見たら嘆き悲しんで研究をやめてしまうのではないかと心配するくらいです。

 古典文法を教えなければ本質を味わえないなんてことはありません、私いっきゅうは古典文法の学習をずっと拒否し続けているのですけど、おそらく国語の先生たちよりずっとその感動を味わっていると思います。

 長くなりそうですから、話をすすめましょう。

 以前も似たことを書いた気がするのですけど、最近の私の定義はこうです。

  いっきゅう辞書「古典」とは

〈時〉の持つ、あるいみ〈残酷〉なまでに荒々しい研磨にも刃にもそぎ落とされることなく、先人が残し守ってきた愛しい書物たち

 古典というのを「たくさんの先人達が今の私たちに残し守ってきた愛しい書物たち」が私の古典のイメージです。私が好きな村上春樹であっても500年後、愛しく読まれるているか怪しいのに、1000年以上読み継がれた語り継がれた愛しいものたちがある。

 たとえば

春は何といっても〈あけがた〉がたまらないよね・・・

と語りかけたエッセイが今もすぐ手元に残っています、枕草子です。

 ものの本には〈執筆1002年〉とあります。でも私は「ほぼ西暦1000年くらい書かれた」と伝える様にしています、覚えやすいでしょう。

 書いた人は「〈清〉少納言」。
 少納言は役職名ですから、名前は〈清〉さん、女性です。
 35~36才の頃執筆したと言われています。

 枕草子を学校で学んだ記憶がありませんか、第一段はこうです。

春はあけぼの。
やうやうしろくなりゆく山ぎは、すこしあかりて、紫だちたる雲のほそくたなびきたる。

春は何といっても夜明けがいいね。
だんだんと白くなっていく山の稜線、少し明るくなって、紫のともった雲が細くのびていくっていうところは何とも言えない。

夏は夜。
月の頃はさらなり、闇もなほ、蛍のおほく飛びちがひたる。
また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光りて行くも、をかし。
雨など降るも、をかし。

夏は〈夜〉がいいね。
月が出ていたらさらにいい。
暗闇でも、蛍がたくさん飛び交ってくれる。
たくさんでなくて一つ二つ、かすかに光っていくのも心動かされる。

質問
枕草子には「春は〈明け方〉、夏は〈夜〉がいい」とあります。
では〈秋〉はどういう時がよいと言っていると思いますか?
予想してみてください。

 あなたの予想。

 秋は〈    〉がいいなぁ!

 

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秋は夕暮れ。
夕日のさして、山の端いと近くなりたるに、烏(からす)の、寝所(ねどころ)へ行くとて、三つ四つ、二つ三つなど、飛び急ぐさへ、あはれなり。
まいて、雁(かり)などのつらねたるが、いと小さく見ゆるは、いとをかし。
日入りはてて、風の音、虫の音など、はた、言ふべきにあらず。

 秋っていえば〈夕暮れ〉がいいね。
 夕日が、光を伸ばしながら山に近づいて行く時、カラスたちは巣に帰ろうと3~4匹、2~3匹と急いでとんでいくところは、心がジーンとなるんだよね。
 雁たちが連なって飛んで、小さくなっていくところを見ていると、さらに心動かされるものだよ。
 日が落ちて、風の音、虫の音なんかがめだってくるのは、言葉にしなくてもいいくらい、いいものだよね。

 どうですか、私がアウトドア派だからか、この清さんという女性が残してくれた文章は、「そうそう、それ良いよね」と深く共感してしまいます。
 1000年も前から、たとえば蛍の飛び交う様に感動していたという文章を綴っていた人がいて、それを1000年もの間、絶やさず残して来た人たちがいる。
 それは感動的なことだと思っています。

 今の私たちと思いを共通できる珠玉の文章たち、古典の中にはそういうものたちがいくつもあります。

 長くなりました、最後にもう一つ予想してみましょう。

 春はあけぼのがいいよね
 夏は夜がいいよ
 秋は何といっても夕暮れだね

 と綴った〈清〉さん。

 冬は何と言っても〈  〉がいい、と言ったでしょうか。
 それとも冬は寒いから、春夏秋で止めておいたのでしょうか。
 執筆したところは京都、冬はとても寒い地です。

 もし冬のたのしさを書いてあったとしたら、何と書いたでしょう。
 書いてなかったとしたら、あなたなら「冬は〈  〉がよいんだよ」と書くでしょうか。

 古典をたのしむのにも〈予想を立てて確かめる〉という過程はとても重要です。

 皆さんの予想を教えてください。

 早く知りたい人は「枕草子 第一段」で検索してみてください、くれぐれも予想を立ててからにしてくださいね。
 その予想は間違っていても、かならず賢くなることができます、たのしさも味わえると思います。

 

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