たのしい教育とそこに集う人/2017年の最後の日に

 たのしい教育研究所には魅力的な人材がたくさんそろっています。不思議だという気持ちもありますし、必然的だという気持ちもあります。たのしい教育研究所に集う人たちを紹介しながら〈たのしい教育と人〉について考えてみたいと思います。一年の最後の日に書きたい大切なことだと思っています。少し長くなると思います、おつきあいください。

 これから紹介する方たちだけが〈魅力的な人たち〉だということではなく、まだまだ語りたい人たちがいる中で、その方たちを代表して紹介させて頂いてということで受け取ってください。

 まずM先生。
 ゲーム、料理、図工、国語、学級指導など多才な技をどんどん紹介してくれる先生です。
ほのぼのニコニコのM先生が登場するとみんなの表情が柔らかくなるのがわかります。〈癒し系〉というのはM先生を形容するためにある様な言葉だと思うほどです。


 A先生は中堅の実力派で若手からもベテランからも信頼されている人気者です。これだけの熱意と才能は他をもって変え難し、です。
 自分でたのしむだけでなく、いくつもたのしい授業プランを開発し、若手への指導もかなりのものです。

 研究所でたっぷり学んで教師になったM先生&A先生。
 誰からも可愛がられる人気者であるのに加えてチャレンジャーです。
 これはたのしい教育Cafeクリスマススペシャルでの司会の様子。トナカイの衣装も披露してくれました。こんな明るい先生たちが学校現場にいるかいないかで雰囲気は大きくかわります。

 

 T先生もたのしい教育研究所で学んだ人物です。
 本務二~三年でありながらかなりの実力派:補充教諭をしていた頃から研究所の講座で講師をつとめるほどで、今もますますそのたのしい腕に磨きがかかってきている途上です。メンタル部分も強く、学校現場で主事、教育センター、管理職へと進んでいける才能も備えています。※下左がT先生:わたしとケーキの場所にこだわっていたのかな?


 ベテラン陣はどうか?
 十分に若手の伸びを支えるだけの人材に満ちています。
 〈ものづくり〉〈読み語り〉〈食べ物プランの開発〉など多才なM先生は全国的にも有名な方です。


 先日開催した「たのしい教育〈黒帯コース〉」で講師を努めたベテランのI先生もいます。


〈たのしい芸術教育〉といったらこの人というほどのO先生もいます。
 自らの作品もどんどん開発しながら、併せて高い指導力を発揮し、その活躍は群を抜いています。いろいろな学校でも講師を勤め、退職して何年も経ちながら、ますます元気に活躍中です。最近ではわたしがつとめていた〈たのしい教育〉のコーディネート役を一部、担ってくれる様になりました。ありがたいことです。※左;白ジャケットがO先生


 ものづくりでは玄人レベルのM先生もいます。現場では私と同じで教務主任を勤めていて、忙しい日々でも、講座やたのCafeではその高い技をいろいろな人たちにたのしく伝えています。この〈たのしく伝える〉ことがM先生の魅力です。※下左;ブルーのシャツがM先生

 もちろんたのしい教育研究所をリードするわたしもますます元気です。
 いろいろなところでの授業だけでなく、教材開発やカウンセリングコースのプログラムも出来上がってきました。教師を退職して全力を〈たのしい教育〉に注ぎ、その日々の重なりと合わせてどんどん活動が充実しています。


 下の写真は、研究所で学んで、来年採用される人たちが写っています。

 この中から学校現場でさらに新たなたのしい魅力的な才能を見せてくれる人たちが出て来ることでしょう。講座などでも活躍しそうな人物もいます。

 これは来年の試験を突破して採用されていく人たちです。自分の笑顔と子ども達、保護者の皆さんの笑顔を育てる人物がたくさんいるでしょう。

 すでに教師として採用された方たちの中にも、たのしい教育研究所でたのしく学び、どんどん魅力的な教師になっていく人物が増えていくことでしょう。

 まだまだ続きますが、しかしここで伝えたいのは〈こういう魅力的な人材がいてこそのたのしい教育〉という話ではありません。

 その逆のことです。

 〈たのしい教育〉はどういう方でも実現できる教育です。
 そこに〈特別の才能〉は要りません。
 特別の道具や高い費用も要りません。
 必要なものは〈子ども達がたのしく学んでいく笑顔を見たい〉という熱意です。
 その熱意が無い、という人は残念ながらたのしい教育研究所に来て頂いても支援できることは何もありません。
しかし熱意のある方なら、たのしい教育研究所でどんどん自分の才能を伸ばし、気づいたら周りの人たちの中でゆっくりと〈愛されるキャラクター〉となっていくでしょう。たのしく学んでいるのにその方向に力が伸びない、ということは有り得ないからです。

 教師には失敗もつきものです。
 多数の子どもたち、保護者の皆さんと深く付き合っていくわけですから、良かれと思ってとった行動がピンボールを弾いた時の様にいろいろな作用と反作用を起こしていくでしょう。
 しかし、そういう中でも〈学ぶ笑顔〉を目指して研究所で学んでいく人たちは、着実に伸びていきます。そしていろいろな人たちから愛され慕われる先生になっていくでしょう。
 下の写真の様に、研究所には先生たちが子どもとたのしく授業している様子がたくさん届きますが、そういったたくさん写真も〈たのしい教育で子ども達と仲良く賢くなっていく〉ことを証明してくれています。


 学校に長年勤務していましたから、残念なことに〈独善的〉で他との調和を崩すことにためらいを感じない教師がいる事も知っています。
 しかし〈たのしい教育〉は周りの人たちとの闘いではありません。
 そして周りの人たちと闘って成し得られるものでもありません。
 それを強く意識しているからこそ、たのしい教育研究所では、〈たのしい教育〉を展開する中で愛される・慕われる人物が育っていくことに力を尽くしています。

 研究所に掲げている〈和をもって貴しとなす〉という言葉も、それを強く意識してのことです。子ども達の笑顔、仲間たちの笑顔を育てる活動には《和》が含まれています。自分の意見を捨てて強調するということではありません。たとえ意見の違いの中でも〈今回はAさんの意見で行ってみよう〉というのが和です。

 そして、それをたのしく学んでいく先生たちが続々と学校現場に巣立っています。

 

 才能あふれる人物がいてこその〈たのしい教育〉ではありません。その逆で、〈たのしさ〉が魅力的で愛される人物を育てていくのです。
 教育の未来を悲観する人たちもたくさんいるでしょう。そういう方はぜひ研究所のコースを受講してくださるとよいと思います。たのしい教育研究所は、教育の未来に明るい希望を感じています。
 いろいろな皆さんが一緒に子ども達の元気で明るくたのしい未来を創っていく活動に参加して頂きたいと考えています。研究所まで足を運ぶことが困難だという方もたくさんいることでしょう。そういう方はぜひ自分の周りに〈たのしい教育〉の存在をアピールしてくださればと思っています。応援してくださる方たちが増えていくことは、たのしい教育研究所の大きな支援です。

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 以前〈発想法・哲学〉の章にとりあげた内容の1/4くらいを抜粋してみます。

板倉聖宣の講演から

〈楽しい授業〉というのは、もともときれいごとじゃなかったんです。
 「楽しい授業なんてできっとない」と思われたから、それを〈きれいごとだ〉と思う人もいなかった。
 そこで私は〈楽しい授業〉というスローガンを掲げたんです。
 ところが今になって〈きれいごとだ〉と思う人がでてきたんですね。いろいろな雑誌の記事などを読むと、タイトルに〈楽しい〉と掲げただけで満足しているようなものが出てきたからです。

 私どもの雑誌も特集なんかを組むと困るんです。
 表題が『たのしい授業』というんですから〈楽しい算数の授業〉とか〈楽しい国語の授業〉とか、みんな楽しいがついちゃう。そこらじゅう〈楽しい〉が洪水になったから、〈いかにして「楽しい」という表題にしないか〉ということには苦労するんです。
 こちらとしては「あたりまえじゃあないか」と思うんだけど、やっぱり、「算数の授業なんか楽しくならないに決まっているんじゃあないか。何とかは楽しくないに決まっているじゃあないか」と思う人がいるから、やっぱり〈楽しい〉とつけたい。 〈これは楽しくなりますよ〉と。それでも、〈表題が『たのしい授業』だからもういいじゃあないか〉というふうにまた思うんだけれども、やっぱりそういう名前を付けたいなあという気がしたりするんです。

 それくらい、楽しい授業なんてそう簡単にできるもんじゃないのです。
 そうだけれども、〈できっこない〉という人が現われれば、「いや、私達は少なくともごの授業はできますよ」というふうに言うことができるでしょう。そういう具体的な教材で言えるくらいになりました。 つづく

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まど・みちお の魅力と才能@たのしい国語

 自宅の階段から降りる時にたまたま〈まど・みちお〉の本が目について久しぶりに開いてみました。

 数え切れないほど読んで来た〈まど〉さんの作品ですけど、何度読んでも新鮮な感動を覚えます。

 いくつか紹介しましょう。

 タイトルを予想してみませんか。

自分が 書きちがえたのでもないが いそいそと けす
自分が書いた ウソでもないが いそいそと けす
そして けすたびにけっきょく
自分がちびていってきえて なくなってしまう
いそいそと いそいそと
正しいと 思ったことだけを
ほんとうと 思ったことだけを
自分のかわりのように のこしておいて

 

 まどさんの〈けしゴム〉という詩です。

 

 この詩にも心動かされます。

 「どうしていつも」  まど・みちお

  太陽
  月
  星

  そして
  雨
  風
  虹
  やまびこ

  ああ 一ばん ふるいものばかりが
  どうして いつも こんなに
  一ばん あたらしいのだろう

 

 以前この本を手にした時にラインを引いた〈まど〉さんの文章があります。

 今でもいくらかそうですが、若い頃の私はとくに、かこを懐かしく思ったり、ものを美しいと思ったりし始めると、どうにも胸が苦しくなって来たものです。
 その過去なら過去、物なら物と、一体にならずにはいられないような衝動にかられてです。
 そして「子ども」(人間に限らずすべての生き物)は私にとってそのような美しいと思えるものの一つだったのです。

まど・みちお「処女作の頃」

  1980年1月「びわの実学校 97号」収録

 

 今読んでも新たに感動してしまいます。
 自分の周りのものごとに、まるで恋をするように寄り添い見つめる。
 ほんの少しで良いから〈まど〉さんの様な感性に近づいていけたらと思う日々です。

 

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たのしい研究 ヘルモントさんの考えたこと 植物の体は何で出来ているか? ③ アシモフさんの〈生物学小史〉から

 ヘルモントさんの研究の続きは、アイザック・アシモフさんが書いた〈生物学小史〉から引用してみます。アシモフさんはSF小説の巨匠であり〈生化学者〉でもあります。彼の書く科学の解説書の多くは、興味深いものが多く、学生の頃からたくさん読んできました。今回とりあげた謎についても書いてくれています。

アイザック・アシモフは、アメリカの作家、生化学者である。その著作は500冊以上を数える。彼が扱うテーマは科学、言語、歴史、聖書など多岐にわたり、デューイ十進分類法の10ある主要カテゴリのうち9つにわたるが、特にSF、一般向け科学解説書、推理小説によってよく知られている wikipediaより


 この本は50年以上前に出版されたものです。普通の本の厚みがあるのに550円。本の値段はずいぶん上がってきましたね。

 話を戻しましょう。この本から関係するところを抜粋します。読みやすいように少し手を加えました。

 生物についての最初の化学的実験はフランダースの錬金術師へルモント(Jan Baptista van Helmont,1577〜1644年)によってなされた。
 ヘルモントはあらかじめ重さを測っておいた土でヤナギを育てた。水だけを与え, 5年後にヤナギは74 kg 増量し、しかも土は57g しかへらないことを示した。
 このことから,彼は木はその成長のもとになる物質を土からではなく(これは正しい), 水からとっている(少なくとも部分的には間違っている)と結論した。

 

 不幸にも,ヘルモントは〈空気〉を計算に入れていなかった。そしてこれは皮肉なことである。というのは,彼は空気のような物質を最初に研究した人であるからである。
 彼(ヘルモント)は“gas”(気体) ということばをつくり出し,彼が“spiritussylvestris”( “木の精”)と名づけた蒸気を発見した。彼が〈木の精〉と名付けた物質は, 後に〈植物の生育〉のおもな原料となっている〈二酸化炭素〉とよぶ気体であることがわかった。
 生物についての化学(現在われわれはそれを生化学とよんでいる) のへルモントの最初の研究は,他人の手により発展し育てられた。

 

 植物の体は〈水〉と〈空気〉からできているのです。

 こんな小さなタネが…

 こんなに大きな樹に育つんです。
 そしてその植物の体のほとんどは〈空気と水〉から出てきているというのです。
 信じられないかもしれませんけど本当のことです。

 

 植物の体については、小学校六年生の理科の単元〈植物のからだ〉で出てきます。
 そして残念なことに、こういう興味深い内容を興味がわかない形で、あるいは〈テストに出ます〉的に学んできた人たちがたくさんいます。
 現在残されている科学的な法則や真理は何一つといって無味乾燥的なものはありません。
 全てにおいて、わたしたち人間が感動をもってうけいれてきたものだといってよいでしょう。
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