すべての科学の根幹には「原子論(アトミズム)」があります。
大分前の〈たのしい教育メールマガジン〉にこういう話を書きました。
私の好きなリチャード・ファインマンが『ファインマン物理学』の「はじめに」でこう語っています。
もしいま何か大異変が起こって、科学的知識が全部なくなってしまい、たった一つの文章だけしか次の世代の生物に伝えられないと言うことになったら、最小の語数で最大の情報を伝えられるのはどんなことだろう。
私の考えでは、それは「原子仮説(原子事実、そのほか、好きな名前でよんでよい)」だろうと思う。
すなわち「すべてのものは、アトム(永久に動き回っている粒で、近い距離では互いに引き合うが、あまり近づくと反発する)からできている」というものである。これに少し洞察と思考とを加えるならば、この文の中に、我々の自然界に関して実に膨大な情報量が含まれていることがわかる。
原子論と相入れない考え方が〈あらゆるものに霊が宿る〉という「アニミズム」、〈霊的・精神的〉な力をたよりとする「スピリチャル」です。
ユバァル・ノア・ハラリが解き明かしたように人間は創造した物語の世界に集団で入っていくことも得意ですから、アニミズムやスピリチャルの広がりは容易に想像できます。
以前、知り合いのカウンセラーから、霊的な世界に入り込んで精神病棟に入院したクライエントの話を聞きました。悪い想像の方向にどんどんすすんでいき、心が持たなくなったのでしょう。
※
人間には科学的認識だけでなく想像的認識があって、それは素晴らしい作用なのですけど、だからといって想像した宗教の違いによって相手の命を奪っていくことが許されていいわけはありません。
私たち人類が叡智をよせて克服しなくてはいけない重要な問題です。
まだまだ少数派とはいえ原子論者・無神論者は着実に増えてきています。
だからこそ敵対してはいけません。
アニミスト(アニミズム論者)やスピリチャリスト(スピリチャル信仰者)はどうしてそういう見方・考え方をするのか、その不思議さを楽しみながら、つまり心を傾けて探っていくことです。
科学の進歩でできた、たとえば抗生剤は、アニミスト・スピリチャリストにも、もちろんアトミストにも確実に効きます。
科学技術を集めた自動車は誰が運転しても行きたいところに連れていってくれます。
予想・実験の過程の中でいつの日か『アニミズム・スピリチャルを想定してもしなくても同じだねとか、想定しなくても解決の道はあるんだね』となっていくでしょう。
アニミスト(アニミズム論者)やスピリチャリスト(スピリチャル信仰者)もアトミスト(原子論者)もみんな幸せを願っていることに違いはないのですから。
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