大阪の野田俊作先生の元に通ってカウンセリングの修行をしている時、今から30年以上前のことです。教師は文科省系のカウンセリング研修があるので、私のように専門のカウンセラーの元に修行にいく人は少なく、学ぶ仲間はお医者さんや看護施設、少年院関係の方など、ほとんど異業種の人たちでした。『嫌われる勇気』で有名な岸見先生も、その時の一人です。
沖縄から来ているというからか、野田先生が合気道で私が琉球空手を学んでいてお互い格技系だったからか、マンツーマンで指導を受けることも多く、たくさんのことを学ばせていただきました。
学ぶ中では痛い思いもたくさんいます。野田先生から直接「君たち教師が子どもたちを追い込んでいることを認識しているか」というように、言葉の刃を向けられたことは指で数えるだけでは足りないほどです。もしかすると、そういう状況があって、直接学ぶ人たちの中に教師が少なかったのかもしれません。
確かに教育現場には問題も大きいので、「たしかにそういう面はある」と受け止めていった中で修行していったのでカウンセリングの力が高まっていったのでしょう。
私が向けられた言葉は短くシャープな内容だったのですけど、野田先生の共著『クラスはよみがえる』には、こういう文章があります。読んでみてください。
私たちのように、児童期や思春期の子どもたちの問題を専門にしている心理臨床家や精神科医はしばしば学校の先生がたからの相談にあずかります。そのときに先生がたが開口一番きっとおっしゃるのが「この子は家庭に問題がありまして…」ということばです。
ちょっと待ってくださいよ。
今は学校での話をしているんだから、家庭はこのさい関係ないはずでしょう。
「そうはゆかない。 家庭に問題があるからこの子は学校で問題行動をするのだから」と、あなたはおっしゃるかもしれません。
でも、それはおかしな理屈だと思います。
もしあなたのクラスの生徒の親が「先生の教えかたに問題があるから、うちの子は家で弟をいじめる」と言ってきたとしたら、どうお感じになりますか?
当惑なさいませんか?
ちょうどそれと同じことではないでしょうか。
「お宅のお子さんが教室で落ちつかないのは、家庭でのしつけに問題があるからで
す」と言われても、親はただ当惑するだけでしょう。 子どもが家庭で問題をおこすのなら家庭に問題があるのだろうし、学校で問題をおこすのなら学校に問題があるのだろう。そう考える方が合理的だとは思われませんか?
たとえ家庭に問題があったとしても、それは、その子が学校で問題をおこすこととは直接のかかわりはないのではないかしら。
「そんなことはない。やはり家庭でのしつけが基本ではないか…」とか 「われわれ教師がいくら努力しても、親があれでは・・・」というような反論が聞こえてきそうですね。
それでは百歩ゆずって「 家庭に問題があるから子どもが学校で問題をおこす」としましょうか。
仮にそうだとしても、だからといって、あなたがた教師がどうしようもないとか、あるいは何もしないでよいということにはならない。むしろ、家庭の問題をかかえた子どもであればあるだけ、あなたがた教師が学校でその子にしてあげられること、してあげなければならないことは、ますますたくさんになるはずだと思うのです。
親たちはその子を十分に援助できないのだから、あなた方教師しか、その子に手をさしのべてあげられる大人はいないじゃないですか。創元社『クラスはよみがえる』より
どう感じたでしょうか?
いろいろな感じ方考え方があるでしょう。
私は野田先生から学んでPEALカウンセリングを創り出したのですけど、野田先生の考えと全く同じなら、そのままアドラー心理学カウンセラーを名乗っていました。違う部分の大きさを感じたから、新しい方法を作り出す必要が出てきたわけです。
私の処に「あるお母さんから〈うちの子が万引きをするので学校で強く指導してください〉という話があった、どうしたらよいか」という相談がきたことがあります。
PEALカウンセリングではこういう場面でも「誰がどうする」ではなく、保護者と教師が協力して、その子のためにしてあげられることはないか、考えてみることを提唱しています。
PEALカウンセリングに興味関心のある方は、カウンセラー養成講座を受ける前に、初歩的なスーパーバイズをうけることをおすすめします。気軽にお問い合わせください
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