子ども達を科学嫌いにしない〈仮説実験授業の教材観〉板倉聖宣の発想から-楽しい学習・楽しい教材

 メルマガに〈たの研10年目〉について書いたところ、さっそく反響が届いています、うれしいことです。

 そこに書いた「教材を含めて〈たの研〉にあるたくさんの財産を維持することに全力を尽くすのではなく、また初期設定に戻して、いろいろチャレンジングなことをはじめていきたいと考えています。

 新しいタイプのたのしい教育プログラムに手を伸ばしていく予定です。そういう中で、もう一度初心にかえって学び直すことも大切です。

 私が教材を作る時、読み込んでいた資料の一つを紹介しましょう。たのしく学力を高めていきたい、本物の学力を身につけてもらいたいという方たち、楽しい教材・楽しい学習を模索している方たちにも役立つものだと思います。

板倉聖宣

 仮説実験授業の授業書が〈いっさいの押し付けを排除する〉ということをうたっていたのは「言葉の押し付け」をしないように細心の配慮をしてきたからです。

 じつは仮説実験授業の授業書だって、その〈案〉の段階では言葉の使い方が適切でないことが少なくありません。

 仮説実験授業研究会の授業書改訂の席に参加すると、たいていの人は「授業書の一語一句について適当かどうか」を延々と論議しているのをみて驚いてしまいます。

 仮説実験授業の授業書は、そういう言葉遣いの一つひとつを詳しく吟味して、言葉の使い方に繊細な配慮がしてあります。そうやってどんな子どもたちもおしつけや違和感を感じずに、気持ちよく授業を受けることができるようになっているといってよいと思うのです。

 そういう細かい心遣いをしてはじめて「科学というものは何と心温かくできているのだろう」と感じさせてはじめて、子ども達を科学嫌いにしなくてすむようになるのです。

 
 仮説実験授業研究会ニュース2017年6月の内容を再校正
                    文責きゆな

〈たの研〉のメンバーと一緒に、このことを丁寧に確認しつつ進んでいきたいと思います。

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たのしい楽しい教育プログラム-たのしく学力を高める具体的な方法-楽し教材・楽しい学習

資料の整理整頓は創造する場合にもとても大切
 たのしい教育メールマガジンも今年の最終号が近づいてきて、今年書いた記事の整理をはじめています、半年毎にはやるようにしているのですけど、一つずつの記事を開いて整理していくのは事務的な能力が低い私には大変な仕事です。
 そういうことをするより新しい記事を書いていたいと思うのですけど、メルマガの初期の頃、読者の方から「たとえば体育の教材をさがす時に、どこに出ていたのかわかると助かります」という要望があったことと、板倉先生が『月刊 たのしい授業』を創刊した時、その年の総索引がとても好評で、重要なんだと話していたこととが結びついて、メルマガにも年末にその年の記事一覧をつけることになりました。
 メルマガは電子版なので、検索の時にはキーワードを打てばすぐにどの号のどの章にある記事なのかわかります。
 もう一つ、すでに500号を超えていて、例えば〈映画の章〉で紹介した作品は1000作近くになります、書いた記事を整理しておかないと混乱の元です。
 新しい記事を書く時だけでなく、広く〈創造する〉という場合にも、これまでの記事の整理整頓はとても大切なことです。
 実施してきてよかったと思います。

2022年のたのしい教育プログラムの記事から

 まだ一部なのですけど、整理している私が「あ、こういうものも書いたんだよね」とか「これは今年書いたのか」といろいろな発見をしています。
 メルマガは四章構成なのですけど、その一つ〈たのしい教育プログラム〉の記事の一部を紹介しましょう。

490号 2022-02-02
🔵仮説実験授業「足は何本?」を
やってみませんか
 H先生の授業記録の紹介

491号 2022-02-09
🔵ペーパークラフト(図工・生活科)
 たのしいハサミ・ノリの使い方「ミニオンバッグ」

492号 2022-02-16
🔵ブックレビュー 朝の連続小説(連続読語り)で
 ミヒャエル・エンデ「モモ」がおすすめ

493号 2022-02-23
🔵人気のなぞなぞ・クイズ系
子どもにウケるたのしいクイズ 坪内忠太

494号 2022-03-02
🔵たのしく〈体力づくり〉

  三角トンネルくぐり

495号 2022-03-09
たのしいキャリア教育 読み物教材(国語・総合などで)
🔵沢木耕太郎「鉄塔を登る男」
 働くって何だろう?

498号 2022-03-30
たのしい家庭科・生活科・理科他
🔵野の花いけ花

499号 2022-04-06
🔵たのしい国語 お話めいろ

500号 2022-04-13
🔵たのしい算数 サム・ロイドさんのパズルから

501号 2022-04-20
🔵たのしい理科 植物の給水実験

502号 2022-04-27
🔵たのしいアウトドア入門 身体センサーの話

503号 2022-05-04
🔵たのしい社会 都道府県生産高ランキング

 こうやってまとめているといろいろな教科や活動の時に利用できるように、うまく分散されていると我ながら感心してしまいます。

 授業の章は特別な技能や経験は必要なく、準備0や、印刷すればOK、準備するものでも、学校や家庭にあるもの、100均で入手できるものを中心に書いているので、記事の場所を確認して読めば、明日には授業できるものがほとんどです。

 週に一度の〈たのしい教育プログラム〉からはじめて、こどもたちとの関係をよくし、講座や資料などでゆっくりたのしい時間を増やしていくという様にして、大人自身がこども達とたのしく充実した日々を過ごしている人たちが増えています。
 興味のある方は、ぜひお申込みください。
 スマホの方は記事一番下の〈サブコンテンツ〉をクリックすると、申込みのリンクが出てきます。
 また記事検索に「メールマガジン」と打つとメルマガに関わるいろいろな記事を読むこともできます。

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楽しい図鑑入門〈学研LIME昆虫〉おすすめ-楽しい学習・楽しい教材

〈たのしい教育研究所〉の年末・年始の大掃除が始まっています、1ヶ月くらいかかります。〈たの研〉には本や資料が大量にあるのでこの大掃除で〈たの研に残すもの〉とそうでないものを振り分けています。

 残すものの筆頭はいろいろな本棚に分散して並んでいる〈図鑑類〉で、かなり多く開くジャンルの一つです。

 タイトルに〈図鑑〉とついていなくても、写真などが多用されているものは大抵〈索引〉がしっかりしているので調べる時にとても重宝します。
 調べる時だけでなく、大抵はパッと開いたページだけで完結するので2~3分あればたのしめます。

 
 最近〈子ども向け〉の図鑑にとても感動して購入した一冊があります、学研の図鑑LIVEシリーズ〈昆虫〉です。

 〈たの研〉のYouTube動画でも沖縄の昆虫たちの様子を紹介しているのですけど、そこには昆虫などの名前も載せています。〈この昆虫は◯◯という名前だ〉と見分けることを〈同定:どうてい〉といいます。
 図鑑を開いて昆虫などの名前の間違いがないか確認することは必須です。web上で確認することも多いのですけど、手元の図鑑で確認することもあります。

 生物は命を失うと色が変化してしまうものが少なくありません。昆虫でもコガネムシや蝶などの仲間は色の変化があまりないのですけど、トンボやバッタなどはすぐに色が変化していきます。
 数ある図鑑類は命を失った標本から写真起こししたものも少なくないのです。

 甲虫類は比較的色がそのまま残るのですけど、ルリボシカミキリなどは命を失うとすぐに色が変わってしまいます。
 
 今年の夏にリニューアルされた学研の図鑑LIVEシリーズ〈昆虫〉は、すべて生きた昆虫を集めて写真を取り直した画期的な図鑑です。

 たいていの図鑑は、こうやって羽を広げたチョウの写真がならんでいます、標本箱にピンでささって並んでいるような状態です。


 これでもいろいろなことがわかるとはいえ、たとえば腹(はら)の下側の模様や様子、足の長さなどはわかりません。

 学研の図鑑〈昆虫〉は、〈生きた状態〉の昆虫をつかまえてきて、その昆虫のすがた形、色などがわかりやすいように角度をつけて撮影してくれています。一部がこういう様に撮影されている図鑑はあるのですけど、〈全て〉を生きたままの状態で撮影し直した、ということですから、製作者の方たちの並々ならない努力に脱帽するしかありません。
 だって生きているということは〈動き回る〉ということだからです。

 本の値段というのは人によって高い安いの基準が違うかもしれません、数々の図鑑を購入してきた中でこの図鑑を位置付けた場合、このグレードで税込2420円というのはとても安いと思います、大人でも十分たのしめます。

 こういうハイレベルの図鑑がどんどん出てくれたら、こんなに嬉しいことはありません。

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たのしい科学-楽しい学力〈花のイメージ・概念〉

 最近は読者の方からのお便りが増えてきました、嬉しいことです。〈自閉症スペクトラム〉をめぐっての精神疾患の種類の多さについて「共感しました」という趣旨の長いお便りをいただいています、いずれそれについても書かせていただきます。
 さて前回の記事で野草たちの花の美しさに感動し、さっそく注文しましたという方もいました。最新のメルマガの発想法の章に板倉聖宣先生が語った〈花のイメージ〉の話を紹介しました。ちょうど流れがよいので、その前半を紹介しましょう。
 2002年に大阪堺市の〈ことばの教育・国語教育研究会〉で語った話です。

 話が理解しやすい様に校正し参考の写真をつけました、文責は私いっきゅうです。

■科学上の花
 私の家は東京のまん真ん中でしたから庭などはありませんでした。
 今は庭のある家に住んでいますから〈すごく特権的だ〉と思っておりますが、以前の東京のまん真ん中に住んて゛いた頃も半坪ぐらいの庭があって一本だけヤツデの木があったのです。
 ヤツデの木というのを知っていますか?

 ヤツデは八つの指のような大きな葉があるのです。かなり強い植物なので東京のまん真ん中でも育って、冬には人々が「花」と称するものが咲くのです。私は断固としてそれを花とは認めませんでした。

 だって花びらもない、私にはきれいとも思えない、だから私は断固として「花ではない」と思ったのですが、ケシカランことに多くの人は「花」というのです。
 ヤツデはまだ許せるのですが〈イネの花〉、これは絶対に私は許せない(笑)。
イネの花を見たことがありますか?

 まあ、無理して「きれいだ」といえばきれいでしょうけども相当に無理しなければイネの花はきれいとはいえません、花びらもないし。
 だから誰かが「イネの花」といったときに「そんなものは花ではないよ」と私などは思うのですが優等生は簡単に「先生がいっているから、これはイネの花だ」というのです。
 ムギの花でもそうです。

 私たちが花とは思わないものを、たくさんの権威主義的な人が花と認めてしまうのです。それで「権威主義的な人がみんな花と認めても、俺は断固として花とは認めないぞ」というのが小学生の私の決意だったのです。

イネやムギの花を花だと納得する段階
 もちろん今の私はイネの花も認めますしムギの花もヤツデの花も認めます。
 しかし「花とは、花びらがきれいであるもの、飾っておくに値するものである」というのが普通の人の定義ですから、ヤツデの花や、イネの花や、ムギの花を〈花〉と認めるためには納得する段階が必要になるのです。
 花が咲く植物はみんな実がなるのです。
 そして「どうも植物は実をつくるために花が咲くらしい」という気がしてきます。
 そうすると「花びらがなくとも実が成ったら花と認めてやってもいいのではないか」ということになります。
 実際〈イネ〉の花には実がなりますし、ムギの花にも実が成ります、その他の花にも実が成るのです。
 例えば「枝豆と大豆とは違う」といって大変叱られたこともありますが、枝豆の花とか大豆の花もよくよく見ればキレイなのです。


 しかしよくよく見ないと花は分かりません。枝豆を栽培している農家でも枝豆に花が咲くことをほとんど知らないのです。
 私どもが枝豆の花の写真を撮ろうと人さまの畑に入って写真を撮っていると、そこの持ち主が現れました。
「なにをやっているのですか?」
「いや、枝豆の花の写真を撮っているのです」
「え、枝豆に花が咲くのですか?」
「咲くんですよ、これです、キレイでしょう!」
「へえ、そうですか、知らなかった!」
 枝豆に花が咲くことを知らなくても、枝豆の実が成れば農家はやっていけるのです。
 枝豆もよく見るとキレイな花が咲いて、そして実が成るのです。

 だから日常生活上の花の概念からは枝豆の花は目立たない花だけども、よく見ればキレイで、そして実が成っているということになると
「どうも植物の立場から見ると実が成るような花が咲くものは、花と認めてもいい」
ということになるのです。
 そして実が成るために一番大切なのは〈雄しべと雌しべ〉とか、雌しべの下にある〈子房〉で、雌しべの先につく〈花粉〉とかだということがわかってくる。
 植物では〈花びら〉よりこちら〈雄しべ・雌しべ〉の方が大事なのだから「これを〈花〉と呼んだ方がより合理的ではないか?」ということで、子どもたちや、みんなとの合意の上で〈花の概念〉が変わってくるわけです。
 それに対して、今までの教育では「子どもたちとの合意の上で概念を変える」ということを全然やっていません。

 後半はさらに熱がこもってくるのですけど、ここまでにしておきましょう。

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