「われわれは皆どこかおかしい」〈イタリアのことわざ〉という発想

 次号の〈たのしい教育メールマガジン〉の「映画の章Plus」に〈自閉症スペクトラム〉について触れるので久しぶりにアメリカ精神医学会が作成している〈DSM〉という精神疾患の診断基準・診断分類マニュアルの中身を具体的に確認しています。

 みなさんは精神疾患、たとえば〈うつ病〉とか〈適応障害〉といった病名はいくつくらいあると思いますか?
  予想してみてください。

予想

ア.10くらい

イ.50~70

ウ.100~120

エ.200~220

オ.250~

どうしてそう予想しましたか?

 

まだ、調べ始めなのでこれからというところなのですけど、ある論文の中にこういう文章を目にしました。

「19世紀半ばにおこなわれた精神病患者に対する最初の調査には6つの疾患しか載っていなかった。現在では200近くある」(Frances,2013,p.53)
だが Frances は診断名の数を低
くみつもりすぎていて,Ghaemi(2007)による と DSM-III-R(American Psychiatric Asso-ciation, 1987)では292,DSM-IVでは297の診断名がある。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscap/57/1/57_205/_pdf/-char/ja

DSMはバージョンが新しくなるほどにどんどん新しい病名が加わっていますから、DSM5では300以上の精神疾患が分類されていることでしょう。

 症状の訴え方によっては〈片付けないと気持ちが落ち着かない人〉も精神疾患となり、〈かんしゃくをおこしやすい人〉も病名がつけられてしまうことになります。

 こういう様に精神的なものにどんどん病名をつけていって何がどうなるのか?

 一番大きなことは〈薬を処方できる〉ことです。

 ところで、学校でも行動スタイルにしろ成績にしろ、その学年の普通のこども達の状態から大幅に外れてしまう子どもは特別支援クラス対象になってしまうことがあります。

 どんどん〈特別な集団〉を作っていく、「平均からかなりはずれているので指導が難しい」という人たちを別のクラスに分けていく流れもDSMでどんどん精神疾患名が増えていくことととても似ています。

 イタリアに「われわれは全てどこかおかしい」という諺があります、そういう集団が社会なのだということです。
 〈私は全て平均値〉なんていう人はいません。
 みんなどこか平均値から大いにずれているところがあるでしょう。

 もちろん私いっきゅうにもたくさんあります、学校で「子ども達の方が自分よりはるかに上だ」と感じたことはたくさんあります。

 病気を増やし平均よりこれくらい低いという人たちをどんどん分類していく状況の中で「みんなヘンなところがあるんだよ、そういうどこかおかしいところが作用しあって、社会全体はよりよい方向にすすんでいくのだし、より優しい社会になっていくんだよ」と考える人たちが増えていくことも大切だと思うのですけど、どうでしょうか。

 もちろん、この人には特別な手立てが必要だしそれでどんどん伸びていくということもありますから、一方の面からではなくその両方の面から考えをすすめていける人たちが必要なのだと思います。

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冬のワークショップ〈アウトドア・ウォーク2022〉 楽しい学習・楽しい教材・生きた学力

 2022年を終えるたのしいミニワークショップのご案内です。
一年間の自分の元気を祝して、そして次のたのしい年に向けて、一緒にたのしく歩きましょう。
〈沖縄県のリアルな大きさ〉を体感する充実したワークショップです、自分で体感したあとはきっと自分の子どもやクラスの子ども達に伝えたくなると思います。そうやって〈生きた学力・たのしい学力〉につながっていくでしょう。
 外を歩くので少数での実施となります、すでに席が埋まり出したようです、ご希望の方は早めにお申し込みください。
 事務局から届いた案内を添付します。

たのしく歩いて、さぁ2023年へ!
2022年もそろそろ終わります。たのしいこともあったでしょう、大変な中がんばったこともあったでしょう。今年ラストのワークショップは〈たのしく歩こう〉です、いろいろな中でも最後まで前を向いて歩き続けた自分を讃え、たのしみましょう。歩くだけではありません、私たちが暮らしている沖縄のリアルな大きさを体感する、学びたっぷりの新しいプログラムです。
自分でたのしんだ後はきっと家族と一緒にクラスのこども達と一緒に歩きたくなると思います。
「体力には自信がないから…」、大丈夫です!
45分くらい外を歩くことができる体力があれば十分たのしめます。山に入るわけではないのできつい勾配はありません。途中で休憩をとったり自然をたのしんだりしながら歩きましょう。
歩くことが苦手な子でなければ親子(小学生以上)での参加も可能です。その後、希望するメンバーはクリスマスパーティーをしようと考えています(別途費用:事務局から確認が届きます)。※ウォークのみの参加可能
 雨天時はインドアでネイチャーゲームを実施します。

日時:2022年12月27日(火)14:30現地集合  ⇨うるま市の海岸 参加する方には具体的な場所をご案内します
  16:30までアウトドアウォーク ※終了時間は参加者の状況で前後します
  その後希望者はクリスマスパーティー19:30まで 事務局から別途確認します
講師 いっきゅう先生
対象:たのしい教育に興味関心のある方 /こどものみの参加はできません参加費(資料込・保険加入)一般1800円 RIDE会員1600円 こども1000円
★早割:12/19(月) 17:00まで 一般1600円,RIDE会員1400円 子ども800円
服装・持ち物:動きやすい服、タオル、飲み物
★雨天の場合 室内会場でネイチャーゲーム  講師は日本シェアリングネイチャー協会インストラクターの方を予定しています
★★ お問合せ 090-1081-7842 (平日 18:00まで)★★
★申込みは右QRコードから  うまくいかない場合はメールや電話(上記) でも可能です ⇨ office@tanoken.com 

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楽しい読み語り・楽しいブックレビュー〈イソップものがたり〉しかけ絵本

 今回は〈楽しいブックレビュー・楽しい読み語り〉をとりあげます。以前、講座の時にあわせて書いてもらったミエ先生の記事があるので、紹介させていただきます。
「イソップものがたり とびだししかけえほん」キース・モアビーク作 大日本絵画 3200円+税です。
 絶版になっているのですけど古本で手に入ります。amazonは古本の状態の説明がしっかりしているので、それを確認して購入するとよいですよ。
 いっきゅう筆

ミエ筆
 しかけえほんは、いつものお話の内容でも、違う味わいがあってたのしいです。

 この「イソップものがたり」は数年前に本屋さんでページを開いて見て、素敵な絵本だなと感動し、すぐに購入しました。
 もちろんこども達にも大人気。
 絵本まつりなどでもたくさんこどもたちの笑顔にかこまれていた本です。

久しぶりにページを開いてみました。
やっぱいいいな~
1つ1つの物語が見開きで飛び出してきます。

横の方にもしかけがあります、小さくてもしっかりとびだしますよ。
下の写真はライオンが人間に捕まった時、ねずみに助けられて、ライオンとネズミがあたらしい友達になるところです。
目を細めて微笑んでいるライオンさんがとってもやさしくていい表情をしています。

 

美しいイラストで描かれたこのしかけ絵本の中には
「金のたまごを生んだがちょう」
「きつねとからす」
「うさぎとかめ」
「ほねをくわえた犬」
「旅人とくま」
「北風と太陽」
「きつねとぶどう」
「馬としか」
「ライオンとねずみ」
「ありときりぎりす」
の10のお話がたのしめます。

 一話ずつ分けて読んでいくと、次のお話会をとてもたのしみにしてくれて「先生、つぎはどの話?」と駆け寄ってきてくれました。

 しかけ絵本は初刷りのみで再販されないものも多いので、、出会って気に入った時に買っておくことをおすすめします。

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教育の中にひそんでいる〈押し付け〉に気づくこと-たのしい教育の発想法-仮説実験授業研究会代表〈板倉聖宣〉が語ったこと

 週一で発行しているメルマガは4章で構成されていて、ラストは〈発想法の章〉です。今週その章にのせた板倉聖宣先生の話にさっそく反響が届いています。
 歯に衣着せぬ語りの板倉先生の話を読むと「え!」と驚くかもしれませんけど、板倉先生は文科省直属の教育研究所で室長をしていた人物です。

 批判ではなく提案をする組織である〈たの研〉の重要な〈たのしい教育メールマガジン〉に板倉先生が発する言葉を紹介するのはなぜか?
 それは私いっきゅうの自戒であり、教師が多く陥りやすい落とし穴に足をとられない様にするためだったものが、広く〈こども達の笑顔と可能性を広げようと努力する教師たち〉の心を動かす言葉でもあることに気づいたからです。
 メルマガへの反響は若い先生たちからも届きます、こういう考え方を心に留める先生たちが増えて行って欲しいと思っています。

 最新号の〈たのしい教育メールマガジン〉の発想法の章の中から再校正して少し紹介します購読しているみなさんも新鮮な気持ちで読んでいただけると思います。
 板倉先生が2002年に 大阪堺市〈ことばの教育・国語教育研究会〉で語った内容です。

板 倉

 教育はそのほとんどが〈文章〉と〈話し言葉〉で行なわれています、そしてそこに押し付けがたくさん潜んでいます。
 言葉というのは非常に便利なものですが、学校の教師はどうも権力の片棒を担いでいて「自分には押し付ける権利ある」と考えているふしがあります。
 だから子どもたちが分からなかったら「教師は正しくて、子どもがいけない」と考えてしまうことになるのです。
「教科書に書いてある言葉が正しくて、理解出来ない子どもが間違っている」というようなことは私には許せないのです。
 国語でいえば、こども達が理解出来ない文章を書く小説家がいけないのだし、理解が出来ない文章を教科書に載せている編者がいけないのです。
 言葉というものは理解出来るようになっているのですから「理解出来ないような言葉を教科書にのせてはいけない」と思うのです。
「子どもはまだ社会の中に充分に入り込んでいないのだから、大人になった時には理解できる。そのために分からないことがあっても仕方がない。だから学校教育では理解できなくても教えるのだ」という考え方もありますね、そうならそうで結構なのですが、たいがいは、その理解出来ないことを一生持ち続けることになってしまいますね。

 私いっきゅうにも、学校で教えられたことで謎のままなことがたくさんあります、それに溢れているいってもよいと思います。
 中学の社会の先生が〈尾根というのはこれこれこうだ〉と語ったこともさっぱりわかりませんでした、今もあえてわからないままにしています。
 前にも書いた様に英語は特についていけませんでした。
「Takeの意味はこれこれこうでたくさんあって、多くは〈つかむ〉という意味、でもこの場合のTakeは〈撮る〉という意味だ」という様に説明された時に〈こんな不合理な言葉に付き合うのはやめよう〉と考えました。
 先生の言う様に覚えていった人たちはほめられ、こんな風に学ぶのは嫌だと感じた私の様なタイプの人間は先生から冷たくあしらわれていきました。
 もちろん私の様にあしらわれた人たちが増えていき、ほめられていく少数の人たちはその後もどんどん減っていきました。
 映画のおかげでその後自力で学び、そういう様な組み立てパズルの様に教えいた先生たちの方が不勉強なのだと知ったのは10年以上経ってからのことです。
 Takeという単語をネイティブの人たちは「自分のところに取り込む」というイメージで理解していて、みかんをとるのも、自分のところにとりこむイメージ、写真の中に取り込んだりするのもTakeを使う。ちなみに〈薬を飲む〉という行為も自分の中に取り込むというイメージで〈Take medicine〉と使ったりするとわかったときに、やっとすっきり英語が理解できる様になってきました。

 教師になった私は、あの時の英語の先生の様に「わからないあなたたちが悪い」というタイプになっていないだろうか?
 この板倉先生の話で、我が身を振り返る大切な機会にもなりました。
 ここまでにしておきましょう。

 

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