学校へ〈シンプル教材導入〉の必要性-遠藤純夫先生の宇宙教育教材から「たのしくしまくとぅば:島言葉」へ①

 大好きだった遠藤純夫先生(元全国中学理科教育研究会会長/JAXA参与)のことを想い出しています、遠藤先生はたのしい教育研究所の大恩人で、私が教師を途中で辞めてNPOを作りたいと話した時、真っ先に背中を押してくれました。

何度も沖縄に来てくれた時の一枚 いっきゅう撮影

 ちなみに周りの人たちにフリーの教育者になるという相談をした時にほとんどの人は賛成してくれました。
「もったいない、まずは病休ということでしっかり時間を確保して準備期間を確保した方がよいと思う」という強い声があったものの、ストップをかける声はほとんどありませんでした。不思議なことですけど、私がとても生き生きしていたことも影響しているのでしょう。

 一緒にいろいろな活動をさせていただいていた時、遠藤先生はJAXA(宇宙航空研究開発機構)の教育部門で、たくさんの教材開発をすすめていました、〈たの研〉の授業などを見て授業化してくれたものがあります。〈導入教材〉として気軽に授業にかけられる様にと作成されました。かつ内容もしっかりしていて全4ページ版です。

 

 遠藤先生と二人、沖縄北谷の海の見えるカレー屋さんで、食事している時、導入教材について「シンプルな教材になったんだけど、なかなか利用してくれる人が増えていかないんだよ…」と話してくれました。

「遠藤先生、一枚もので教材を提供する、というわけにはいかないですかね」

「ん~、一枚ではなかなか伝えられないなぁ」

と続きます。

 教材のボリュームがそれなりにあっても、意義を感じた先生たちは、それを手にとって授業にかけてくれます、私も遠藤先生の作成したプランを〈たのしい教育メールマガジン〉などでいろいろな先生たちに紹介してきました。

「宇宙教育の教材をメインの授業の導入としてたくさんの先生たちに使って欲しい」という遠藤先生のアイディアは画期的です。理科の先生たちのトップにたちながら、こういう柔軟な思考ができる人はほとんどいないでしょう。

 遠藤先生も私も長年教師をしてきましたから、先生たちが「これをやらなくてはいけない、こうすすめなくてはいけない」というがんじがらめの中で毎日を過ごしていることは肌感覚として知っています。
 そういう日々で、新しい教材プログラムを実施するというのは、簡単なことではありません。

 さてここから〈たの研〉が全力ですすめている「たのしくしまくとぅば:島言葉」の話に繋がっていきます、予想していたより長くなってしまいました、項を分けておとどけします。つづく

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仮説実験授業の授業書の変化球-実験中

 仮説実験授業という画期的な授業があります、たのしい教育研究所を強く応援してくださった〈板倉聖宣先生:仮説実験授業研究会初代代表・元文科省教育研究所室長〉が開発した授業方式です。

 板倉先生に「仮説実験授業の問題を二、三問取り出して〈自分の考えを語ることが苦手な子どもたち〉に実施してみたいのですけど」と相談したことがあります。
「きゆなさん、そういう実験はそれなりに価値があるかもしれないけれど、その時には〈仮説実験授業〉とはいえないから、そう言わないでやるんだよ。仮説実験授業は一連の問題やお話などを連続的にやる必要があるから」と返してくれました。
「仮説実験授業とはいえない」というのは、ダメな授業だということではありません。数問実施しただけでは仮説実験授業が提唱する効果が得られない、ということです。

 私は仮説実験授業暦40年です、いつの間にかかなりのベテランの仲間に入りました。教師時代の年間授業書実施回数は少なくても週数時間、多い時には20時間を越していましたから、累積すると全国的にみても上から数えた方が早い方でしょう。その私の経験を活かして〈自分の意見を伝える〉ことをテーマに実験的にプログラムを作って、何人かの先生に試してもらっています。

 気に入ってくれた先生たちが、授業書を手にして《仮説実験授業》を実施してくれる様になることも、目標の一つです。

 結果がハッキリしてきたら広く紹介していきたいと考えています。

 仮説実験授業の問題はたのしく、自分の頭がどんどん動いていきます。
 いくつか問題を経験していくうちに、「こういう意見をいいたいな、いえるかもしれないな」そう感じてくれる子どもたちが増えていくというのが私の予想です。

 それもまた〈意見をいうたのしみを味わうプログラム〉として十分価値のあることだと思っています。

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楽しい授業論・楽しい研究論:ロックバランス-研究進む/楽しさ論 教師も自分の可能性をたのしく伸ばして実験する

 真理へは論争ではなく〈仮説・実験/予想・実験〉の過程によってのみ至る! 前回の板倉聖宣の脚気に関わる話の前に私が問いかけた質問の答えです。それは、飾りとしての言葉ではなく、実際にたのしい教育研究所が創り出す〈たのしい教育プログラム〉にも生きています。
 たのしい教育プログラムは「こうすればたのしく賢く学ぶことができるプログラムになる」という考えだけで完成するのではありません、その後でいろいろな人たちが試して、実験的に「確かにそうなる」という過程を経て完成します。

 最近たくさんの人たちが試してくれている「ロックバランス」は〈予想⇨実験〉の過程を経て、もうすぐ完成するプログラムです。

「え、こういうのは教科書にないのに、学校でやっていいの?」という声は聞いたことがありませんけど、もしかすると心の何処かに思い浮かべている人がいるかもしれません。
 学校教育というのは〈一人ひとりの子どもたちの可能性を伸ばしていく場所〉です。
 苦しく嫌な想いを抱きながら可能性を伸ばすことができるでしょうか?

 無理です。

 例えば私いっきゅうは小学生の頃、書道で毎回というほど表彰されてきました、ところがそれを指導した先生の苦しい嫌な感じがあって、墨の匂いかぐのもイヤになってしまいました。嫌なものは使わないのです、そんなものは可能性でもなんでもありません。

 可能性を伸ばすというなら〈たのしさ〉は必須です。

 そしてそういう場では教師自身もいろいろな可能性を伸ばしていく必要があります。「はい今日は教科書◯ページの右側からですね、まず漢字の書き順からやりますよ」というパターンが連日続くとしたら、子どもたちにとっても教師自身にとっても苦しいものとなるでしょう。

 週に一回程度からスタートして「ねぇねぇ、先生最近、こんなたのしいものを発見したんだけどね、ロックバランスっていって、絶妙なのに結構簡単なのよ。今日の図工のクロッキーの授業は、まず10分くらいロックバランスをたのしんでから、それを描くことにしましょう´ー`) 」
という様な授業ができる先生たちが増えていくと、間違いなく学校は魅力的な処になっていくと思います。

 前書きが長くなりました、興味のある方は気軽にたのしい教育研究所に「どんな教材がありますか」と問い合わせてください。

 「ロックバランシング」という本も出ていますから、二番煎じだと考える人たちもいるでしょう、違います。
・それが教育の場で利用できるのか
・どういう教材素材を利用するか
・利用素材は身近な処で安価に手に入れることができるのか
・子どもたちはどの程度喜んでくれるのか
・時間制限を加えた方がよいのかどうか
・危険度はどうか
・どの様な語りかけで導入したらよいか
 etc.

 いろいろなことを研究していって〈たの研〉の教材になるのです、本の真似ではなく本から出発して教材化するのです。

 現在は、いろいろな先生たちが学校で子どもたちに試してもらっています。
 その喜んでくれている顔がたくさん届きました、メルマガでも紹介しようと思っているのですけど、2~3枚先にこのサイトに載せましょう。
 たのしい教育研究所の個人情報保護規定によって表情を見てもらうわけにはいかないのが残念ですけど、どの子も満面の笑みをたたえています。

  まず子どもたちは〈大きな石⇨小さな石〉の積み重ねをたのしむ様だということもハッキリしました。

 そこで下の写真の様な〈絶妙バランス〉の積み重ねを、どれくらいのタイミングで提示していくかについて研究中です、これができたら講座などで広くいろいろな先生たちに紹介したいと思います。

 

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板倉聖宣の発想〈森鴎外〉と〈脚気〉と〈論争で真理は決まらない〉ということ/たのしいブックレビュー「模倣の時代(板倉聖宣著)」

〈たのしい教育メールマガジン〉に書いて反響がいくつも届いた記事を紹介します、板倉聖宣(仮説実験授業研究会初代代表、元文科省教育研究所室長)が著した大河小説「模倣の時代」に絡めて、脚気と森鴎外の関係をもとに真理を追求する方法について語った内容です。《論争で真理を決めてはいけない》という迫力ある話です。では何で真理を決めたらいいのか?
 読者の皆さんはどう思いますか?

 私の書籍解説が気に入ったという方もいたので、まず私のブックレビューから引用します。

いっきゅう
「模倣の時代(上下)」 
 板倉聖宣執筆の小説
明治以後、日本は欧米を徹底的に模倣し発展してきた。
しかし日本特有の病気である〈脚気〉は欧米に例がなく、日本人が創造性を発揮して解決しなければならない大きな課題であった。
ドイツのコッホから最新の細菌学を学んだ森鴎外は「脚気は〈脚気菌〉によって起こる感染症である」という予想をたてたが結果的にそれは間違っていた。
一方、堀内利国らは「栄養素が不足して起こる」という予想を立て、実験的に「麦飯を食べることによって脚気が予防できる」と明らかにした。
かなり時を経てから〈脚気はビタミンB1欠乏症だ〉と解明され、堀内利国らの研究の原理的な正しさがはっきりしたが、森鴎外を中心とする東大医学部系の医学者たちは、それらを無視し反撃を開始する。
 当時、森鴎外は陸軍軍医のトップであり、その間違った医療方針の結果、日露戦争ではロシア軍との戦いによる死者数より脚気によって死亡した兵士の数が上回った。
 明治期の医療史をテーマに、模倣と想像のダイナミックな歴史を描いた快作。

 追記:日露戦争時の戦死者⇨日露戦争の陸軍の脚気患者は25万人、うち2万8千人が死亡。 戦死者の総数は4万7千人であるから、銃弾の犠牲者を越えている。
https://www.city.shirakawa.fukushima.jp/page/page005750.html

板倉聖宣

 WOWOWの番組で、そのことに関連して語ることになるのですけど、メルマガでは、明治の前、江戸時代、脚気の治療に正しい予想を立てた人がいたか、という話から始まります。全文ではなく、メルマガの一部のみの紹介になります、ご了承ください。

 1740年に脚気の治療に関わる論文があって、大阪と江戸で「脚気は恐い病気じゃない」という感じになった。 ※いっきゅう補足:明治は1868年なので約130年前前のこと
 それでもダメなんです。

 将軍が脚気になって死んじゃうしね。

 それがまたここで堀内利国の監獄の問題をきっかけに復活したんです。

 天皇まで支持したんです。

 それでもまた日本全体としてはダメでした。

 森鷗外が「自分が責任を負わない」ということでがんばったんですよ。恐ろしいのは「科学者は信用できない」ということです。科学者は半分は官僚なんだよ。官僚だから責任を取らないんだ。そういう科学者を信用する政治家がたくさんいる、これは恐いね。
 たとえば「臨時脚気病調査会」では、脚気の問題で一番責任のある森鷗外を会長にしちゃうんだからね。責任を取らせようと思ったら飛ばせばいいんだね。責任を取らせる人を会長にしたら、
責任を取らないように工作するわけだ。「科学者は客観的に研究するだろう」と思うから、そういう人を平気で会長にするでしょ。
 その当時の総理大臣や、陸軍大臣とか天皇とかがそういう連中に責任を取らせようとするけども、その連中はごまかす。だから「科学者は信用してはいけない」というんだ。
「真理は実験で決まる」ということをはっきりしなきゃいけない。

 論争で決めるようなやり方、つまり多数決で真理を決めるようなやり方をしてはいけないんです。

 

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