前回の記事を読んだ方から「アスパラガスがあんなに小さな可愛い花をけるとは知りませんでした、驚きました」という感想が届いています。
小さな花のかすみ草はプレゼントの花として人気があります。
アスパラガスの花も花が多い品種を育てていくとプレゼント用になるのじゃないかと思うのですけど、どうでしょうか。
※
さて、前回の問題「アスパラガスは何の部分か」という話!
全体としてみると〈若い茎〉の部分だというのが正解です。
でも、あのウロコ状についているポツポツが気になりませんか。
これがとても面白いんですよ。
このウロコ状のものは何だと思いますか。
「葉」のように見えますね、そこから枝が伸びてくるようにも見えます。
アスパラガスの枝と葉は、この写真の花の周りの部分です。さっきのウロコ状の部分から枝や葉が伸びていくんではないんです。
ウロコ状の部分は仮葉枝(かようし)と呼ばれています、変な名前ですね。
仮の葉、仮の枝というネーミングです。
少し専門的になるのですけど進化の多様さにもつながるおもしろい現象なので、東京大学の理学部の研究を紹介しましょう。https://www.u-tokyo.ac.jp
アスパラガス属の植物は、葉が鱗片状に小さく退化し、枝を生じるべき位置に仮葉枝と呼ばれる葉のような形の器官をつくります。
また、光合成も主にこの器官で行なわれています。
この仮葉枝は、形や機能の面からもまるで葉のようでありながら、その生じる場所は枝の位置であるために、葉とも、枝の変形とも解釈することができ、植物の地上部の形の多様化の一例として興味深い研究対象です。
東京大学大学院理学系研究科の塚谷裕一教授らの研究グループは、仮葉枝を用いた形態学的および発生学的解析から、仮葉枝は葉および枝、そのどちらとも異なる特殊な器官であることを見いだしました。加えて分子生物学的解析から、仮葉枝では枝が発達する時にはたらく遺伝子の他に、本来は葉ではたらく遺伝子群が発現していることも明らかにしました。さらに、形が異なる仮葉枝では、この葉ではたらく遺伝子の発現パターンが変化していることも明らかにしました。
これらの結果から、アスパラガス属植物の仮葉枝の起源は枝であり、本来、葉ではたらく遺伝子群が枝に流用されることで葉状の形となったこと、その遺伝子群の使われ方が変化することで、属内の仮葉枝の形が変化したということを示しました。
つまり
「アスパラガスのウロコ状の部分は、もともと枝だったのだけど、葉の遺伝子たちが混ざり込んで、葉のような形になった」
というわけです。
自分の個体の中で遺伝子が混ざり合って今までにない器官になったというのは不思議な感じがするのですけど、本来「生物にはいろいろな変異が生じて、その形質がたまたま周りの環境に適していたら生き残り、環境に適さないと生き残れない」というのが進化です。
アスパラガスもその不思議さをしっかり刻みつけているわけです。
おそらくそのウロコ状の部分は弱々しい若茎の前の部分をガードするのに適していたのかもしれませんね。
アスパラガスをきっかけに、もっと学びたいという人たちが増えていくと嬉しいです。
そうそう、もう一つアスパラガスの「実」の話が残っています。
どんな実なのか予想していてくださいね。
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