読者の方からの質問に答えて=研ぎすまされた文章を味わう 中島敦〈名人伝〉/楽しい国語・楽しい文学

 毎日ここに綴っている文章が読みやすく気に入っています、というお便りをいただきました。中身について詳しく書くことはできませんけど、その返事に加えて、少し書かせてください。

 ここに書いている文章は、移動中に書くこともあり、校正する時間がなく、言葉の間違いなどがあることも覚悟しながらUPしています。申し訳なく思いながら、そういう中でも、文意をよみとり、たのしみにしてくれている方たちがたくさんいることを、心から嬉しく思っています。

〈つれづれなるままに 心にうつりゆくよしなしごとを そこはかとなく書きつくって〉もなお、間違いなどない力をもつ人たちはいるでしょう、私にまだそういう力がないということです、すみません。いずれその域に達したいと思っています、長い目でお付き合いください。

 さて、ある方から「好きな作家の作品は?」という問いがありました。

 私の文章のスタイルとは異なるのですけど、中島敦の研ぎすまされた文章は、何度も読み返しています。

中島敦 wikipediaより

 中島敦には短い名文もいろいろあります、気に入りは〈名人伝〉です。
 文章もさることながら、ストーリー展開も早く〈サスペンス短編の名作〉といってもよいとおもいます。

 はじめの部分を引用しましょう。

   名人伝

         中島敦

 趙の邯鄲の都に住む紀昌という男が、天下第一の弓の名人になろうと志を立てた。己の師と頼むべき人物を物色するに、当今弓矢をとっては、名手・飛衛に及ぶ者があろうとは思われぬ。百歩を隔てて柳葉を射るに百発百中するという達人だそうである。紀昌は遥々飛衛をたずねてその門に入った。

 飛衛は新入の門人に、まず瞬きせざることを学べと命じた。紀昌は家に帰り、妻の機織台の下に潜り込んで、そこに仰向けにひっくり返った。眼とすれすれに機躡が忙しく上下往来するのをじっと瞬かずに見詰めていようという工夫である。理由を知らない妻は大いに驚いた。第一、妙な姿勢を妙な角度から良人に覗かれては困るという。厭がる妻を紀昌は叱りつけて、無理に機を織り続けさせた。来る日も来る日も彼はこの可笑しな恰好で、瞬きせざる修練を重ねる。二年の後には、遽だしく往返する牽挺が睫毛を掠めても、絶えて瞬くことがなくなった。彼はようやく機の下から匍出す。もはや、鋭利な錐の先をもって瞼を突かれても、まばたきをせぬまでになっていた。不意に火の粉が目に飛入ろうとも、目の前に突然灰神楽が立とうとも、彼は決して目をパチつかせない。彼の瞼はもはやそれを閉じるべき筋肉の使用法を忘れ果て、夜、熟睡している時でも、紀昌の目はカッと大きく見開かれたままである。ついに、彼の目の睫毛と睫毛との間に小さな一匹の蜘蛛が巣をかけるに及んで、彼はようやく自信を得て、師の飛衛にこれを告げた。

 それを聞いて飛衛がいう。

 この文章の、一つの単語、たとえば助詞一つとっても、無駄・不要というものはありません。

 声を出して読んでみると感じると思うのですけど、中島敦はリズムを刻む様に、リズムが崩れないように、言葉を選んでいます。

 kindleで無料で読むことができます⇨https://www.amazon.co.jp/%E5%90%8D%E4%BA%BA%E4%BC%9D-%E4%B8%AD%E5%B3%B6-%E6%95%A6-ebook/dp/B009IXHOJU

 青空文庫にもあります、もちろん無料です⇨https://www.aozora.gr.jp/cards/000119/files/620_14533.html

〈~である〉調の文章は綴らないとはいえ、こういうそういう〈もの書き〉になりたいと思っています。

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たのしい教材:仲よくなるきっかけになる島言葉① 楽しい〈しまくとぅば〉-楽しい国語

 たのしいしまくとぅば(島言葉)の新しい教材ができあがりました。たくさんのお問い合わせをいただきましたが、ご希望の方にお渡しできます。前回より大量に準備しましたが、数に限りがあります、ご了承ください。

 同時進行で〈動画〉の作成もすすんでいます、近々アップする予定です。

 印刷して利用したい方は、次のリンクからダウンロードしてご利用ください⬇︎

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講座・ワークショップの運営も予想を立てて実験する/多数決を超えて

 たのしい教育研究所の講座が今週に迫り、スタッフ・授業者で検討会がすすんでいます。

〈たの研〉は毎回新しいスタイルで講座やワークショップを実施しているので、講座の内容だけでなく講座の運営そのものも〈予想⇨実験〉です。

「流れはこうした方が満足度があがるのではないか」

「会場の設定は、こうした方が、よりたのしめるそう」

「おたのしみコーナーでは、教材の内容をこうした方がよいと思う」

など、いろいろな考えが交わされます。

 では、考えが対立したらどうするのか?

 普通は多数決ですね。

〈たの研〉では「ギョウザがよいかシューマイがよいか」などかんたんなものなら多数決で決めることもあるけれど、重要な内容について多数決で決めることはほとんどありません。

 ではどうするのか?

 話し合いを尽くしたあとは、より熱意ある人、説得力のあった考え、新しいアイディアなどをとって「今度はこういう方法で実験してみましょう」いうことで落ち着きます。

 その実験の結果、うまくいかなくても、それを主張した人の責任ではありません、みんながその実験を見守ったという意味では同じだからです。

 家族の話し合いでも、クラスの話し合いでも、職員会議でも「今度はこういう方法をとってみて〔つまり実験してみて〕結果ではんだんしましょう」というようにすすめることをおすすめします。

 学校の会議などでも、発言権の強い先生の意見が重要視されたり、多数の人たちの意見が重要視されたり、はなから結論が決まっていたりするのが多くみられます。
 経験の浅い人たち、新任の人たち、転勤したての人たちの意見は、通らないことも多いものです。

 新しいアイディアを取り入れることでうまくいくとはかぎりません、でも、今までと同じ方法をとっていたら、今までと同じ結果になるのは明らかです。 

 家族の話し合いでも、子どもたちの意見をとりいれて
「よし、じゃあ今回は◯◯の意見でやってみよう」
というようにしてみてはどうでしょうか。

 そういう中で、意見やアイディアの重要性もより深く感じていけるようになると思います。
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PEALカウンセリングはたのしいのか苦しいのか?

 私が学んだいろいろなカウンセラーの中で切れ味鋭かった人物は「カウンセラーはカウンセリングを飄々(ひょうひょう)とすすめていくものだ」という話をしていました。
 また力ある別なカウンセラーは「自分しかこの人を助けてあげられないという気持ちでカウンセリングをすすめることだ。それは生半可な感覚でできるものではない」と語っていました。

 自分のカウンセリングに自信のあるカウンセラーはカウンセリングに対するそれぞれの想いをもっていることでしょう。

 私は弟子たちに「カウンセリングはたのしいものだ」と伝えています。

周りの人たちの笑顔が増える・可能性が伸びていく姿は嬉しいことでなくて何なのか?
自分の力が周りの人たちの悩みの解決に有効に作用することはたのしいことでなくて何なのか?

 だから深刻な相談の時でも、こちらの表情は軽やかでありたい。

「いろいろな悩みに向き合うのだから真剣でなくてはいけない」
確かにそうです。


 ではあなたが病院で治療してもらうとき、深刻な表情をした先生と軽やかな表情の先生と、どちらの先生にみてほしいですか?

 私は軽やかな先生がいい、ほっとする、安心できるから。

 真剣であっても、軽やかで向かい合う、そんなカウンセラーが増えていくことがPEALカウンセリングを広めている目的の一つです。

 〈たの研〉いっきゅうofficeには、軽やかに真剣にクライエントと向き合えるカウンセラーたちがいます。

 不登校、学校嫌い、勉強から遠ざかる、いじめなどの悩み

 仕事上の悩み、対人関係、家族の悩み etc.

 相談したい方は気軽にお問い合わせください。
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