沖縄県のしまくとぅば普及促進事業の助成をうけて実施してきた「たのしく島くとぅば」の活動の2022年度の部が修了しました。
プロジェクトリーダー、みえ先生がまとめてくれた報告書を眺めながら、力ある先生たちのおかげで、たのしく実りある取り組みができたと喜んでいます。
報告書の1ページ目にこう書かせていただきました、抜粋して紹介します。
はじめに
特定非営利活動法人たのしい教育研究所
所長
島言葉は琉球沖縄の大切な伝統文化として継承していく必要性だけでなく、もう既にこの世にいない先人たちの心の中にあった温かさ、思いやり、いたわり、意欲、モラル、価値その他たくさんのことを感じ教えてくれるものであり、教育的な価値もとても高い財産です。
本NPOでも以前からその価値に気づき、本県教育の中に取り入れていきたいと考えてきましたが、沖縄県文化振興課の後押しを受け、今年度やっと具体的取組みのスタートを切ることができました。まず何より沖縄県文化振興に心からお礼を伝えさせていただきたいと思います。
具体的な取り組みは本文から読み取っていただけるものと思いますので、本文や写真、プログラムからは読み取ることができないであろうことを前書きとしてかかせていただきます。
「島言葉を学校教育の中に取り入れたい」と語るのは簡単であり、反対する人はあまりいないと思います。しかしマスコミでも多く取り上げられている様に教育関係者の仕事量、質の多様化、抱える課題の困難さなどは大きな壁であり、「島言葉は価値が高いから導入しましょう」と伝え教材を提供するだけでは期待している実質が伴わないものとなる可能性が高まります。
当研究所はメンバー全員が教師・教育管理職経験者あるいは現役の教師であり、応援メンバーに名乗りをあげてくださっている方達の中には教育行政関係の方から現職の校長先生なども多く、県内の組織の中では〈最も〉と表現してよいほど学校現場と近いNP0だと思います。それだけに、大切な〈島言葉〉を学校教育に着実に浸透させることを真剣に慎重に考えてすすめる必要性を強く感じてきました。
学校現場は〈I.T.機器活用〉から〈外国語〉、〈いじめ対策〉〈人権意識の高揚〉その他、「これは大切」「あれも大切」というものが増えていき、先生方も子ども達もひっしにそれらに取り組む中、ゆとりがなくなっています。最近になって教師不足が叫ばれる様になりましたが、それは数年前からの現象で、休む先生の分をいろいろな先生方ががんばってカバーし、全国で最もメンタル面による病休率が高い県となっています。
実際、当研究所に学びにくるたくさんの先生方にリサーチすると、学校現場の多難な現状の中に安易に新しい島言葉プログラムを導入してもそれは形式的なものとなり、しばらく経つうちに忘れ去られてしまう危険性を強く感じざるを得ませんでした。
また島言葉そのものに学校現場の先生方自身が不慣れであるいう現状も、島言葉が学校現場で広がっていくことに大きな障壁となり「教室で島言葉を取り上げる際には地域の老人会の方を招聘して実施するので、気軽に取り上げるにはハードルが高いです」という先生たちが何人もいる状況でした。
そういう中、現場の先生方を交えて研究会、検討会、アイディアミーティングを重ねていった結果、当研究所のプログラムとして導入したテーマが〈シンプル島言葉〉でした。気軽に島言葉をりようできる場面を具体的に想定し、そこで利用できるプログラムを作成し提供する取り組みです。
幸いなことに、もっと深く知りたいという方たち向けには文化振興課作成のテキストや音声資料などが利用できます。また既にいろいろな地域で〈島言葉教育〉に取り組んでくださっている団体を紹介するなども可能ですから、入り口を広げていく中で幅広く深いところまですすめていくことができます。
そうやってスタートさせた本研究所の教材は、すぐにたくさんの教育関係者の方たちから「これはいいですね」という反応が届きました。教室で積極的に利用してくれる先生方が出てきただけでなく、授業以外でも朝の活動や給食、帰りの会の中に位置付けて下さる先生方もいます。
加えて、公民館・自治会、児童館などにも広め、当研究所が開催する講座等でも活用し、好評を得ることができました。
はじめに作成したプログラム〈たのしく島言葉 給食・食事編〉では、毎日利用している先生の様子を見た外部の方が注目し「ぜひ全ての学校にこういう取組みを広げてほしい」と語るほど喜んでくださり、当研究所を応援してくださる校長先生をはじめ、いろいろな方たちが力を出し「沖縄学校給食会」の理事長、事務局長、担当主事三者の方と懇談しする機会を得ました。そこでは学校給食会としても、島言葉の重要性とシンプルに活用できる教材とのセットを高く評価していただき、学校給食会のルートで沖縄県の離島を含む全小中学校に配布していただく運となりました。
今回の取組みを経て、島言葉の中にちりばめられた、沖縄の人たちの感性、魅力的なものの見方考え方を、これからも丁寧に伝え、学校教育の中に着実に浸透させていきたいと考えをますます強く考えているところです。
今後とも、教育現場にとって魅力ある〈島言葉〉のシンプル教材を作成し、先生方と協力して普及していきたいと考えております。
期限のこともあり、このボリュームでとどめることとなりましたが、本報告書の中には盛り込むことのできなかった多彩な活動もたくさんあったこと、そして、協力してくださった方たちが、この中に出てくる以上にたくさんいたことを添えて、はじめの言葉とさせていただきます。
2023年2月のよき日に
言葉は先人たちが残してくれた無形の財産、たからものです。
その素晴らしいところを残していこうとする人たちがいなければ、財産・たからものは、紙の資料・データの中に閉じこめられた過去のものになってしまいます。
それをたのしく継承していくこと、それもたのしい教育研究所の大切なテーマの一つです。興味関心のあるみなさんが増えていくことを期待しています。
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