仮説実験授業の書籍の寄贈から-板倉聖宣の科学論-楽しい理科

 先日、たのしい教育研究所の関係者を通じて、仮説実験授業の書籍の贈呈がありました。かなり古く貴重な叢書もあります。

 今回はこの中から〈授業書集成1磁石〉の中の板倉聖宣先生(仮説実験授業研究会初代代表・元文科省教育研究所室長)の文章を紹介しましょう、下の写真の中ほどの本です。

 こういうところから板倉聖宣が科学の本質的な改革を目指していたことがわかると思います。

第 1 章 授業書〈磁石〉のねらい

 磁石は,小さな子どもでも容易に取扱うことができ,しかもその性質が新奇で実用的にも役立ち,小さな子どもの興味をひきつけることができるために,これまでもしばしば科学教育のもっとも初期の段階の教材としてとりあげられてきた。
しかし,19世紀後半以後の物性物理学や工業技術の発展は,当然のこととして磁石の科学教材としての意義にも大きな影響をもつにいたっている。ところが筆者の知るかぎり,これまでの磁石教材の取扱い方は,磁石という新奇な人工的産物をいじくりまわさせるというにとどまり,表面的な興味本位の断片的な知識の教育にすぎなかったように思われる。もちろんなかには,磁石を材料として「科学的な態度・考え方を育成しよう」とした人々もあった。しかし,それらの人々も「磁石教材というものはいかなる点で日常性をこえた科学上の概念を必然のものとするか」ということについて十分反省するところがなく,したがってその「科学的な態度」とか「考え方」というものも事実を「くわしくしらべる」とか「比較して考える」とかいう,日常的な考え方の延長にすぎず,多分に観念的なものにとどまっていたといってよいであろう。そこで筆者は,磁石教材についてその教育的意義を全面的に検討しなおして,磁石教材を全面的に再編成することが必要だと考えた。本論に示す授業書〈磁石〉の内容が,従来の磁石教材の内容といちじるしく異っているのはそのためである。

板倉聖宣 

 小さな足取りではあっても、たのしい教育研究所も教育の本質的な改革を目指しています。

 おかげさまで着々とアクセス数を伸ばしてきています、応援よろしくお願いいたします。

 

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牧野富太郎の植物線画を全て無料で見ることができます⬅︎高知県立牧野植物園

 このサイトは気軽に読めるようにと短く綴ろうと気を付けているのですけど、ついつい情報量が大きくなってしまい、〈たのしい教育メールマガジン〉を書いているような気がします。
 これも前回一気に書こうと思っていた内容なのですけど、大切に読んで欲しい気持ちもあって、分けて紹介することにしました。
 〈たのしい教育メールマガジン〉でも紹介したいと思っている内容です。

 牧野富太郎は高知県出身です、高知県には〈牧野植物園〉があって四季折々の植物を楽しむことができます、私もぜひ行こうと思っている処です。

 その牧野植物園が、牧野富太郎の植物図鑑(線画集)を無料で公開しています。私は書籍を購入して持っていて、それをスタッフのAさんがPDFにしてくれたので大切に開いて読んでいるのですけど、これならみなさんも電子書籍として読むことができます。電子書籍はフィールドでも読むことができてとても便利です。

 
 前回の記事で〈植物線画〉に興味をもった方は、ぜひ利用してみませんか。

http://www.hokuryukan-ns.co.jp/makino/index.php

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植物写真と植物線画とはどちらがリアル(現実的)か? 伊波善勇(いは ぜんゆう)先生の植物画・技法-楽しい理科・楽しい植物学

 前回の〈沖縄のカエデ〉の記事の中の『クスノハカエデ』のスピンアウトして別記事として書きたいテーマがあります、写真と絵はどちらがリアルかという話です。もちろん〈抽象画〉や〈抽象写真〉ではなく、写実的なものをめざして表現したものについてです。

 沖縄にもカエデがあって、それをクスノハカエデという話を書いたのですけど、それはこういう植物です、〈カエルの手〉の形の様な切れ込みはありません。ちなみに〈カエデ〉は《カエルの手》を略して名付けられました。私が大好きな「新明解語源辞典」から紹介しましょう、この辞書はおすすめですよ、暇な時はパラパラめくっているだけでいろいろな発見があります。

 これがクスノハカエデです、沖縄県の公式サイトに載っている写真です(https://www.pref.okinawa.jp/site/norin/shinrinken/kikaku/yuyou-detail/kusunohakaede.html) 山に入ってこの写真をたよりにクスノハカエデを同定することができるでしょうか。つまり「これかもしれない」と思った〈木〉と〈この写真〉を比べて「これに違いない」と識別できるでしょうか?

 時間はかかるかかるでしょう、その後「これは違うな」とか「ほぼこれだと言って間違いないだろう」と判断するのは難しくはないと思います。

 では伊波善勇先生が描いたクスノハカエデの線画を見てください。山に入ってこの絵をたよりにクスノハカエデを見つけることができるでしょうか。

 これは厳しいと思うのですけど、どうでしょうか。リアルな色彩感や質感は写真に敵いません。
 けれど「これかもしれない」と手にした後は
「あ、この葉先の様子が似ているな、違うな」
「葉脈の間隔、様子が似ている、違う」
「花の形が似ている、違う」
といった識別は、遥かに写真より上だと思います。

 以前も書いた記憶があるのですけど、この植物線画には伊波善勇先生の「この葉先はこうなっているんだよ」「葉と茎の間隔はこれくらい離れているんだよ」という様な語りがそのまま描かれているわけです。

 写真と写実画はどちらがリアルか?

 私はどちらもリアルで重要だと思います。

 植物が好きな人は本屋さんで普通に売られている写真図鑑だけでなく植物画の図鑑を携えていると、より楽しめると思います。
 伊波善勇先生の植物図鑑は教育委員会の依頼で作成されたものなので販売されていません(たのしい教育研究所で閲覧できます)、伊波先生がモデルにした牧野富太郎の植物図鑑は販売されています。

 牧野富太郎の植物線画はKindle(キンドル/電子書籍)や青空文庫で無料で読むことができます。※Kindleの作品は一定期間後〈有料〉になる可能性もあります、無料のうちにダウンロードしておければいつでも読むことができます

 みなさんも植物画の魅力を味わってみませんか。こういうところから本物の学力、確かな賢さが広がっていくと思います。

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自由研究こそ本物の研究-沖縄のカエデはいつ紅葉するの?/楽しい理科

 誰かに命じられて研究するとか、学校でやることになっているから勉強するということではなく、心の奥から湧き上がる〈知的好奇心〉にゆり動かされて学んでいくことが本物の研究です、自由研究といってもよいでしょう。たのしい教育研究所のプログラムは、その〈知的好奇心〉に火をつけて、ますます学びたくなる授業です、学校でも、子どもたちの知的好奇心に火をつけてくれる授業を実施してくれるようになることが〈たの研〉の目標の一つです、応援お願いします。今日も〈本物の研究〉の話です。

 〈たの研〉で植物についてアドバイスしてくださった伊波善勇先生の著書「石川氏の植物」によると、沖縄本島に自生しているカエデは〈クスノハカエデ〉のみで、葉の切れ込みがなく、紅葉も落葉もしない種です。私たちがイメージするカエデとはだいぶ違ってみえます。

 その後、県外からカエデをもってきて、いろいろなところに植えてあるのですけど、みごとな紅葉とはいえるような色にはならないので、沖縄に住んでいる人たちもカエデの並木があるとか、公園にカエデがうえられているところがある、とは知らないようです。

〈たの研第3研究所〉のすぐ近くにもカエデ並木があります、これは4ヶ月ほど前、2023年4月後半に書いた記事です(掲載は5月)。

沖縄にもカエデ並木があります-紅葉するのかな? たのしい植物入門

 数年前、10月後半(2018年)に書いたカエデの記事もあります。

秋の植物をたのしむ/不思議発見〈カエデと桜〉①

 さてこれは先日、9月初旬(2023年)に撮ったカエデです、別な公園でみつけたカエデです。
 鮮やかな紅葉で、見ていると秋の紅葉に包まれたかのようないい気持ちになります。

 沖縄では山全体が彩られるとか、樹がまるまる紅く彩られるということはありません、カエデのほんの一部がこうやって紅葉するくらいです。

 緑色の葉の中にわずかな紅、見ていると嬉しくなってきませんか、それに秋の風を感じるのですから、人の心は不思議ですね。

 話はここからです。

 いったい沖縄のカエデはいつ紅葉するのでしょう?

 2枚目に出した10月後半の真っ赤なカエデも、一部の紅葉で、樹の全体、並木全体の紅葉ではありません。

 真実を見つけるには〈予想⇨実験〉しかありません。

もしかすると沖縄のカエデは一年中、わずかに紅葉しているのではないか

と予想してみたのですけど、みなさんはどう思いますか。

 予想するといろいろなことが見えてきます、みなさんも一緒に自由研究してみませんか。みなさんの住んでいる地域の名前と「カエデ」とを一緒に検索ワードに織り込むと、植えられている場所がみつかるかもしれません、お店の名前が多く出てくると思うのですけど、注意深く探してみてください。近隣の市町村でも探してみるとよいですね。

 きっとこれからカエデを見るのがたのしくなりますよ。

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