教師をしていた頃、子どもたちに書いた「騙されない人になるために」という冊子があります、たくさんの人たちに読んでもらうことができました。もう発行していないので提供できないのですけど、「たのしい教育」の中にはそのテーマが強く生きています、今回はそのテーマで書きましょう。
私が師と仰いでいるガリレオ・ガリレイは大の〈占星術嫌い〉だったと板倉聖宣から聞かされていました。
ガリレオが明らかにした〈ふりこの等時性〉の法則は誰でも再現できます⇨ https://www.youtube.com/watch?v=L0gCmxMy224
ニュートンが明らかにした「万有引力の法則」は誰でも再現できます。スプーンでも鉛筆でも手に持って離せばよいのです。ある時は横に飛んでいき、ある時は上に飛んでいくということはありません、かならず地球の中心に向かって落ちていきます。
確かなものは再現可能です。
「占い」が確かなものでない証拠の一つが「再現できない」ということです。その一つで科学的に反証できます。
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たとえばカードをシャッフルして(カードを切って)あなたがその中から何枚かのカードを引く、それをみて占い師が「あなたはこういう運命です」と語る。その占い師に続けて四回くらい占ってもらってください、あなたは違うカードを引いて、占い結果は変わってしまいます。
「今日は無くしものをみつける」という結果が「見つからない」となったり、「何かで大儲けする」という結果が「宝くじなどはやめておきましょう」という結果となる・・・
もし同じカードが出続けて同じ結果が連続するとしたら、それは何かの仕掛けがある、つまりインチキだということです。
ある人物が朝早く〈よく当たる〉という有名な占い師のもとにやってきた。
「明日、大金が手に入るので、大きな投資をしたいと考えています、私のここ数日の〈金銭運〉を占ってください、それによって1億円程度の投資額にしようか、100万円程度の投資額にしようか、それともやめようか決めることにします」と相談した。
その占い師がカードをシャッフルして数枚出し、それが同じ札で同じ並びになっる可能性は限りなくゼロです。日本の占い師が使う様な占い棒をジャラジャラ回して、それを数本とる。たとえば「何億円でも投資したほうがよい」という様な占い結果がでたとした。
「そうですか、でもその額は大きいので連続で占ってみてください」という、同じ結果が出続けるか?
再現性は0です。
タロット占い師はちゃんとそういわれた時、返すセリフを準備しています。
「いいえ、一回目の占いでしか確かな結果は得られません、連続して占ってはいけないのです。私は力ある占い師です、結果を信じてくれて結構です」
そうか・・・
「では少し遠いけど、もっと有名な占い師がいるからそこにいってみよう」
あなたは離れたところに住むさらに有名な占い師に占ってもらった、「あなたの今日はの運勢はすばらしい、大儲けしますよ」というか?
可能性はないとはいえません。
ではそうやって有名な10名の占い師の処で占ってもらったらどうなるか。
結果は様々です、それは確率的に間違いありません。テレビなどでそういう実験をしてくれたらいいのにやりませんね。占い番組が継続できなくなってしまうからです。スポンサーの関係もあるかもしれません。
〈よく当たる〉と有名な順に四人のタロットカード占い師に来てもらって、同じ占いをしてもらう。四人が同じ様なカードを出してくれるのか?
あり得ない。
〈よく当たる〉と有名ないろいろなジャンルの占い師に来てもらって、同じ占いをしてもらう。四人が同じ様なカードを出してくれるのか?
あり得ない。
そういう中であなたは投資に多額のお金をかけるでしょうか。
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一億歩ゆずって占いに再現性があったとしましょう。
タロットカードは詳しくしらないので、web上で簡単に見ることができる〈占星術:星座占い〉で考えてみます。
「占星術は確かだ、何度やっても同じ結果が出る、つまり再現性もある」とします。
占いのサイトを開いて真っ先に出てきた「牡羊座の今日の運勢」を開いたら、こう書かれていました、私が実際みた結果です。
別な星占いでもお牛座の運勢について、みんなこういう結果が出たとしますよ。
12の星座で強引に分けられた誕生日による分類の一グループにいる膨大な人間が、この運命を共有することになるのでしょうか。
たとえば日本人限定でもいい、単純計算で1000万人いると想定して、その日本人は「幸せな時間がすごせるでしょう」と言い切ることができるか。
そうだとすると牡羊座の人は交通事故に遭わないし特殊詐欺にも遭わない、フラれることもないし失業することもない、テストに不合格することもない。
統計的に調べればはっきりするでしょう。
「テストに不合格することもない」という様なことは、その人がどれだけ勉強に力をかけてきたかに強く影響するのであって、生まれた月で決まることではありません。怪我をするとか病気になるという様なことも、その時どういう状況に置かれていたか、それまでどういうものを食べてきたか、運動してきたかetc.と関係するもので、隣町の同じ月に生まれ人と運命を共有する様なものでもありません。
ところがテレビの星占いなどをみて密かにでも「よ~し、今日はいいことあるぞ」と思う人たちがなんと多いことか…
占い好きな人たちがそういうサイトを開いて自分の運勢をみる、ということはとめられないでしょう。
とはいえ、公共の電波で人々の思考に、特に子どもたちの純粋な心の中にインプットしていくことについては、もっと議論されてよい問題だと思うのですけど、どうでしょうか。
そういうものではなく、たとえば「病院での血圧測定」については再現性があります。一回で「高血圧」と断定せず、複数回の結果で判断する上に、血液の状態、内臓の様子、顔色、本人の自覚症状などから総合的に判断して『しばらくお薬を処方しましょう』という結果を出すのです。科学的であり再現性もあるということです。
※
ところでカナダにこういう法律があります、刑法第365条です、一年の日数と同じですから覚えやすい数字ですね。実際にこの法律で罰された人たちもいます。
カナダ刑法第365条
以下のことを行う全ての者は、略式有罪判決により処罰される犯罪の罪を犯す。
(a) いかなる種類の魔術、妖術、魔法、呪術を行使する、または使用するふりをする、
(b) 有償で、占いを請け負う。
(c) オカルト的なもの、または疑似科学的な技術で、盗まれたもの、または失われたと思われるものがどこで、またはどのような方法で見つかるかを発見するふりをする
原文も入れておきましょう、カナダの法律サイトです。
365
Every one who fraudulently(a) pretends to exercise or to use any kind of witchcraft, sorcery, enchantment or conjuration,
(b) undertakes, for a consideration, to tell fortunes, or
(c) pretends from his skill in or knowledge of an occult or crafty science to discover where or in what manner anything that is supposed to have been stolen or lost may be found,
is guilty of an offence punishable on summary conviction.
https://laws-lois.justice.gc.ca/eng/acts/c-46/section-365-20030101.html
人生を努力や周りの状況で判断していくのではなく生まれ月や運命で理解していくことについて、みなさんはどう思うでしょうか。
占いを信じる人たちが騙されやすいということなのかどうかはわかりません。けれど、今回書いた過程には〈特殊詐欺被害〉にあわないための大切な方法もしっかり刻まれています。
親子で「今日は、占いというものが本当かどうか実験してみようよ。お母さんはトランプ占い、あなたは星占い、お兄ちゃんはタロット占い、お父さんは誕生日占いで、おばあちゃんの今日の運勢が同じ結果になるかやってみない?」
という試みはどうでしょう、たのしめると思うのですけど。
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