たのしい生物学/品種改良・進化の話①

 パパヤの品種改良の話に興味をもってくれた読者の方から丁寧なお便りが届き、その中に品種改良と進化の違いについて知りたいという話がありました。それについて書いてみましょう。正確さより、イメージが伝わることを優先して細かいところは端折ります。

 生物は〈分裂〉といって、自分のコピーを作って生きていくタイプがいます、原始的な状況ではほとんどの生物がそうでした。そのスタイルを今も残している生物がいるわけです。ウイルスがそうです、菌類もそうです。下の写真はコロナウイルスです、人間の体内でどんどん分裂して増えていきます。

 

単細胞生物のアメーバも分裂・コピーで増えていきます。

 シンプルな体の作りをしている〈単細胞生物〉ただけでなく、多細胞生物の中にも分裂(コピー)して増えていくタイプがいるんですよ。

 これはこのサイトでも以前取り上げたベンケイソウです。ベンケイソウはタネで増える方法と、葉の周りに自分と同じコピーを作って増えていくという二つの方法で増えていきます。
 

 

 どんどん成長して一つのベンケイソウ(セイロンベンケイ)となっていきます。

https://gakusyu.shizuoka-c.ed.jp/science/sonota/ronnbunshu/R3/213086.pdf

 そういう様に〈分裂〉で増えていくのではなく、私たち人間をはじめ、多くの多細胞生物たちは〈有性生殖〉といって、オスメス二つの性質をまぜあわせて子どもをつくります。

 二つの性質が混ぜ合わさって子どもができていくので、そこには多様な性質が生まれます。

 たとえば犬の場合、白い犬、黒い犬、大きな犬、小さな犬、よく吠える犬、静かな犬、ある病気に強い犬、弱い犬など、書ききれないほどたくさんの性質が広がっていくわけです。

 前に書いたパパヤについてみていきましょう。
 パパヤにできるたくさんのタネが成長していく中で、背の高いパパヤ、低いパパヤ、細いパパヤ、太いパパヤ、実が甘いパパヤ、甘くないパパヤ、葉が大きいパパヤ、小さいパパヤなどとてもたくさんの性質がそこに出てくるのです。

 たとえば成長しても比較的小さなパパヤ同士を交配(雄しべの花粉を雌しべの柱頭に受粉させる)させると、実ができて、その身の中にはたくさんのタネができます。

 そのタネから成長していくパパヤもまたいろいろな性質をもったパパヤになります。

その中には以前のパパヤより身長が低い株も育つでしょう。

 そうやって〈低いもの同士〉を何世代にもわたって交配させていくと、前に紹介した様な、こんなに低いパパヤもできていくのです。

 これを〈品種改良〉といいます。

 つまり「人間の目的によって育てあげてきた品種」ということです。

 現在たくさんの種類に別れた犬たちは、もともとオオカミの子孫です。体の大きなタイプ同士、毛の長いもの同士、短いもの同士etc. いろいろな特徴を持つもの同士を交配させることによって、こんなにたくさんの種類に分かれてきました、品種改良です。

 品種改良は今の所、同じ〈種〉たとえば犬なら犬の仲間の中で、パパヤならパパヤの中で多様化した品種を生み出しているだけで、新たな種を生み出すような段階ではありません。

 ではこういう品種改良は〈進化〉とは違うのでしょうか?

 品種改良は私たち人間が、いろいろな目的で自分たちの都合の良いようにコントロールしてきたものです。

 それに対して〈進化〉は生物の子孫たちが周りの環境に適したり、子孫を残しやすいものたちが生き残っていった結果、多様化していくことです。何十万年何百万年という長い歴史の中で、ウイルス・アメーバー・菌類のようなシンプルな生物が進化して、鳥やクマ、魚や人間といった多彩な生物が生まれて行きました。

 

 シンプルな生物から私たち人間が生まれるまで何十億年という時間が流れていきました。これが進化です。

 進化という大きな流れの中で多様化していった生物の、たとえばネズミをとりあげて、毛が短いもの同士を掛け合わせ(交配させ)て、ほとんど毛の無いネズミを生み出したりしているのが〈品種改良〉です。
 品種改良と進化について、前よりもイメージができてきたでしょうか。

 さらに話を続けたいのですけど、長くなったので、ここで一区切りつけておきましょう。次回もおたのしみに。

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〈たのしい学力向上〉と〈家庭学習〉/読者の方からの質問に答えて②

(前回の続き)いろいろな意見があると思います。「子どもはつべこべ言わずにどんどん机に向かうことが大切だ」という方もいるかもしれません。もしかするとそれと真逆で「家庭学習そのものが要らない」という人もいるでしょう。質問してくれた方のように「自主的に考えて力を伸ばすのが家庭学習だ」と考える人もいるでしょう。

 ところで40年近く取り組んできた〈学力向上〉の取り組みの中で得たものは何でしょう、失ったものは何でしょう?

 沖縄県の小学生の学力テストの点数が全国平均を上回り、県外の大学に入学するこども達も増えました。

 教師が背負わされる仕事の量がどんどん増え、リミッターを超えてしまった先生たちもたくさん出て、病休をとる先生たちがかなりの数にのぼっています。

 教育の対象、主人公であるこども達の暴力行為、いじめ、不登校の沖縄県の実数はどんどん上昇しています。琉球新報の記事に2020年度の統計が出ていました、2021年の統計はみあたりませんから、これが最新かもしれません、ご覧ください。

https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1212373.html

 管理職の先生たちと話しているとき「コロナのせいで不登校が増えた」という言葉を時々聞かされるのですけど、もっと大きな流れがあるのです。

「家庭学習とどういう関係があるのか」と疑問をもっている方もいるかもしれません。

 学力向上の取組みの中で、学校はこども達の家庭での学習にも強く入り込む必要があるという考えが提唱され、それが普通になってきました。

 教育行政と学校現場の努力で全国学力テストの得点を上昇させてきました。

 そうやって一方向的に40年力を注いできた中でマイナス面にも視点をあてる必要があるでしょう。

「先生が〈どこどこをやってきて〉と言わなかったから家庭学習しませんでした」というこども達や「もっとちゃんと家庭学習について指示してください」と主張する保護者のみなさんが増えていくとしたら、学校にいる時間精一杯教育に力を注いでいる先生たちの限界を超えてしまうこともあるでしょう。

 未来を切りひらいていけるこどもたちは、やらされ型のタイプからはうまれないということは、日本全体の閉塞感からも言えるでしょう。

 教育が夢と一緒に語ることができる様に、世界の先端からどんどん下降していく日本の現状を打破してくれる人たちがどんどん育っていくためには、「たのしさ」がカギを握るでしょう。

 こども達にとっても教師にとっても、そして保護者のみなさんにとっても「たのしいから学ぶ」という感覚、して「学ぶたのしさを教えてくれる場所が学校だ」という概念が広がることで、きっといろいろな問題が解決していくでしょう。「先生が言わなかったから何もしなかった」というこども達も減っていくことでしょう。

 みなさんはどう考えるでしょうか。

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〈たのしい学力向上〉と〈家庭学習〉/読者の方からの質問に答えて①

 読者(沖縄県の小学校の先生)の方からこういう質問が来ました。「自分が子どもの頃は家庭学習を自分で決めてすすめていたのですけど、今、学校では〈今日の家庭学習はこれこれ〉という様に指定するのが普通になっています。いつからそうなったのですか?」という内容です。
 学校の学力向上推進の話合いの中で「先生が家庭学習の内容をちゃんと指示してくれなかったので、家庭学習をやってきませんでした」という子がいて、それが一人二人ではないということがわかったのだそうです。

「家庭学習というのは自分の力を高めるためにとりくむものであって、ここをやるようにと言われたらやる、そうでなければやらないというものでよいのか?」それが、質問してくれた先生の問題意識のようです。

 みなさんはどう考えますか?

 私は大学を卒業して1984年から小学校の教師をしてきましたから、今の若手中堅の先生たちより、学校の教育に長く関わってきています。私が大学で学んでいた頃、沖縄県の教育委員長をしていた大浜法栄(おおはま ほうえい)氏が著した「教師は学力低下の最大責任者」という本が話題になっていました、1979年の出版です。

 大浜方榮は沖縄県医師会の会長をしていたのですけど、教育に関わるようになり、教育委員長の位置につき、のちに自民党参議院議員となり、農林水産政務次官をつとめています。※写真は著書(上記)から


 教師に最大の責任があるのか、行政に責任があるのか、社会環境にあるのかなど、最大の原因を誰にもっていくのかは別にして、次第に沖縄県のこども達の学力の低さは教育界の大きなテーマとなり、1988年には沖縄県教育委員会の取り組みとして正式に「学力向上対策」がスタートすることになりました。それは現在も続いていて、数えると34年目に入ったことになります。
 学力テストの得点を〈学力の数値〉だといってよいのかどうかは別な議論として考えておく必要があるのですけど、小学校では全国学力テストの得点で全国平均を上回る位置にいます。中学校は次第に全国との差を縮めてきています。

 

 沖縄県教育委員会のデータからhttps://www.pref.okinawa.jp/edu/

 実は家庭学習の出し方についてもこの学力向上の取り組みとかかわりがあります。

 沖縄県の学力向上対策の中で「家庭学習を授業と結びつけていこう」という指導が行われ、次第に、こどもたちそれぞれの問題意識による家庭学習ではなく、学校の授業の補完という位置付けになっていきました。これも私が教師を初めて数年後のことだったと記憶しています。

 学習が進んだ子ども達はどんどん先の内容を家庭で学習したり、算数が苦手だという子が前の学年の内容に戻って家庭学習していくスタイルはなくなっていき、「国語教科書の◯ページから◯ページまで写本」とか「算数の◯ページの問題」など、教師が指定するスタイルになっていったわけです。

 質問してきてくれた先生は、これで「なるほど」と納得したわけではありません。はじめに書いたような問題意識がひかえていたからです。

「はたして、こういうやらされ型でいいのか?」
「家庭での学習が〈学校の7校時目〉として位置付けられるようなものになっていないか・・・」それを一人の教師として問いかけているのです。

 たのしい教育側の答えを書くのは簡単ですけど、読者の皆さんの意見も聞いてみたいのでワンクッションおかせてください。

 先生中心の指示・指定型の家庭学習のままでいいのか?

 みなさんはどう考えますか。意見を聞かせていただけたら幸いです。

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たのしい〈雲〉の見方/たのしい学力向上

 雲は強引に10種類に分類してあります、理科の教科書でもその10種類「巻雲」「巻積雲」「巻層雲」「高積雲」「高層雲」「積乱雲」「乱層雲」「積雲」「層積雲」「層雲」を取り上げていて、それぞれの特徴をとらえて分類できるとテストで良い点がもらえます。

 無料公開されているプリントがあります、感謝してその一部を参照させていただきます。こんな感じです。

 ちなみに答えは  ①エ ②イ ③ウ ④ア です。

 

 ところでこれは先日私がフィールドを歩いていた時に撮った写真です。

 思わず見とれてしまいました、手前に向かって流れているのが〈すじ雲/巻雲〉です。

 たの研の学力向上は、まずこういうシーンに心動かされることを重視しています。

 その後一時間くらい歩いているうちに陽が傾いてきました。すじ雲が左と右で形を変えています、上空の空気の流れが明らかに違っているからです。

 最近はタブレットを一人ずつ持ち帰っているようですから、〈気に入った雲を写す〉という課題を出して、それをもちょって「この雲はここがおもしろい、ここが不思議だ」というような話を出しあってから、雲の学習に入るとよいと思います。

 このサイト内の検索欄に〈雲〉と打ち込むと「鳳凰の翼なような雲」など、いろいろな雲の話が出てきます、合わせておたのしみください。

https://tanokyo.com/?s=%E9%9B%B2

 

 

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