自宅の階段から降りる時にたまたま〈まど・みちお〉の本が目について久しぶりに開いてみました。
数え切れないほど読んで来た〈まど〉さんの作品ですけど、何度読んでも新鮮な感動を覚えます。
いくつか紹介しましょう。
タイトルを予想してみませんか。
自分が 書きちがえたのでもないが いそいそと けす
自分が書いた ウソでもないが いそいそと けす
そして けすたびにけっきょく
自分がちびていってきえて なくなってしまう
いそいそと いそいそと
正しいと 思ったことだけを
ほんとうと 思ったことだけを
自分のかわりのように のこしておいて
まどさんの〈けしゴム〉という詩です。
この詩にも心動かされます。
「どうしていつも」 まど・みちお
太陽
月
星そして
雨
風
虹
やまびこああ 一ばん ふるいものばかりが
どうして いつも こんなに
一ばん あたらしいのだろう
以前この本を手にした時にラインを引いた〈まど〉さんの文章があります。
今でもいくらかそうですが、若い頃の私はとくに、かこを懐かしく思ったり、ものを美しいと思ったりし始めると、どうにも胸が苦しくなって来たものです。
その過去なら過去、物なら物と、一体にならずにはいられないような衝動にかられてです。
そして「子ども」(人間に限らずすべての生き物)は私にとってそのような美しいと思えるものの一つだったのです。まど・みちお「処女作の頃」
1980年1月「びわの実学校 97号」収録
今読んでも新たに感動してしまいます。
自分の周りのものごとに、まるで恋をするように寄り添い見つめる。
ほんの少しで良いから〈まど〉さんの様な感性に近づいていけたらと思う日々です。